危機の時代と田辺哲学
田辺元没後60周年記念論集

廖欽彬:編著, 河合 一樹:編著
A5判 / 474ページ / 上製 / 価格 5,500円 (消費税 500円) 
ISBN978-4-588-15131-6 C3010 [2022年11月 刊行]

内容紹介

20世紀日本を代表する京都学派の哲学者・田辺元。大戦間期にフッサールやハイデガーと交流し、〈種の論理〉をはじめ当時世界最先端の哲学を展開した思想家の限界と可能性とは何か? コロナ禍の危機のなかで開かれた田辺元記念哲学会・求真会主催の記念シンポジウムをもとに、気鋭の執筆者らが世界哲学的な観点から田辺哲学の今日的意味に迫る。本邦初訳「フッサールから田辺宛の書簡」も収録!

著訳者プロフィール

廖欽彬(リョウ キンヒン)

( Liao Chin ping)
中国・中山大学哲学系教授。日本哲学、東アジア哲学、比較哲学。著書:『戦前台湾哲学諸相──実存的行旅』(五南出版)、『近代日本哲学中的田辺元哲学──比較哲学与跨文化哲学的視点』(北京商務印書館)、『宗教哲学の救済論──後期田辺哲学の研究』(台湾大学出版中心)。訳書『日本哲学与跨文化哲学』(中山大学出版社)。編著:『東アジアにおける哲学の生成と発展──間文化の視点から』(法政大学出版局)、『洪耀勲文献選輯』(台湾大学出版中心)ほか。

河合 一樹(カワイ カズキ)

広西大学助理教授。日本思想史。著書:『大和心と正名──本居宣長の学問観と古代観』(法政大学出版局)、編著:『東アジアにおける哲学の生成と発展』(法政大学出版局)、論文:「古事記伝と姓氏録──本居宣長における「ウヂカバネ」の成立」(『日本思想史学』51号)、「死者の名を呼ぶ──本居宣長における諱の問題」(『倫理学年報』67号)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき 田辺哲学を開く 【廖欽彬】

第Ⅰ部 座談会+総合討議 田辺哲学の現代的意義──コロナ時代に向けて

《座談会》 司会:秋富克哉
 提題:板橋勇仁  同一性の統御を超えて──種の論理の弁証法のいま
 出口康夫  初めからの「実存協同」へ
 上原麻有子 取り残されたる「我と汝」の問題
 張政遠  コロナ禍のなかで「危機の哲学か哲学の危機か」を読む
 廖欽彬  「体制なき体制」の思考

《総合討議》 コメント:小林敏明  司会:直江清隆

第Ⅱ部 田辺哲学研究の現段階

藤田正勝 田辺元の「死の哲学」

嶺 秀樹 田辺の後期哲学における歴史主義──行為的直観批判を手がかりとして

田口 茂 田辺元の「媒介」概念とそのポテンシャル

朝倉友海 田辺哲学における存在と数理の連関

浦井 聡  倫理と論理──「種の論理」における合理化の構造と意義

第Ⅲ部 世界哲学に開かれた田辺哲学

納富信留 田辺元とギリシア哲学──プラトン弁証法としての「種の論理」

牧野英二 田辺とディルタイの哲学的思索の「家族的類似性」──『ディルタイ=ヨルク往復書簡集』とハイデガーの影響作用史再考

植村玄輝 田辺の潜在的な競合相手としてのフッサールの社会存在論──有意義な比較のための序説

郭旻錫 植民地朝鮮と田辺元──朴鍾鴻との比較を中心に

廖欽彬 形の論理──唐木順三と田辺元の制作をめぐって

第Ⅳ部 危機の時代の田辺哲学

上原麻有子 田辺哲学への問い──不可視の他者

板橋勇仁 「懺悔道」と「国家的存在の論理」の積極的意義──自由な行為の「必然」を求めて

鬼頭葉子 田辺元における愛の三一性の構造──キリスト教神学の視点から

田島樹里奈 田辺元の「友愛」思想──「自由・平等・友愛」に潜む宗教性とプロパガンダ

河合一樹 種の論理と近代の「家」

織田和明 田辺元の倒し方──絶対転換としての絶対無の空虚さをめぐって

田辺元年譜

あとがき 【河合一樹】

資料編 [ドイツ語からの翻刻/日本語訳/解説]鈴木崇志+浜渦辰二
    [中国語訳/解説]倪梁康
  ① エトムント・フッサールから田辺元への書簡
  ② マルヴィーネ・フッサールから田辺元への書簡
  書簡写真/翻刻テクスト/日本語訳/中国語訳
  ③ 解 説 (付・田辺元からフッサールへの書簡)
  ④ 中国語版解説 (付・田辺元からフッサールへの書簡・中国語訳)

