苦しみに満ちた「この生」に、救いを与えてくれるような外部はない。すべてがむなしく過ぎ去ってゆく仮象のごとき世界を、人はどのように肯定できるのか? ニーチェの生きた哲学的問いを、「夢」「自由」「意志」の主題に即して語り直し、ニヒリズムの克服を可能にする治療(セラピー)としての哲学の力を探る。実存の意味をめぐる、健康な哲学的思考にいざなう書。
梅田 孝太(ウメダ コウタ)
1980年、東京都生まれ。博士(哲学)。上智大学大学院哲学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、上智大学文学部哲学科ほか非常勤講師。共著書に『デリダと死刑を考える』(高桑和巳編著、白水社、2018年)、共訳書にJ.トラバント『人文主義の言語思想──フンボルトの伝統』(村井則夫・齋藤元紀・伊藤敦広監訳、岩波書店、2020年)、R. J.バーンスタイン『暴力──手すりなき思考』(齋藤元紀監訳、法政大学出版局、2020年)などがある。
※上記内容は本書刊行時のものです。序 論 「外なき内」とは何か
第一部 夢の哲学者ニーチェ──初期著作における生成の問題
第一部のための予備考察
第一章 哲学者ニーチェの出発点
第一節 生成という絶望
第二節 ニーチェのアナクロニズム
第三節 ニーチェ哲学の前形式
第二章 夢のなかでいかにして夢だと気づくか──『悲劇の誕生』における仮象の哲学
第一節 『悲劇の誕生』のテーマ
第二節 仮象感覚という出発点
第三節 外なき内でいかにしてこれは仮象だと気づくか
第四節 ディオニュソス的真理
第三章 歴史に内在する生──「生に対する歴史の利害」 における地平の問題
第一節 ニーチェの歴史学批判
第二節 想起と忘却は連動する
第三節 外なき内としての地平
第二部 外なき内における自由──中期著作における必然性の問題
第二部のための予備考察
第一章 外なき内に自由はあるか──『人間的、あまりに人間的』と『曙光』における必然性の問題
第一節 ニーチェの両立論をめぐって
第二節 過去への妄執からの自由意志説の誕生──中期ニーチェの自由論のコンテクストについて
第三節 外なき内における必然性の肯定
第四節 ニーチェの両立論再説──過去との和解というモチーフについて
第二章 外なき内の世界の自然化──中期著作におけるニーチェの道徳批判
第一節 『人間的、あまりに人間的』におけるエゴイズム
第二節 『曙光』と『悦ばしき知識』における道徳の自然化の試み
第三章 セラピーとしての哲学──外なき内としての生の治療
第一節 セラピーとしての哲学の伝統
第二節 中期ニーチェ思想におけるエピクロス的ケア
第三部 ニーチェの意志の心理学──後期著作におけるニヒリズムの問題
第三部のための予備考察
第一章 なぜ世界は外なき内になったのか──ニヒリズムの成立をめぐって
第一節 ニーチェのニヒリズム概念の由来
第二節 外なき内としての生、あるいはニヒリズムの到来
第三節 病者の光学という思考法
第二章 ニーチェによる意志の心理学──『善悪の彼岸』における霊魂論をめぐって
第一節 外なき内を生きる肉体──ニーチェの心身二元論批判
第二節 新しい霊魂論としてのニーチェ心理学
第三節 一九世紀心理学とニーチェの意志の心理学
第三章 意志と解釈としての世界──ニーチェによる「この生」の肯定
第一節 なぜ 「権力への意志」でなければならないのか
第二節 外なき内としての生の否定──弱者とは何者か
第三節 外なき内としての生の肯定──強者とは何者か
結 論
附論Ⅰ ニーチェによる価値転換の思想
第一節 「神の死」と価値の多元性
第二節 ニーチェは新しい価値を創造したのか
第三節 生の肯定としての「価値の創造」
附論Ⅱ デリダの死刑論とニーチェ──罪と罰の脱構築に向けて
第一節 『道徳の系譜学』はいかなる書物か
第二節 デリダ・カント・ニーチェ
第三節 「ニーチェ的身振り」が暴き出すもの
第四節 認識者の自己認識の困難をめぐって
あとがき
参考文献
索 引
第一部 夢の哲学者ニーチェ──初期著作における生成の問題
第一部のための予備考察
第一章 哲学者ニーチェの出発点
第一節 生成という絶望
第二節 ニーチェのアナクロニズム
第三節 ニーチェ哲学の前形式
第二章 夢のなかでいかにして夢だと気づくか──『悲劇の誕生』における仮象の哲学
第一節 『悲劇の誕生』のテーマ
第二節 仮象感覚という出発点
第三節 外なき内でいかにしてこれは仮象だと気づくか
第四節 ディオニュソス的真理
第三章 歴史に内在する生──「生に対する歴史の利害」 における地平の問題
第一節 ニーチェの歴史学批判
第二節 想起と忘却は連動する
第三節 外なき内としての地平
第二部 外なき内における自由──中期著作における必然性の問題
第二部のための予備考察
第一章 外なき内に自由はあるか──『人間的、あまりに人間的』と『曙光』における必然性の問題
第一節 ニーチェの両立論をめぐって
第二節 過去への妄執からの自由意志説の誕生──中期ニーチェの自由論のコンテクストについて
第三節 外なき内における必然性の肯定
第四節 ニーチェの両立論再説──過去との和解というモチーフについて
第二章 外なき内の世界の自然化──中期著作におけるニーチェの道徳批判
第一節 『人間的、あまりに人間的』におけるエゴイズム
第二節 『曙光』と『悦ばしき知識』における道徳の自然化の試み
第三章 セラピーとしての哲学──外なき内としての生の治療
第一節 セラピーとしての哲学の伝統
第二節 中期ニーチェ思想におけるエピクロス的ケア
第三部 ニーチェの意志の心理学──後期著作におけるニヒリズムの問題
第三部のための予備考察
第一章 なぜ世界は外なき内になったのか──ニヒリズムの成立をめぐって
第一節 ニーチェのニヒリズム概念の由来
第二節 外なき内としての生、あるいはニヒリズムの到来
第三節 病者の光学という思考法
第二章 ニーチェによる意志の心理学──『善悪の彼岸』における霊魂論をめぐって
第一節 外なき内を生きる肉体──ニーチェの心身二元論批判
第二節 新しい霊魂論としてのニーチェ心理学
第三節 一九世紀心理学とニーチェの意志の心理学
第三章 意志と解釈としての世界──ニーチェによる「この生」の肯定
第一節 なぜ 「権力への意志」でなければならないのか
第二節 外なき内としての生の否定──弱者とは何者か
第三節 外なき内としての生の肯定──強者とは何者か
結 論
附論Ⅰ ニーチェによる価値転換の思想
第一節 「神の死」と価値の多元性
第二節 ニーチェは新しい価値を創造したのか
第三節 生の肯定としての「価値の創造」
附論Ⅱ デリダの死刑論とニーチェ──罪と罰の脱構築に向けて
第一節 『道徳の系譜学』はいかなる書物か
第二節 デリダ・カント・ニーチェ
第三節 「ニーチェ的身振り」が暴き出すもの
第四節 認識者の自己認識の困難をめぐって
あとがき
参考文献
索 引