ルソーと方法

第38回(2021年度)渋沢・クローデル賞 奨励賞 受賞
A5判 / 372ページ / 上製 / 価格 5,280円 (消費税 480円) 
ISBN978-4-588-15104-0 C1010 [2019年09月 刊行]

内容紹介

「貴方がたが神のように崇める秩序や方法は私にとって忌み嫌うべきものなのです」──啓蒙の世紀において知を知たらしめる社会的規範であった分析的方法を欺瞞として斥け、認識の原理と歴史の記述をラディカルに問い直した孤高のフィロゾーフ、ルソー。自らのエクリチュールを〈山師のやり口〉と称し、フランスの言論空間を揺るがせつづけた彼の、きわめて特異で真に哲学的な問題意識を剔出する。

著訳者プロフィール

淵田 仁(フチダ マサシ)

1984年、福井県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会学)。哲学・思想史専攻。現在、一橋大学大学院社会学研究科特任講師。共著に『百科全書の時空──典拠・生成・転位』(逸見龍生・小関武史編、法政大学出版局、2018年)、『〈つながり〉の現代思想──社会的紐帯をめぐる哲学・政治・精神分析』(松本卓也・山本圭編著、明石書店、2018年)、翻訳にルソー「自然の多様な混合物と構成物について」(飯田賢穂と共訳、『多様体』第1号、月曜社、2018年)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに
序論 方法をめぐる問い
 第一節 問題構成
  (a)方法への嫌悪とその不在、山師ルソー
  (b)ヴァンセンヌのイリュミナシオン、方法なき哲学者の起源
  (c)体系と方法
  (d)哲学と方法
  (e)本書の問い
 第二節 方法をめぐる諸解釈
  (a)発生論的/系譜的方法というイメージ
  (b)方法としての起源の探求
 第三節 本書における方法と限界
 第四節 論文構成

第一部 認識の方法

 問題設定
第一章 コンディヤックの分析的方法
 第一節 経験論と分析
 第二節 分析的方法の内実
 第三節 総合的方法と原理批判
 第四節 分析の諸問題
 第五節 自同性原理
第二章 ルソーの能力論
 第一節 ドン・デシャンに対するルソーの応答
 第二節 能力としての理性の位置
  (a)理性と能力
  (b)自由と自己改善能力
  (c)力能と能力
 第三節 飛躍の問題
第三章 分析への抵抗と批判
 第一節 『道徳書簡』第二書簡の文脈
 第二節 分析批判その一──内的感覚
  (a)原初的真理としての内的感覚
  (b)「自然の感覚」──モラリスト的痕跡
  (c)命題としての原初的真理
 第三節 分析批判その二──自同性原理への懐疑
 第四節 分析批判のひとつの起源──『化学教程』の一解釈

第二部 歴史の方法

 問題設定
第四章 「歴史家」の問題
 第一節 ルソーの凡庸な歴史観?
 第二節 『エミール』における歴史批判
 第三節 歴史家の条件──ルソーのトゥキディデス評価
 第四節 歴史家ルソーの二つの形象
第五章 『人間不平等起源論』における歴史記述
 第一節 起源の位相
  (a)問いの書き換え
  (b)「起源」概念──コンディヤック再訪
 第二節 『人間不平等起源論』における批判
  (a)先行者たちへの批判
  (b)自然状態と社会状態における断絶の問題
 第三節 自然状態の措定とその正当化の戦略
 第四節 歴史叙述の方法
第六章 自己の歴史の語り
 第一節 誤解の修正──「マルゼルブへの手紙」
 第二節 証拠の問題──『ボーモンへの手紙』
  (a)法廷の創設
  (b)「私のお決まりの方法」
 第三節 「すべてを語る」が要請するもの──『告白』

結論 山師とは誰か

  あとがき
  文献表
  事項索引
  人名索引

書評掲載

『読書人』(2019年12月6日号/佐藤淳二氏・評)に紹介されました。

「図書新聞」(2020年2月1日号/坂倉祐治氏・評)に紹介されました。

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