事項索引
人名索引

■執筆者・協力者
藤田正勝(ふじた まさかつ)
京都大学名誉教授。哲学・日本哲学史。著書Philosophie und Religion beim jungen Hegel(ドイツ・ブヴィエ社)、『哲学のヒント』『日本文化をよむ』(岩波新書)、『日本哲学史』(昭和堂)、『人間・西田幾多郎──未完の哲学』(岩波書店)、『はじめての哲学』(岩波ジュニア新書)、編著:『思想間の対話──東アジアにおける哲学の受容と展開』(編著、法政大学出版局)ほか。

嶺 秀樹(みね ひでき)
関西学院大学名誉教授。著著:『存在と無のはざまで──ハイデッガーと形而上学』『ハイデッガーと日本の哲学──和辻哲郎、九鬼周造、田辺元』『西田哲学と田辺哲学の対決──場所の論理と弁証法』(ミネルヴァ書房)、共著:『京都学派の遺産──生と死と環境』(晃洋書房)、共訳書:『時間概念の歴史への序説 ハイデッガー全集 第20巻』(創文社)ほか。

田口 茂(たぐち しげる)
北海道大学大学院文学研究院教授。人間知・脳・AI研究教育センター長。著書:Das Problem des ‘Ur-Ich’ bei Edmund Husserl(Springer)、『現象学という思考』(筑摩書房)、共著:『〈現実〉とは何か』(筑摩書房)、共編著:『渦動する象徴──田辺哲学のダイナミズム』(晃洋書房)、Tetsugaku Companion to Phenomenology and Japanese Philosophy(Springer) ほか。

朝倉友海(あさくら ともみ)
東京大学大学院総合文化研究科准教授。哲学、比較思想。著書:『「東アジアに哲学はない」のか──京都学派と新儒家』(岩波書店)、『概念と個別性──スピノザ哲学研究』(東信堂)。分担執筆:The Dao Companion to Japanese Buddhist Philosophy(Springer)、『哲学すること──松永澄夫への異議と答弁』(中央公論新社)、『主体の論理・概念の倫理』(以文社)ほか。

浦井 聡(うらい さとし)
日本学術振興会特別研究員PD、北海道大学CHAIN博士研究員。宗教哲学・浄土教思想。論文:
“Tanabe Hajime’s Social Ontology:From the “Logic of Species” to the “Logic of Love””(『求真』第27
号)、共訳:“Tanabe Hajime:The Third Stage of Ontology”、“Kiyozawa Manshi:The Skeleton of a Philosophy of Other-Power:A Draft”(ともにEuropean Journal of Japanese Philosophy Vol. 7) ほか。

納富信留(のうとみ のぶる)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。西洋古代哲学、西洋古典学。著書:The Unity of Plato’s Sophist:between the Sophist and the Philosopher(Cambridge UP)、『ソフィストとは誰か?』(ちくま学芸文庫)、『プラトン 理想国の現在』(慶應義塾大学出版会)、『プラトンとの哲学』(岩波新書)、『ギリシア哲学史』(筑摩書房)、訳書:『ソクラテスの弁明』(光文社古典新訳文庫)ほか。

牧野英二(まきの えいじ)
法政大学名誉教授。哲学。単著『「持続可能性の哲学」への道』(法政大学出版局)、『カントを読む──ポストモダニズム以降の批判哲学』(岩波人文書セレクション)、『崇高の哲学』(法政大学出版局)、編著:『新・カント読本』(法政大学出版局)、訳書『判断力批判』(『カント全集』8巻・9巻、岩波書店)、『精神科学序説Ⅰ』(『ディルタイ全集』第1巻、法政大学出版局)ほか。

植村玄輝(うえむら げんき)
岡山大学学術研究院社会文化科学学域准教授。哲学。著書:『真理・存在・意識──フッサール『論理学研究』を読む』(知泉書館)、共編著:『ワードマップ現代現象学──経験からはじめる哲学入門』(新曜社)、共訳書:H.ドレイファス、Ch.テイラー『実在論を立て直す』(法政大学出版局)、T. E.タフコ編『アリストテレス的現代形而上学』(春秋社)ほか。

郭旻錫(かく みんそく)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程。東アジア哲学、日韓比較思想史。論文:「運動する東アジア──「東亜協同体」における「媒介」を中心に」(『比較文明』35号)、「田辺元の「種の論理」における民族的自己認識」(『哲学』73号)、「李箱における「東京」の意味──価値の零度」(『比較文明』37号)ほか。

上原麻有子(うえはら まゆこ)
京都大学大学院文学研究科日本哲学史専修・教授。Journal of Japanese Philosophy(SUNY Press)編集長。編著:Philosopher la traduction/Philosophizing Translation(南山宗教文化研究所/知足堂)、共著:Contemporary Japanese Philosophy(Rowman&Littlefield International)、『近代人文学はいかに形成されたか』(勉誠出版)、『世界哲学史』8(ちくま新書)ほか。

