スティル・ライヴズ
脊髄損傷と共に生きる人々の物語

四六判 / 460ページ / 上製 / 価格 4,950円 (消費税 450円) 
ISBN978-4-588-67212-5 C0030 [2013年10月 刊行]

内容紹介

自分の力では動かない身体──感覚と運動はないが様々な痛みを伴う──と共に生きる人々が自らを率直に語る物語。「不幸な障害者」としてではなく、その経験の豊かさと可能性が、私たちと身体の関係性を新しい視点から根本的に考え直させる。患者と当事者たち、その家族、友人、看護・介護で関わる周りの人々、つまりは、いま生きている私たちすべてにとって重要な物語がここにある。

著訳者プロフィール

ジョナサン・コール(コール,J.)

(Jonathan Cole)
文学修士(MA, Brasenose College),科学修士(MSc, Oxford),医学博士(DM, The Middlesex Hospital),王立医学大学フェロー(FRCP).現職はプール病院臨床神経生理学医長であり,ボーンマス大学客員教授およびサザンプトン大学客員講師を兼任している.専門は,感覚メカニズム,運動制御,求心路遮断,慢性痛,幻影肢痛,脊髄損傷,メビウス症候群による顔面麻痺.イギリス臨床神経生理学会前会長,神経生理学会国際会議議長などを務めた.
著作としては,神経生理学の領域の多数の業績のほか,メビウス症候群,脊髄損傷,感覚喪失,パーキンソン病,アスペルガー症候群など,神経障害と共に生きる患者たちの病の経験を,現象学的身体論を手がかりにして記述した著作で知られている.邦訳された著作に,『顔の科学:自己と他者をつなぐもの』(茂木健一郎監訳,恩蔵絢子訳,PHP研究所,2011年)などがある.

河野 哲也(コウノ テツヤ)

1963年生まれ.立教大学文学部教授.哲学(現象学・心の哲学)・倫理学.主な研究業績に,『意識は実在しない:心・知覚・自由』(講談社メチエ,2011年),『エコロジカル・セルフ:身体とアフォーダンス』(ナカニシヤ書店,2011年),『道徳を問いなおす:リベラリズムと教育のゆくえ』(ちくま新書,2011年)など.

松葉 祥一(マツバ ショウイチ)

1955年生まれ.神戸市看護大学教授.現象学・倫理学.主な研究業績に,『哲学的なものと政治的なもの:開かれた現象学のために』(青土社,2010年),『ナースのための実践論文講座』(人文書院,2008年),ジュリア・クリステヴァ『メラニー・クライン:苦痛と創造性の母親殺し』(共訳,作品社,2012年)など.

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

謝辞

第Ⅰ部 序論
第1章 二〇年後

第Ⅱ部 忍耐
第2章 新人類
第3章 俺の生活は普通じゃない
第4章 忍耐

第Ⅲ部 探究すること
第5章 顔を上げて世界に向き合う
第6章 他の誰かであること
第7章 探究

第Ⅳ部 トライすること
第8章 だって私はできるから
第9章 私に帰属するものと私に帰属しない「それ」
第10章 トライすること

第Ⅴ部 観察
第11章 ウインドサーファー
第12章 両面から見ること

第Ⅵ部 エンパワーすること
第13章 障害は重荷になる
第14章 飛ぶことができる人とできない人
第15章 エンパワメント

第Ⅶ部 継続
第16章 私であるために
第17章 新しいことを見つける

第Ⅷ部 注釈
第18章 いじましい部分


訳者あとがき
付録:役に立つウェブサイト
参考文献
索引

[訳者一覧] *は監訳者

河野 哲也(コウノ テツヤ) *

松葉 祥一(マツバ ショウイチ) *

稲原 美苗(イナハラ ミナエ)
大阪大学大学院文学研究科文化形態論専攻(臨床哲学)助教.身体(障害)の哲学・倫理学.主な研究業績に,Abject Love: Undoing the Boundaries of Physical Disability(単著,VDM Verlag.(英文),2009),“The Voice of Pain: The Semiotic and Embodied Subjectivity”(Embodied Selves, Palgrave Macmillan, 2012),“The Rejected Voice: towards intersubjectivity in speech language pathology”(Disability & Society, 28-1, 2013)など.

齋藤 瞳(サイトウ ヒトミ)
日本大学通信教育部非常勤講師.哲学・倫理学.主な研究業績に,マーサ・ヌスバウム『良心の自由:アメリカの宗教的平等の伝統』(共訳,慶應大学出版局,2011年),同『感情と法:現代アメリカ社会の政治的リベラリズム』(共訳,慶應大学出版局,2010年),「自然としての身体,文化としての身体」(『メルロ=ポンティ研究』第14号,2010年)など.

谷口 純子(タニグチ ジュンコ)
東京大学総合文化研究科博士課程広域科学専攻単位取得満期退学.哲学・倫理学.主な研究業績に,「身体性と言語」(月刊『言語』,2008年7月号)など.

宮原 克典(ミヤhラ カツノリ)
1982年生まれ.日本学術振興会/立教大学.哲学.主な研究業績に,『知の生態学的転回 第1巻 身体:環境とのエンカウンター』(分担執筆,東京大学出版会,2013年),ショーン・ギャラガー『現象学的な心:心の哲学と認知科学入門』(共訳,勁草書房,2011年),“Neo-pragmatic intentionality and enactive perception”(Phenomenology and the Cognitive Sciences 10, 2011)など.

宮原 優(ミヤハラ ユウ)
立教大学兼任講師,文教大学非常勤講師.哲学.主な研究業績に,マーサ・ヌスバウム『良心の自由:アメリカの宗教的平等の伝統』(共訳,慶應大学出版局,2011年),同『感情と法:現代アメリカ社会の政治的リベラリズム』(共訳,慶應大学出版局,2010年),「見られるものとしての身体:サルトルの現実とメルロ=ポンティの希望」(『現象学年報』第27号,2011年)など.

書評掲載

「出版ニュース」(2013年12月上旬号)に紹介されました。

「読売新聞」(2014年3月2日付/熊谷晋一郎氏・評)に紹介されました。

月刊「みすず」(2015年1・2月合併号、読書アンケート特集/熊谷晋一郎氏・評)に紹介されました。

関連書籍

法政大学大原社会問題研究所/菅富美枝編著『成年後見制度の新たなグランド・デザイン』
三井さよ・鈴木智之編著『ケアのリアリティ』