若き日にこの地で学び、この地を原点としてビザンツやイスラーム世界、さらには江戸東京を含む世界の都市へ視点を広げ、水都学の提唱に至る著者のヴェネツィア研究の集大成。その成り立ちと魅力を語り、交易都市から文化都市へと転換する十六世紀の生活空間、サン・マルコ広場の再構成の過程、都市の祝祭空間を論じて、水と共生してきたこの都市のサステイナブルな発展の歴史を明らかにする
陣内 秀信(ジンナイ ヒデノブ)
1947年、福岡県生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・工学博士。法政大学デザイン工学部教授。イタリア政府給費留学生としてヴェネツィア建築大学に留学、ユネスコのローマ・センターで研修。専門はイタリア都市史•建築史。パレルモ大学、トレント大学、ローマ大学にて契約教授を勤めた。地中海学会会長、都市史学会会長。
主要著書に『東京の空間人類学』(筑摩書房、1985年)、『ヴェネツィア──都市のコンテクストを読む』(鹿島出版会、1986年)、『都市を読む*イタリア』(法政大学出版局、1988年)、『ヴェネツィア──水上の迷宮都市』(講談社、1992年)、『都市と人間』(岩波書店、1993年)、『迷宮都市ヴェネツィアを歩く』(2004年、角川書店)、『南イタリア都市の居住空間』(編著、中央公論美術出版、2005年)、『地中海世界の都市と住居』(山川出版社、2007年)、『イタリア海洋都市の精神』(講談社、2008年)、『イタリアの街角から──スローシティを歩く』(弦書房、2010年)、『イタリア都市の空間人類学』(弦書房、2015年)など他多数。
受賞歴:サントリー学芸賞、日本工業新聞技術・科学図書文化賞優秀賞、地中海学会賞、建築史学会賞、日本建築学会賞、イタリア共和国功労勲章、パルマ「水の書物」国際賞、ローマ大学名誉学士号、アマルフィ名誉市民。
序 章 比類なき水都の魅力
第1章 海の都市国家としての誕生
1 都市の立地条件
2 初期の歴史
3 都市の基本構造
4 港湾都市としての機能配置
5 リアルト市場
6 外国人コミュニティ
7 旅人・巡礼者
8 娼 婦
第2章 一六世紀における庶民の生活空間
1 中世の都市風景
2 「中心」と「周縁」の形成
3 都市におけるスクオラの役割
4 庶民の集合住宅
5 一六世紀の集合的生活環境
6 むすび
第3章 一六世紀における都市空間の統合
1 都市像の転換
2 中世後期における都市統合への動き
3 地図の表現法に見る都市のイメージの変化
4 ピアツェッタの理想都市空間への改造
5 祝祭の舞台としての広場
6 象徴空間の水上への展開
第4章 カナル・グランデの機能と意味
1 水辺の意味を問い直す
2 運河成立の背景
3 港湾機能の展開
4 聖なる空間
5 ステイタス・シンボルとしての館
6 今に生きる大運河
第5章 カナル・グランデを望む貴族住宅
1 開放的な商館建築の成立
2 高密な水の都市へ
3 舞台装置的な都市空間
第6章 教会建築と運河の関係
1 はじめに
2 分析の方法
3 中世における教会の配置の一般原則
4 内部の運河と教会の関係
5 大スケールの運河と教会建築
6 おわりに
第7章 祝祭空間としての都市構造
1 都市研究の新たな潮流
2 祝祭の社会的性格
3 都市空間の中のパフォーマンス
4 ファンタジーの中の都市
第8章 都市図における表現法の変遷
1 はじめに
2 中世の都市図
3 ルネサンスにおける鳥瞰図の技術
4 都市図に表われた世界観や文化状況
5 理想都市の図的表現
6 地形図の登場とその展開
7 日本の都市図との比較の視点から
第9章 水都史から見た東京との比較
1 水都史とは何か
2 水都の立地、河川整備、埋立て
3 水害からの防御と水の活用
4 舟運と港の機能
5 市場と広場
6 都市の繁栄を支えた周辺地域──木材と食料の供給
7 聖なる場としての水辺
8 劇場の立地