板橋勇仁(いたばし ゆうじん)
立正大学文学部(哲学科) 教授。近現代日本思想、近代ドイツ哲学。 著書:『西田哲学の論理と方法──徹底的批評主義とは何か』、『歴史的現実と西田哲学──絶対的論理主義とは何か』、『底無き意志の系譜──ショーペンハウアーと意志の否定の思想』(以上、法政大学出版局)、『こわばる身体がほどけるとき──西田幾多郎『善の研究』を読み直す』(現代書館)。

鬼頭葉子(きとう ようこ)
同志社大学文学部哲学科准教授。宗教哲学、キリスト教学、倫理学。著書:『時間と空間の相克──後期ティリッヒ思想再考』『技術の倫理』(以上、ナカニシヤ出版)、共著:Sonnenreflexe im Achteckspiegel:Beiträge aus Japan(Friedlaender/Mynona Studien Band 5)(Waitawhile)、Tourism Experiences and Animal Consumption──Contested Values, Morality and Ethics(Routledge) ほか。

田島樹里奈(たじま じゅりな)
東京交通短期大学准教授、法政大学兼任講師。現代思想・倫理学。著書:『デリダのポリティカルエコノミー』(北樹出版)、共著:『知の越境と哲学の変換』(法政大学出版局)、論文:「革命・国家・悪──田辺元の実践哲学」(『未来哲学』創刊号)、書評:「「還相」に託された「友愛」と「希望」──田辺元の社会的実践」(『求真』第27号)ほか。

織田和明(おだ かずあき)
大阪大学大学院人間科学研究科特任研究員。日本哲学。論文:“Kuki Shūzō and the Question of Origins”(European Journal of Japanese Philosophy 5)、「九鬼周造の生の哲学と田辺元の死の哲学」(『比較思想研究』45号)、「九鬼周造『偶然性の問題』における行為論」(『アルケー』26号)、「構造を闡明し、存在を把握する──『「いき」の構造』の存在論」(『比較思想研究』44号)ほか。

鈴木崇志(すずき たかし)
立命館大学准教授。ドイツ哲学、現象学。著書:『フッサールの他者論から倫理学へ』(勁草書房)。論文:「他者理解において移入されるもの」(『現象学年報』34号)、「現れる他者との向き合い方──現象学の立場から」(『現代思想』49巻13号)ほか。

浜渦辰二(はまうず しんじ)
上智大学グリーフケア研究所・特任教授。臨床哲学・死生学。著書:『フッサール間主観性の現象学』(創文社)、『可能性としてのフッサール現象学──他者とともに生きるために』『ケアの臨床哲学への道──生老病死とともに生きる』(晃洋書房)、訳書:フッサール『デカルト的省察』(岩波文庫)、共訳書:フッサール『間主観性の現象学 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(ちくま学芸文庫)ほか。

倪梁康(げい りょうこう Ni Liang kang)
浙江大学哲学学院教授。西洋哲学、倫理学、現象学。著書:『現象学及其効応──胡塞爾与当代徳国哲学』『胡塞爾現象学概念通釈』(三聯書店)、『自識与反思』『心性現象学』(商務印書館)、Seinsglaube in der Phänomenologie Edmund Husserls(Kluwer Academic Publishers)ほか。

出口康夫(でぐち やすお)
京都大学大学院文学研究科教授。哲学。共著:What Can’t be Said:Paradox and Contradiction in East Asian Thought(Oxford UP)、共編著:The Moon Points Back(Oxford UP)、『軍事研究を哲学する』(昭和堂)、『デカルトをめぐる論戦』(京都大学学術出版会)、『応用哲学を学ぶ人のために』(世界思想社)、『これが応用哲学だ!』(大隅書店)ほか。

張政遠(ちょう せいえん Cheung Ching-yuen)
東京大学大学院総合文化研究科准教授。日本哲学、東アジア文学・思想、間文化哲学。Tetsugaku Companions to Japanese Philosophy(Springer)共同編集長、『希哲雑誌』編集長。著書:『西田幾多郎──跨文化視野下的日本哲学』(国立台湾大学出版中心)、共編著:『東亜視野下的日本哲学──伝統、現代与転化』(国立台湾大学出版中心)、『日本哲学の多様性』(世界思想社)ほか。

小林敏明(こばやし としあき)
ライプツィヒ大学名誉教授。哲学、精神病理学。著書:Melancholie und Zeit(Stroemfeld)、Denken des Fremden(Stroemfeld)、『西田幾多郎の憂鬱』(岩波現代文庫)、『西田哲学を開く』(岩波現代文庫)、『夏目漱石と西田幾多郎』(岩波新書)、『廣松渉──近代の超克』(講談社学術文庫)、『故郷喪失の時代』(文藝春秋)ほか。