1979年の革命以降、イスラーム国家として国際政治的に独自路線を貫くイラン。しかしホセイン追悼儀礼の実践にみられるように、人々の身体性はときに権威主義体制への服従を超えた過剰性を発露する。音文化の統制下で行われる胸叩きやダンス、隣国イラクの聖地カルバラーへの巡礼、禁止された自傷儀礼など、統治と抵抗がせめぎあう両義的な生の現場を、参与観察を通じて鮮やかに描く意欲作。
谷 憲一(タニ ケンイチ)
谷 憲一 1987年、東京都生まれ。2021年、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会学)。専門は文化人類学およびイラン地域研究。現在は、オックスフォード大学グローバル・地域研究学院(OSGA)客員研究員(笹川平和財団フェロー)、上智大学アジア文化研究所共同研究所員。論文にRealizing the existence of blind spots in the ‘West’: A systems-theoretical perspective, Anthropological Theory 20(4)(co-authored, 2020)など。編著に『嗜好品から見える社会』(共編著、春風社、2022年)。訳書にマリリン・ストラザーン編『監査文化の人類学』(共訳、水声社、2022年)など。
※上記内容は本書刊行時のものです。はじめに
凡 例
序 章 道具主義と言説的伝統の間で
一 問題の所在
1 カルバラー・パラダイムと道具主義的説明
2 言説的伝統としてのカルバラー・パラダイム
3 道具主義と言説的伝統の間で
二 理論的視座
1 国家に抗する共同性
2 言説に抗する身体性
3 二つの弁証法
三 本書の構成
四 資料および民族誌的データについて
第一章 イランにおけるシーア派宗教儀礼の概要
一 シーア派と儀礼
二 追悼儀礼とイランにおける儀礼の発展
1 シーア派の形成とカルバラーの悲劇
2 イランにおけるシーア派の発展
3 儀礼の開催単位としてのヘイアト
4 テヘランの形成とヘイアト
三 現代テヘランのアーシューラー
1 モハッラム月のテヘラン
2 路上行進儀礼と鎖叩き
3 追悼儀礼の作法
四 地域生活に根づいた宗教儀礼
第二章 音文化の規制と儀礼の拡張
一 音文化としての儀礼
二 イスラーム共和国における音文化の規制をめぐる攻防
1 イスラームと音楽
2 許容される音楽の範囲の拡大
3 革命以後のダンスをめぐる政治
三 哀悼歌と胸叩き儀礼の境界
1 胸叩き儀礼と「新しい様式」
2 大規模な胸叩き集会
3 ポピュラー音楽と哀悼歌の連続性
四 儀礼の拡張
第三章 国家と宗教が交錯するカルバラー巡礼
一 再開された儀礼
二 カルバラー巡礼の歴史的概要
1 教義としての巡礼
2 かつてのカルバラー巡礼とイラン
3 中断、そして再開へ
三 現在の巡礼路と宗教的共同体の形成
1 国家の領域外の巡礼
2 巡礼を通じたシーア派共同体意識の形成
四 国家と信徒によるカルバラー・パラダイムの共有
1 カルバラー巡礼への国家の関与とその目的
2 国際関係とカルバラー・パラダイム
五 国家の道具としての巡礼
1 イランの模範的巡礼者
2 国民を満足させる道具としての巡礼
六 国家の意図を超える巡礼
1 巡礼の流用
2 シーア派内部の正統性をめぐる論争
七 国家と宗教の交錯
第四章 自傷儀礼の禁止と信仰する身体の過剰性
一 禁じられた儀礼
二 自傷儀礼とその社会的位置づけ
1 ホセイン追悼儀礼としてのガメザニー
2 テヘランにおける自傷儀礼
3 社会的位置づけ
三 言説的伝統のなかの自傷儀礼
1 イスラーム法上の地位
2 立証化と言説の外部としての自傷儀礼
四 国家による禁止の論理と宗教
1 近代国家による禁止の論理
2 ネガティブ・キャンペーン
3 国家による宗教の過剰性への対処
五 儀礼の逆説
終 章 服従と反抗のアーシューラー
注
参照文献
あとがき
凡 例
序 章 道具主義と言説的伝統の間で
一 問題の所在
1 カルバラー・パラダイムと道具主義的説明
2 言説的伝統としてのカルバラー・パラダイム
3 道具主義と言説的伝統の間で
二 理論的視座
1 国家に抗する共同性
2 言説に抗する身体性
3 二つの弁証法
三 本書の構成
四 資料および民族誌的データについて
第一章 イランにおけるシーア派宗教儀礼の概要
一 シーア派と儀礼
二 追悼儀礼とイランにおける儀礼の発展
1 シーア派の形成とカルバラーの悲劇
2 イランにおけるシーア派の発展
3 儀礼の開催単位としてのヘイアト
4 テヘランの形成とヘイアト
三 現代テヘランのアーシューラー
1 モハッラム月のテヘラン
2 路上行進儀礼と鎖叩き
3 追悼儀礼の作法
四 地域生活に根づいた宗教儀礼
第二章 音文化の規制と儀礼の拡張
一 音文化としての儀礼
二 イスラーム共和国における音文化の規制をめぐる攻防
1 イスラームと音楽
2 許容される音楽の範囲の拡大
3 革命以後のダンスをめぐる政治
三 哀悼歌と胸叩き儀礼の境界
1 胸叩き儀礼と「新しい様式」
2 大規模な胸叩き集会
3 ポピュラー音楽と哀悼歌の連続性
四 儀礼の拡張
第三章 国家と宗教が交錯するカルバラー巡礼
一 再開された儀礼
二 カルバラー巡礼の歴史的概要
1 教義としての巡礼
2 かつてのカルバラー巡礼とイラン
3 中断、そして再開へ
三 現在の巡礼路と宗教的共同体の形成
1 国家の領域外の巡礼
2 巡礼を通じたシーア派共同体意識の形成
四 国家と信徒によるカルバラー・パラダイムの共有
1 カルバラー巡礼への国家の関与とその目的
2 国際関係とカルバラー・パラダイム
五 国家の道具としての巡礼
1 イランの模範的巡礼者
2 国民を満足させる道具としての巡礼
六 国家の意図を超える巡礼
1 巡礼の流用
2 シーア派内部の正統性をめぐる論争
七 国家と宗教の交錯
第四章 自傷儀礼の禁止と信仰する身体の過剰性
一 禁じられた儀礼
二 自傷儀礼とその社会的位置づけ
1 ホセイン追悼儀礼としてのガメザニー
2 テヘランにおける自傷儀礼
3 社会的位置づけ
三 言説的伝統のなかの自傷儀礼
1 イスラーム法上の地位
2 立証化と言説の外部としての自傷儀礼
四 国家による禁止の論理と宗教
1 近代国家による禁止の論理
2 ネガティブ・キャンペーン
3 国家による宗教の過剰性への対処
五 儀礼の逆説
終 章 服従と反抗のアーシューラー
注
参照文献
あとがき
書評掲載
「図書新聞」(2023年09月16日号/椿原敦子氏・評)に紹介されました。