叢書・ウニベルシタス 1169
アラブの女性解放論

四六判 / 352ページ / 上製 / 価格 3,520円 (消費税 320円) 
ISBN978-4-588-01169-6 C3336 [2024年06月 刊行]

内容紹介

120年前のエジプトで唱えられた男女平等思想。女子教育、ヴェール、家族法に関するその主張は、反イスラームといわれながらも、エジプトのみならずイスラーム地域の諸言語に訳され、信仰と近代性との調和を切に求める人々に広く定着していった。アラブ・フェミニズムの基本文献『女性の解放』と『新しい女性』に詳細な解説2本を付す。当時の衝撃と後世まで与えた影響を理解するのに格好の書。

著訳者プロフィール

カースィム・アミーン(アミーン カースィム)

カースィム・アミーン(Qāsim Amīn)
1863年、エジプト生まれ。法律家。カイロで近代的な学校教育を受けた後、1881年から政府派遣留学生としてフランスのモンペリエ大学で法律を学ぶ。1885年に帰国後、混合裁判所や地方都市の検事長、カイロ控訴院裁判官を歴任。1894年にはカイロ控訴院裁判長に昇進。1890年代半ば以降、エジプトの社会問題やエジプト人の精神性について、フランス語やアラビア語で執筆する。エジプトにおける女性の地位の低さとその改善の必要性を論じた『女性の解放』(1899年)はとくに注目され、一部の称賛を浴びたが、女性の装いや振る舞い、隔離の問題に関する記述等によって多くの批判にもさらされた。その応答として執筆したのが『新しい女性』(1900年)である。1908年、44歳で死去。

岡崎 弘樹(オカザキ ヒロキ)

岡崎 弘樹(オカザキ ヒロキ)
亜細亜大学国際関係学部講師。パリ第3 大学アラブ研究科博士課程修了、社会学博士。専門は、アラブ近代政治思想、および現代シリア文化研究。19 世紀以来のアラブ人思想家による自己批判の精神史、ならびに1967 年以降のシリアにおける思想・文学・映画の展開に関心を寄せる。著書に『アラブ近代思想家の専制批判――オリエンタリズムと〈裏返しのオリエンタリズム〉の間』(東京大学出版会、2021 年)、訳書にヤシーン・ハージュ・サーレハ著『シリア獄中獄外』(みすず書房、2020 年)などがある。

後藤 絵美(ゴトウ エミ)

後藤 絵美(ゴトウ エミ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専攻は、イスラーム文化・思想研究、中東地域研究、ジェンダー・フェミニズム研究。著書に『神のためにまとうヴェール――現代エジプトの女性とイスラーム』(中央公論新社、2014 年)、『記憶と記録にみる女性たちと百年(イスラーム・ジェンダー・スタデイーズ5)』(共編著、明石書店、2023 年)、『論点・ジェンダー史学』(共編著、ミネルヴァ書房、2023年)、訳書にナディア・ワーセフ著『シェルフ・ライフ――カイロで革新的な書店を愛し育て、苦悩した記録』(G.B., 2023 年)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

【女性の解放】
はじめに
序章 社会における女性の地位は、国の精神的成熟度を反映している
第一章 女性の教育
第二章 女性のヒジャーブ
第三章 女性と国(ウンマ)
第四章 家族
結論

【新しい女性】
献辞
はじめに
第一章 歴史の中の女性
第二章 女性の自由
第三章 女性の自身への義務
第四章 女性の家族への義務
第五章 教育と隔離(ヒジャーブ)
結論 エジプトの女性をめぐる思想状況

【解説】
解説1 カースィム・アミーンとエジプトのフェミニズム 後藤絵美
解説2 アラブ近代思想におけるカースィム・アミーンの女性解放論 岡崎弘樹

索引

書評掲載

「週刊読書人」(2024年9月27日号/八木久美子氏・評)に紹介されました

「図書新聞」(2024年12月14日号/賀川恵理香氏・評)に紹介されました

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