叢書・ウニベルシタス 1178
デカルトにおける生命の原理

四六判 / 360ページ / 上製 / 価格 4,840円 (消費税 440円) 
ISBN978-4-588-01178-8 C1310 [2025年02月 刊行]

内容紹介

心身二元論を打ち立て、西洋近代哲学を創始したデカルトの人間論の基礎には、アリストテレスやガレノスの古代に発し、ルネサンスの学者たちを経て同時代のハーヴィにいたる医学・解剖学・生理学との対決があった。自然観・生命観において人間と動物の差異をもたらす思考はどのように生じたか? 最新プレイヤード版校訂者でもある第一人者の決定版の仕事を完訳。日本語版あとがきも付す。

著訳者プロフィール

アニー・ビトボル=エスペリエス(エスペリエス アニー ビトボル)

アニー・ビトボル=エスペリエス(Annie Bitbol-Hespériès)
1950年生まれ。パリ大学デカルト研究所所員(membre du Centre d’Études Cartésiennes, Sorbonne Université)。1990年に本書を刊行後、1996年には『宇宙論』『人間論』の校訂版(René Descartes Le Monde, L’Homme, Paris, Le Seuil)刊行。2004年には「大学間保健図書館(BIUS, Bibliothèque interuniversitaire de Santé)」のサイトでネット上の展覧会「モンスター、ルネサンスから近世へ(Les monstres de la Renaissance à l’Âge classique)」を監修。この間、デカルトの医学生理学関係を中心とする論文を多数発表してきているが、最近の仕事としては、バイエ『デカルトの生涯(La Vie de Monsieur Descartes)』の校訂註釈版(Les Belles Lettres, Encre marine, 2022)、新しいデカルト『全集(Œuvres complètes)』の医学関係のテクスト全体の校訂・註釈(Tel Gallimard, tome II–2, 2023)、新しいプレイヤード版デカルト 『著作集(Œuvres)』2巻本(La Pléiade, Gallimard, 2024)の『方法序説』第5部、『人間論』、『人体の記述』、『ストックホルム文書』の校訂註解などがある。なお日本語の『デカルト 医学論集』(法政大学出版局、2017)、バイエ『デカルトの生涯』(全2巻、工作舎、2022)には序文・註解で参加している。

香川 知晶(カガワ チアキ)

香川 知晶(カガワ チアキ)
1951年生。筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程修了。山梨大学名誉教授。専門はフランス哲学・応用倫理学。著書:『死ぬ権利──カレン・クインラン事件と生命倫理の転回』(勁草書房)、『命は誰のものか 増補改訂版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共編著:『生命倫理の源流』(岩波書店)、『メタバイオエシックスの構築へ』(NTT出版)、共著:『エピステモロジーの現在』(慶應義塾大学出版会)、『「いのちの思想」を掘りおこす』(岩波書店)、『尊厳と生存』(法政大学出版局)、共訳書:『デカルト 医学論集』(法政大学出版局)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

序論 自然と生命

第Ⅰ部 デカルトと生物学の諸問題

第1章 デカルトの仕事における生物学的文書の位置

第2章 デカルトの情報源とデカルトの生命の原理の独自性

第Ⅱ部 霊魂、心臓、生命

第1章 心臓の熱、デカルトにおける生命の原理

A)予備的考察
  心臓の説明のための図解
B)心臓の運動に関する諸問題の枠組み
C)デカルトによる回答

第2章 先人たち

A)ヒポクラテス全集
B)アリストテレス
  付論:トマス・アクィナスの心臓論
C)ガレノス

第Ⅲ部 血液循環と動物精気循環の問題

序 論

第1章 ヒポクラテス全集、アリストテレス、ガレノスと 後継者たち

A)古代における血管の理解:『ヒポクラテス全集』、アリストテレス、およびガレノス
B)古代における血液の経路を表わすメタファー
C)古代からハーヴィへ

第2章 ハーヴィの血液循環説

A)血液循環、心臓・太陽、生命の原理
B)心臓の運動の経時変化
C)『心臓と血液の運動』の受容とデカルトの態度
D)デカルト生理学における動物精気の循環とハーヴィの解答。腺Hの起源

  カスパール・ボアン『解剖劇場』第3巻表10

結 論

文献表

あとがき──2025年日本語版のために

訳者あとがき

人名索引