叢書・ウニベルシタス 1109
イシスのヴェール
自然概念の歴史をめぐるエッセー
ISBN978-4-588-01109-2 C1310 [2020年01月 刊行]
ピエール・アド(アド ピエール)
(Pierre Hadot)
1922年生。パリのカトリック家庭に生まれ、神学教育を受ける。15歳で高等神学校に進級、22歳で司祭の資格を得たのち、ソルボンヌで神学・哲学・文献学を学ぶ。27歳でCNRS(フランス国立科学研究センター)の研究員となり、宗教界を離れて哲学の道を選ぶ。文献学の研究を土台として、古代ギリシア思想と新プラトン主義、とくにプロティノス研究で著名となる。1963年にはEPHE(高等研究実習院)のディレクター、82年にはミシェル・フーコーの推薦もありコレージュ・ド・フランスの教授に就任。2010年没。著作に『プロティノス──視線の純化』(Protin ou la simplicité du regard, 1963)、『古代哲学とは何か』(Qu’est-ce que la philosophie antique?, 1995)、『生き方としての哲学』(Philosophie comme manière de vivre, 2002)ほか多数。
小黒 和子(オグロ カズコ)
1958年東京女子大学文理学部英米文学科卒業。1966年米国ワシントン大学大学院修士課程修了。元東京女子大学助教授、元早稲田大学非常勤講師。主な著書に『詩人の目──コールリッジを読む』(校倉書房)、訳書にコウルリッジ『文学的自叙伝──文学者としての我が人生と意見の伝記的素描』(共訳、法政大学出版局)、ニコルソン『暗い山と栄光の山』(国書刊行会)、『円環の破壊』(みすず書房)ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。エフェソスでのプロローグ 謎の箴言
Ⅰ 死のヴェール
第1章 ヘラクレイトスの箴言 「生まれたものは消滅に向かう」
Ⅱ 自然のヴェール
第2章 フュシスから〈自然〉へ
1 関係的用法から独立用法へ
2 プラトン
3 アリストテレス
4 自然の格率
5 ストア派
6 自然の擬人化
第3章 神々の秘密と自然の秘密
1 神の秘密
2 自然の秘密
3 秘密としての自然
4 中世と近代における自然の秘密
Ⅲ 「〈自然〉は隠れることを好む」
第4章 ヘラクレイトスの箴言と寓意的解釈
1 神学的自然学
2 アレクサンドリアのフィロン
第5章 「自然はその身を包もうとする」 神話の形と身体の形
1 プラトン『ティマイオス』における神話的自然学とエピクロス派の批判
2 自然が身を包みたがるのはそれが低位の存在であるから
第6章 カリュプソあるいは「想像力の長いヴェール」
1 自然の地位の低さ
2 自然の包衣と想像力
3 〈自然〉の慎ましさ
4 裸身と着衣
5 自然のプロセスと想像のプロセス
第7章 異教の精霊
1 自然、神々、伝統的祭儀
2 異教の擁護と寛容性──テミスティオスとシュンマコス
3 「テレスティケー(聖化の術)」──皇帝ユリアヌス
第8章 「ギリシアの神々」
1 キリスト教世界における異教の神話中世
2 ルネサンス
3 シラーの「ギリシアの神々」
Ⅳ 自然の秘密のヴェールを外す
第9章 プロメテウスとオルフェウス
1 自然科学による秘密の発見
2 裁判官の手法
3 観想の自然学
4 プロメテウスとオルフェウス
V プロメテウス的態度──技術による秘密の発見
第10章 古代からルネサンスまでの機械術と魔術
1 プロメテウス的態度
2 古代の機械術
3 古代の魔術
4 中世後期とルネサンスにおける自然魔術
5 中世とルネサンスにおける機械術と魔術
第11章 実験科学と自然の機械化
1 古代と中世における実験
2 魔術と機械術の遺産
3 十七世紀の機械革命
4 自然の秘密
5 キリスト教による技術の勧め
6 神の秘密
7 「引退したエンジニア」
8 「自然の死」
第12章 プロメテウス的態度への批判
1 虚栄の好奇心
2 自然を強制する技術への批判
3 原始至上主義
4 近代の不安──ルソーとゲーテ
5 現代の不安
Ⅵ オルフェウス的態度──言論、詩、芸術による秘密の発見
第13章 推論的学問としての自然学
1 自然の秘密発見の二つの方法
2 プラトンの『ティマイオス』
3 自然学の推測的性質
4 同一の現象のさまざまな説明
5 「現象を救う」
第14章 〈真理〉は〈時間〉の娘
1 探究の希望
2 古代における科学的知識の進歩の観念
3 漸進的啓示としての進歩
4 進歩──世代を重ねた研究の努力
5 セネカ──進歩の概念の近代的発展
6 〈真理〉は〈時間〉の娘
7 科学の進歩──全人類の無限の仕事
第15章 精神の修練としての自然学
1 知る喜び
2 自然の観想と魂の偉大さ
3 客観性の倫理としての自然研究
4 人間に奉仕する自然研究
第16章 自然のふるまい──節約、遊び、それとも浪費?
1 節約家の〈自然〉
2 〈自然〉の遊び心
3 〈自然〉の浪費
第17章 詩のモデル
1 〈自然〉は詩人
2 〈自然〉という象形文字的言語
3 〈宇宙という詩〉
第18章 美的感覚と形の生成
1 実在に対する三つの見方
2 『自然と美学』
3 形態の生成
4 分極性と上昇
5 螺旋形と蛇行線
6 宇宙的脱我
Ⅶ イシスのヴェール
第19章 アルテミスとイシス
1 エフェソスのアルテミス
2 イシス
3 イシスのヴェール
4 ヴェールを外すという主題
Ⅷ 自然の秘密から実存の神秘へ──畏怖と感嘆
第20章 イシスはヴェールを持たず
1 〈自然〉の胸像のヴェールを外す天使
2 ゲーテの科学的方法
3 「白日のもとの神秘」
第21章 聖なる戦慄
1 自然に対する見方の変化
2 プルタルコスとプロクロスに見るイシス
3 フリーメイソンのイシス
4 ドイツの前ロマン主義およびロマン主義のイシス
5 崇高の感情と聖なる戦慄
第22章 自然はスフィンクス
1 真理への意志と仮象の崇拝
2 イシスのヴェールとスフィンクスとしての自然
3 真理の「恥じらい」とバウボ
4 ディオニュソス的恍惚
第23章 〈自然〉の秘密から存在の神秘へ
1 シェリング
2 実存の神秘と不安
3 ハイデガーにおけるヘラクレイトスの箴言
4 不安、吐き気、驚き……
むすび
訳者あとがき
原 注
参考文献について
人名索引
刊行後、本書の「191頁」に、誤って組版上のミスが生じていたことがわかりました。
同頁の 6行目、「……古代人にとって 」という文字の後が改行されており、
単語が一つ脱落しております。
正しくは、
古代人にとって、星界は神の世界であり、
となり、次行に続きます。
読者の皆様ならびに訳者・関係各位には、誠にご迷惑をおかけいたします。
訂正してお詫び申し上げます。
2020年1月
法政大学出版局 編集部
書評掲載
「図書新聞」(2020年7月11日号/津崎良典氏・評)に紹介されました。
「地理学評論」(2020年7月号/小野有五氏・評)に紹介されました。
日本西洋古典学会HP「古典学の広場 新刊書フォーラム」(2020年03月12日付/小野有五氏・評)に紹介されました。
「モルフォロギア」(第43号、2021年/石原あえか氏・評)に紹介されました。