学問とは不安に向き合う力であり、それを言語化していく意志である。ポピュリズムが席捲し右傾化するグローバル資本主義社会の中で、世界の多義性および重層性、それらが生み出す矛盾・対立と向き合い対話を続けるために、いまあらためて人文学の可能性を問う。ポストコロニアル状況下の来たるべき民主主義、自由、平等、国家そして主体性をめぐり、四者が論じ、語り合ったシンポジウムの記録。
磯前 順一(イソマエ ジュンイチ)
磯前 順一(イソマエ ジュンイチ)
国際日本文化研究センター教授。宗教研究。ロンドン大学、ハーバード大学、チュービンゲン大学、ルール大学ボッフム、チューリッヒ大学、北京日本学研究センター、同志社大学などで客員教授および客員研究員を務める。著書に『生者のざわめく世界で──震災転移論』(木立の文庫、2024年)など。
酒井 直樹(サカイ ナオキ)
酒井 直樹(サカイ ナオキ)
コーネル大学名誉教授、人種主義・国民主義研究、比較思想史研究。著書に『日本思想という問題──翻訳と主体』(岩波書店、1997年)、『希望と憲法──日本国憲法の発話主体と応答』(以文社、2008年)、『ひきこもりの国民主義』(岩波書店、2017年)など。
汪暉(オウキ)
汪暉(オウキ)
清華大学人文学院教授、清華大学人文与社会科学高等研究所所長。中国近現代文学、中国思想史、現代中国論。ハーバード大学、スタンフォード大学、コロンビア大学、東京大学、ボローニャ大学、ハイデルベルク大学などで客員教授、またベルリン高等研究所、スウェーデン高等研究所などで高級研究員を務める。日本語訳に『世界史のなかの世界──文明の対話、政治の終焉、システムを越えた社会』(青土社、2016年)など。
平野 克弥(ヒラノ カツヤ)
平野 克弥(ヒラノ カツヤ)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)歴史学部教授。近世・近代文化史・思想史、人種資本主義・定住型植民地主義研究。ミシガン大学、同志社大学、京都大学、国際日本文化研究所などで客員教授、客員研究員を務める。著書に『原発と民主主義──「放射能汚染」そして「国策」と闘う人たち』(解放出版社、2024年)など。
はじめに──世界にときめきを、ふたたび![磯前順一]
総論 「謎めいた他者」論──公共圏・人文学・民主主義[磯前順一]
第一節 複数性の公共圏
第二節 自己崩壊する人文学
第三節 不均質な民主主義
第一部 内閉する現代社会──平等と民主主義の理念の再定位に向けて
第一章 恥と主体的技術──ひきこもりの国民主義と内向する社会[酒井直樹]
第一節 明治一〇〇年
第二節 失われた二〇年
第三節 パックス・アメリカーナと東アジアの日本の地位
第四節 脱植民地化と下請けの帝国
第五節 帝国の喪失と恥の体験
第六節 ひきこもりの国民主義と恥という主体的技術──恥という〈ふれあい〉へ向かって
第二章 もうひとつの平等と民主主義──現代中国の社会変革の道[汪暉]
第一節 社会変革の政治経済的分析──中国の道の独自性と普遍性
第二節 北京コンセンサスから中国モデルへ
第三節 中国モデルを議論する実践的意義
第四節 中国モデルは再現できるのか
第五節 インドの経験と中国の経験
第六節 東アジアモデルは中国を十分に説明することができない
第七節 低下する中国の国家機能
第八節 平等の五つの側面
第九節 政府は対応能力を高めるべきである
第十節 政党政治の危機と活路
第三章 他者なき戦後日本の民主主義──「来るべき社会」を構想するために[磯前順一]
第一節 複数性としての主体化論
第二節 引きこもりと謎めいた他者論
第三節 民主主義と主体化論
第四節 民主主義と暴力
第五節 戦後日本の民主主義論
第六節 来るべき公共空間
第二部 到来しつつある人文学──地域研究を越えて
第四章 戦後日本の国民国家と植民地主義──西川長夫の「主体の死」をめぐって[磯前順一]
第一節 一九九〇年代の国民国家論
第二節 「主体の死」
第三節 植民地主義とポストコロニアリズム
第四節 「私文化」および「多文化主義」と国民国家の解体=再構築
第五章 地域研究の現在──近代国際世界とパックス・アメリカーナ[酒井直樹]
