叢書・ウニベルシタス 1162
テスト・ジャンキー
薬物ポルノ時代のセックス、ドラッグ、生政治

四六判 / 516ページ / 上製 / 価格 4,400円 (消費税 400円) 
ISBN978-4-588-01162-7 C1310 [2023年11月 刊行]

内容紹介

現代資本主義世界を統治する薬物ポルノ体制とは何か? トランス男性にしてフーコーやバトラー、ハラウェイ、ドゥルーズ=ガタリやデリダらの遺産を引き継ぐ著者が、テストステロンによる性別移行の実践と、補綴技術を介した性愛の限りない変容、そして〈悦びの力〉を肯定する衝撃のテクスト。差別を受けてきた性的実存の尊厳を根底から擁護する、新たなカウンター薬物ポルノ革命到来のために。

著訳者プロフィール

ポール・B.プレシアド(プレシアド ポール)

ポール・B.プレシアド(Paul B. Preciado)
1970年生まれ。スペインのブルゴス出身の哲学者。トランス・クィア活動家、キュレーター。ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチでジャック・デリダとアグネス・ヘラーに師事した後、プリンストン大学建築学科で博士号を取得。早くからトランスを自覚していたが、30代半ばからテストステロンを用い、外科手術をともなわない「緩やかなトランス」を開始。2015年に出生時に与えられたBeatrizの女性名でなくPaulを名のるようになり、2016年には戸籍上の性も「男性」に変更したが、ノンバイナリーなトランスの立場をとる。フーコー、ドゥルーズ、デリダの思想をハラウェイのサイボーグ・フェミニズムと接続し、現代の先端テクノロジー状況(先端生殖医療、サイボーグ技術、遺伝子工学、コンピューター技術、メディア技術、新薬理学、等々)におけるセクシュアリティをめぐる生政治・生権力の問題を、トランスジェンダー、クィアの立場から鋭く論じる。ニューヨーク大学やプリンストン大学の招聘教授を務めたほか、バルセロナ現代美術館、ソフィア王妃芸術センター、LUMA Arlesのキュレーターを務め、前衛的な性芸術や性文化の創造・普及の現場でも活躍している。未邦訳の著作に Pornotopia:an essay on Playboy’s architecture and biopolitics(Zone Books, 2014). Un appartement sur Uranus:Chroniques de la traversée(Grasset, 2019), Dysphoria Mundi: La révolution qui vient(Grasset, 2022)、ほか。

藤本 一勇(フジモト カズイサ)

藤本 一勇 1966年生まれ。早稲田大学文学学術院教授。現代哲学、表象・メディア論専攻。著書に『情報のマテリアリズム』(NTT出版)、『外国語学』(岩波書店)、『批判感覚の再生』(白澤社)、共著に『現代思想入門』(PHP研究所)、訳書にプレシアド『カウンターセックス宣言』『あなたがたに話す私はモンスター』、デリダ『散種』(共訳、以上 法政大学出版局)、同『プシュケー I・II』『哲学のナショナリズム』、デリダ/ルディネスコ『来たるべき世界のために』、デリダ/ハーバーマス『テロルの時代と哲学の使命』(以上 岩波書店)、バディウ『存在と出来事』『哲学の条件』(以上 藤原書店)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

著者注記



1 君の死
 ビデオ挿入

2 薬物ポルノ時代
 マスターベーションの共同作業
 〈悦びの力〉(POTENTIA GAUDENDI)
 興奮と制御

3 テストジェル
 注射
 Tとの逢引き

4 テクノセクシュアリティの歴史

5 どの点でVDの身体は実験的なコンテクストの要素になるのか
 最初のセックス契約
 第一級の雌犬
 中毒

6 テクノジェンダー
 異性愛の黄昏

7 Tになること
 状態‐ソファ‐身体‐分子
 分子になること
 ジェル状の悪魔

8 薬物権力
 麻薬セクシュアルな魔術
 身体のフィクション──性ホルモンの発明
 ポップな管理──薬物ポルノ的主体化の諸様相
 食用パノプティコン
 規律的建築のパッケージ──ダイアルパックと食用パノプティコンの発明

9 テスト狂
 君の精子と私の卵子
 最後の喧嘩
 出血
 中毒のフラストレーション
 テスト狂
 トランスか、ジャンキーか?
 雨天順延券
 赤ん坊の死骸

10 ポルノ権力
 ポルノ命法──汝自身をヤレ
 労働のポルノ化
 セックス・コピーライト──淫乱なテクノ・シニフィアンたち
 パリス・ヒルトン──マックス・ウェーバーとベッドイン
 都市のセックス競争
 薬物ポルノの労働者
 超物質的な労働
 ポルノ分業
 ぱっと燃え上がって、ぱっと消える
 貫通される開口部と貫通する外端部
 一般セックス
 性労働者、サイボーグになる

11 ジミと私
 処女学
 ケアの政治
 補綴のラッキースター
 ボーヴォワールなんて、くそくらえ

12 薬物ポルノ時代のジェンダー・ミクロ政治
   実験、自主中毒、ミューテーション
 ポストクィアのミクロ政治
 虐殺の政治学
 自己モルモット原理
 麻薬分析──フロイトとベンヤミンの批判精神の向精神薬的な起源
 ドラァグキング装置
 ジェンダー・バイオテロリズム

13 永遠の生
 毛むくじゃらの腕
 二七センチ
 サイズ
 セックス写真
 口外できない死
 薬物ポルノの天才
 迎え酒としての注射
 Tハイ
 哲学を斬首する
 永遠の生

訳者あとがき
訳 注
参考文献
索 引

『テスト・ジャンキー』あとがきPDF
*上記から、本書のあとがきをお読みいただけます。

書評掲載

『テスト・ジャンキー』が「図書新聞」(2024年06月01日号/横田祐美子氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『カウンターセックス宣言』
ポール・B.プレシアド:著
『あなたがたに話す私はモンスター』
ポール・B.プレシアド:著