叢書・ウニベルシタス 1177
ダーウィンの隠された素顔
人間の動物性とは何か

四六判 / 310ページ / 上製 / 価格 3,960円 (消費税 360円) 
ISBN978-4-588-01177-1 C1340 [2024年09月 刊行]

内容紹介

ダーウィンの進化論は旧来の自然科学のみならず哲学・宗教・政治経済をはじめとする人文社会科学の諸概念をも刷新したが、ダーウィン自身の意に反してその自然選択と競争の原理は曲解され、やがて悪しき優生思想や新自由主義的思考を生み出していった。著名な動物行動学者が社会進化論の犯した誤りを糺し、動物としての人間が生まれもつ協同・利他的本能の秘められた可能性を示すアクチュアルなダーウィン論。

著訳者プロフィール

ピエール・ジュヴァンタン(ジュヴァンタン ピエール)

ピエール・ジュヴァンタン(Pierre Jouventin)
1942年、マルセイユ生まれの動物行動学・生態学者。モンペリエ第2大学にて博士号を取得。1985年よりフランス国立科学研究センター(CNRS)のシゼ生物学研究センター所長を務める。特に鳥類と哺乳類および南極の生態学を専門とし、ペンギンの研究で知られる。日本語訳に『ペンギンは何を語り合っているか』(青柳昌宏訳、どうぶつ社、1996年)がある。

杉村 昌昭(スギムラ マサアキ)

杉村 昌昭(スギムラ マサアキ)
1945年生まれ。龍谷大学名誉教授。フランス文学・現代思想専攻。著書に『資本主義と横断性』(インパクト出版会)、『分裂共生論』(人文書院)、訳書にガタリ『分子革命』『精神と記号』(以上、法政大学出版局)、『三つのエコロジー』(平凡社ライブラリー)、『闘走機械』(松籟社)、『人はなぜ記号に従属するのか』『エコゾフィーとは何か』(以上、青土社)、ガタリ/ドゥルーズ『政治と精神分析』(法政大学出版局)、ガタリ/ネグリ『自由の新たな空間』(世界書院)、ガタリ/ロルニク『ミクロ政治学』(共訳、法政大学出版局)、ドス『ドゥルーズとガタリ』(河出書房新社)、アザン『パリ大全』(以文社)、ジェノスコ『フェリックス・ガタリ』(共訳、法政大学出版局)、ラッツァラート『耐え難き現在に革命を!』(法政大学出版局)、ブランコ『さらば偽造された大統領』(共訳、岩波書店)、ロバン『なぜ新型ウィルスが次々と世界を襲うのか?』(作品社)、ミルズ『人種契約』(共訳、法政大学出版局)、モラン『知識・無知・ミステリー』(法政大学出版局)、『戦争から戦争へ』(人文書院)、ベラルディ(ビフォ)『第三の無意識』(航思社)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

プロローグ──ダーウィン、この有名なのに未知の人

第一章 進化の発明
 「落ちこぼれ」のとんでもない考え
 ミステリーのミステリー
 〈大建築家〉のプランとは何だったか?
 尺度とパラダイムを変えなくてはならない
 誰が進化を発見したのか?

第二章 社会ダーウィニズム
 北アメリカの資本主義
 フランスにおける生物学的レイシズムの創設
 イギリスの優生学
 ドイツのナチズム
 生存闘争

第三章 ダーウィン社会主義
 イギリスのマルクス主義
 ソ連のルイセンコ主義
 ヨーロッパのアナキズム
 利他行動の生物学
 先天性か後天性か?
 社会生物学という爆弾

第四章 ダーウィニズムの社会的射程
 インテリジェント・デザインの祖先としての自然神学
 悪魔の福音
 不道徳な学説
 ダーウィニズムの道徳的射程

第五章 ダーウィン的社会
 資本主義社会の反映
 ダーウィン左派
 ダーウィンは右派か?
 人間的例外とは何か
 真のダーウィンとは何者か

エピローグ──ダーウィニズムの奥深さ

 訳者あとがき
 図版一覧
 文献一覧
 原 注
 人名索引

書評掲載

「日本経済新聞」(2024年11月02日/野家啓一氏・評)に紹介されました

関連書籍

『ダーウィン以後の美学』
ヴィンフリート・メニングハウス:著
『ダーウィンの珊瑚』
H.ブレーデカンプ:著