第一節 パックス・アメリカーナの終焉
第二節 国民国家の空洞化と西洋の脱臼(Dislocation of the West)
第六章 形式的包摂、人種資本主義、そして脱植民地的知の地平──ハルトゥーニアン『マルクス・アフター・マルクス』から考える[平野克弥]
第一節 マルクス以後のマルクス(Marx After Marx)
第二節 異質性の包摂──温存と破壊
第三節 人種資本主義
第四節 脱植民地的知(Decolonial Knowledge)の創造へ
第三部 新たな主体性のために──平等をめぐる対話
討論 理念としての平等
第一節 平等と主体化過程
第二節 謎めいた他者と主体化過程
第三節 理念としての平等
第四節 平等と国民共同体
第五節 地域研究と国民国家、その功罪
汪暉氏との対話──新しい平等の実現に向けて[磯前順一]
第一節 阪神・淡路大震災 国民国家の余白
第二節 公開講演会──東アジアの近代
第三節 被差別部落──政治的主体の形成
第四節 磯前報告──新しい主体化のかたち
第五節 汪氏の提言をうけて──不均質な平等へ
あとがき──世界が右傾化するなかで[平野克弥]
総論 「謎めいた他者」論──公共圏・人文学・民主主義[磯前順一]
第一節 複数性の公共圏
第二節 自己崩壊する人文学
第三節 不均質な民主主義
第一部 内閉する現代社会──平等と民主主義の理念の再定位に向けて
第一章 恥と主体的技術──ひきこもりの国民主義と内向する社会[酒井直樹]
第一節 明治一〇〇年
第二節 失われた二〇年
第三節 パックス・アメリカーナと東アジアの日本の地位
第四節 脱植民地化と下請けの帝国
第五節 帝国の喪失と恥の体験
第六節 ひきこもりの国民主義と恥という主体的技術──恥という〈ふれあい〉へ向かって
第二章 もうひとつの平等と民主主義──現代中国の社会変革の道[汪暉]
第一節 社会変革の政治経済的分析──中国の道の独自性と普遍性
第二節 北京コンセンサスから中国モデルへ
第三節 中国モデルを議論する実践的意義
第四節 中国モデルは再現できるのか
第五節 インドの経験と中国の経験
第六節 東アジアモデルは中国を十分に説明することができない
第七節 低下する中国の国家機能
第八節 平等の五つの側面
第九節 政府は対応能力を高めるべきである
第十節 政党政治の危機と活路
第三章 他者なき戦後日本の民主主義──「来るべき社会」を構想するために[磯前順一]
第一節 複数性としての主体化論
第二節 引きこもりと謎めいた他者論
第三節 民主主義と主体化論
第四節 民主主義と暴力
第五節 戦後日本の民主主義論
第六節 来るべき公共空間
第二部 到来しつつある人文学──地域研究を越えて
第四章 戦後日本の国民国家と植民地主義──西川長夫の「主体の死」をめぐって[磯前順一]
第一節 一九九〇年代の国民国家論
第二節 「主体の死」
第三節 植民地主義とポストコロニアリズム
第四節 「私文化」および「多文化主義」と国民国家の解体=再構築
第五章 地域研究の現在──近代国際世界とパックス・アメリカーナ[酒井直樹]
第一節 パックス・アメリカーナの終焉
第二節 国民国家の空洞化と西洋の脱臼(Dislocation of the West)
第六章 形式的包摂、人種資本主義、そして脱植民地的知の地平──ハルトゥーニアン『マルクス・アフター・マルクス』から考える[平野克弥]
第一節 マルクス以後のマルクス(Marx After Marx)
第二節 異質性の包摂──温存と破壊
第三節 人種資本主義
第四節 脱植民地的知(Decolonial Knowledge)の創造へ
第三部 新たな主体性のために──平等をめぐる対話
討論 理念としての平等
第一節 平等と主体化過程
第二節 謎めいた他者と主体化過程
第三節 理念としての平等
第四節 平等と国民共同体
第五節 地域研究と国民国家、その功罪
汪暉氏との対話──新しい平等の実現に向けて[磯前順一]
第一節 阪神・淡路大震災 国民国家の余白
第二節 公開講演会──東アジアの近代
第三節 被差別部落──政治的主体の形成
第四節 磯前報告──新しい主体化のかたち
第五節 汪氏の提言をうけて──不均質な平等へ
あとがき──世界が右傾化するなかで[平野克弥]