9 港湾機能の外側への移動
10 水辺の喪失、そして再生へ
第10章 水を現代に生かす都市づくり
1 一周遅れのトップランナー
2 物流の歴史空間を生活と文化の現代空間へ
3 水辺空間のタイプごとの現代的な機能と役割
4 市民生活と国際都市の営みを支える多彩な舟運
5 冠水とつきあい、水の恵みを楽しむ市民たち
第11章 今、水都が直面する危機 【共同執筆・樋渡 彩】
1 はじめに
2 ヴェネツィアの立地
3 水との戦いの歴史
4 直面する課題
5 おわりに
第12章 水と共生する苦悩と喜び
1 アックア・アルタの宿命
2 水上の立地がもった有利な条件
3 水に開く建築と都市
4 水の都の生き残り戦略
5 ラグーナの水の管理
終 章 交易都市から文化都市へ、そして環境都市へ
初出一覧
図版出典一覧
あとがき
第1章 海の都市国家としての誕生
1 都市の立地条件
2 初期の歴史
3 都市の基本構造
4 港湾都市としての機能配置
5 リアルト市場
6 外国人コミュニティ
7 旅人・巡礼者
8 娼 婦
第2章 一六世紀における庶民の生活空間
1 中世の都市風景
2 「中心」と「周縁」の形成
3 都市におけるスクオラの役割
4 庶民の集合住宅
5 一六世紀の集合的生活環境
6 むすび
第3章 一六世紀における都市空間の統合
1 都市像の転換
2 中世後期における都市統合への動き
3 地図の表現法に見る都市のイメージの変化
4 ピアツェッタの理想都市空間への改造
5 祝祭の舞台としての広場
6 象徴空間の水上への展開
第4章 カナル・グランデの機能と意味
1 水辺の意味を問い直す
2 運河成立の背景
3 港湾機能の展開
4 聖なる空間
5 ステイタス・シンボルとしての館
6 今に生きる大運河
第5章 カナル・グランデを望む貴族住宅
1 開放的な商館建築の成立
2 高密な水の都市へ
3 舞台装置的な都市空間
第6章 教会建築と運河の関係
1 はじめに
2 分析の方法
3 中世における教会の配置の一般原則
4 内部の運河と教会の関係
5 大スケールの運河と教会建築
6 おわりに
第7章 祝祭空間としての都市構造
1 都市研究の新たな潮流
2 祝祭の社会的性格
3 都市空間の中のパフォーマンス
4 ファンタジーの中の都市
第8章 都市図における表現法の変遷
1 はじめに
2 中世の都市図
3 ルネサンスにおける鳥瞰図の技術
4 都市図に表われた世界観や文化状況
5 理想都市の図的表現
6 地形図の登場とその展開
7 日本の都市図との比較の視点から
第9章 水都史から見た東京との比較
1 水都史とは何か
2 水都の立地、河川整備、埋立て
3 水害からの防御と水の活用
4 舟運と港の機能
5 市場と広場
6 都市の繁栄を支えた周辺地域──木材と食料の供給
7 聖なる場としての水辺
8 劇場の立地
9 港湾機能の外側への移動
10 水辺の喪失、そして再生へ
第10章 水を現代に生かす都市づくり
1 一周遅れのトップランナー
2 物流の歴史空間を生活と文化の現代空間へ
3 水辺空間のタイプごとの現代的な機能と役割
4 市民生活と国際都市の営みを支える多彩な舟運
5 冠水とつきあい、水の恵みを楽しむ市民たち
第11章 今、水都が直面する危機 【共同執筆・樋渡 彩】
1 はじめに
2 ヴェネツィアの立地
3 水との戦いの歴史
4 直面する課題
5 おわりに
第12章 水と共生する苦悩と喜び
1 アックア・アルタの宿命
2 水上の立地がもった有利な条件
3 水に開く建築と都市
4 水の都の生き残り戦略
5 ラグーナの水の管理
終 章 交易都市から文化都市へ、そして環境都市へ
初出一覧
図版出典一覧
あとがき
書評掲載
「サンデー毎日」(2017年6月4日号/池内紀氏・評)にて紹介されました。
「WEBRONZA」(2017年6月02日付/松本裕喜氏・評)にて紹介されました。
「西日本新聞」(2017年7月23日付)にて紹介されました。