叢書・ウニベルシタス 1161
ニューロ
新しい脳科学と心のマネジメント
ISBN978-4-588-01161-0 C1330 [2023年10月 刊行]
ニコラス・ローズ(ローズ ニコラス)
ニコラス・ローズ(Nikolas Rose)
1947年生。イギリスの社会学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスBIOS研究所所長をへて、現在ロンドン大学キングスカレッジ教授。生物学研究から精神医学およびリスク研究に向かい、生物学や心理学、社会学との境界領域で、フーコーの生権力理論を軸に多産な研究をおこなう。現代社会における自己の統治と先端医療技術の関わり、生命科学・生命倫理の問題を、社会全体の権力論的構造のなかで探究する議論は、現代の生政治論への大きな貢献として注目を集めている。著書に『生そのものの政治学』(法政大学出版局、2014)、『魂を統治する』(1989)、『われわれの自己を発明する』(1996)、『自由の権力』(1999)、共著に『現在を統治する』(2008)ほか多数。
ジョエル・M. アビ=ラシェド(アビ ラシェド ジョエル)
ジョエル・M.アビ=ラシェド(Joelle M. Abi-Rached)
医学史家・医師・哲学者。ハーバード大学講師(科学史)を経て、ハーバード・ラドクリフ・インスティテュート・フェロー。生政治研究。歴史・哲学・倫理・医療・グローバルヘルス・政策の交わりに関心をおく。ローカルかつグローバルな文脈における精神医学の歴史を、また低中所得国ないし「グローバルサウス」で展開される生政治を研究している。著書に『ʿAṣfūriyyeh ──中東における狂気・近代・戦争の歴史』(2020)、論文に “From brain to neuro:the Brain Research Association and the making of British neuroscience, 1965–1996” (Journal of the History of the Neurosciences)ほか。
檜垣 立哉(ヒガキ タツヤ)
檜垣 立哉 1964年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。大阪大学名誉教授、専修大学文学部教授。哲学・現代思想。著書に『生命と身体』(勁草書房)、『日本近代思想論』『ヴィータ・テクニカ』(青土社)、『バロックの哲学』(岩波書店)、『日本哲学原論序説』(人文書院)、『ベルクソンの哲学』『西田幾多郎の生命哲学』(講談社学術文庫)、『哲学者がみた日本競馬』(教育評論社)、監訳書にN.ローズ『生そのものの政治学』(法政大学出版局)ほか。
櫛原 克哉(クシハラ カツヤ)
櫛原 克哉 1988年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京通信大学講師。社会学。著書に『メンタルクリニックの社会学』(青土社)、共著に『支援と物語の社会学』(生活書院)、共訳書に『21世紀を生きるための社会学の教科書』(ちくま学芸文庫)ほか。
志水 洋人(シミズ ヒロト)
志水 洋人 1988年生。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会海外特別研究員(エジンバラ大学生物医学・自己・社会センター客員研究員)。立命館大学生存学研究所客員研究員。医療社会学。共著に『病と健康をめぐるせめぎあい』(ミネルヴァ書房)。論文に“Narrative reconstruction of mental illness as a work-stress-induced disorder”(Sociology of Health & Illness)ほか。
野島 那津子(ノジマ ナツコ)
野島 那津子 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。静岡文化芸術大学文化政策学部准教授。社会学。著書に『診断の社会学──「論争中の病」を患うということ』(慶應義塾大学出版会)、共著に『シリーズ人間科学5 病む』(大阪大学出版会)、論文に「「探求の語り」再考──病気を「受け入れていない」線維筋痛症患者の語りを通して」(『社会学評論』第69巻第1号)ほか。
山田 理絵(ヤマダ リエ)
山田 理絵 1989年生。東京大学総合文化研究科博士課程修了。東京大学総合文化研究科・教養学部附属共生のための国際哲学研究センター(UTCP)上廣共生哲学講座特任助教。青山学院大学、聖マリアンナ医科大学など非常勤講師。社会学。共著に『精神医学と当事者』(東京大学出版会)ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。序論
デカルト主義を超えて?
脳を通じて統治する
われわれの主張
概念とテクノロジー
未来を統治する─脳を通じて
脳の経済学
脳と人格
人間科学?
第一章 神経分子的脳
どのように神経科学の歴史を記述するべきなのか
神経を通じた道
脳を通じた道
狂気を通じた道
インフラストラクチャー
神経分子的な思考様式
可塑性へ
神経分子的なものと可塑的な脳
第二章 不可視のものを可視化する
臨床の眼差し
身体そのものへの刻印
脳を開く
生きている脳を見る
可視化の疫学
脳機能は局在化されるのか
実験室──場所あるいは非・場所?
ピクセルから画像へ
エビデンスと解釈
脳の可視化の新たなエンジン
第三章 彼らのマウスのどこが悪いのか?
人為性?
第一の安定化──実験者
第二の安定化──セットアップ
第三の安定化──動物
Models1, Models2, Models3, Models4 (そしてもしかするとModels5)
人間の特殊性
転 訳
創造としての生命
第四章 すべては脳の中に?
真の狂気を定義する
精神障害の負荷
すべては脳の中に?
神経精神医学と診断のジレンマ
第五章 社会脳
「社会脳仮説」
社会脳の病理
社会神経科学
神経科学を越えた社会神経科学
社会脳を統治する
第六章 反社会脳
具現化された犯罪的なるもの/身体化された犯罪者
生きている人間の脳の内部
神経法学?
統制の遺伝学
サイコパスの芽を摘みとる
素晴らしき数年間で脳を彫塑する
反社会脳を統治する
第七章 神経生物学的時代における人格性
挑戦される自己
病理的なものから正常なものへ
損傷からえられる教訓
現実世界についての非現実的なヴィジョン
リベティズム
自己──魂から脳へ
倫理と自己のテクノロジーの突然変異?
神経生物学的自己をケアする
結論 脳、心、そして自己を管理する
神経生物学的複合体
あるべき場所にある(In Situ)脳?
コーダ──神経生物学的時代の人間科学
補遺
監訳者あとがき
文献一覧
索引