神からの借財人 コジモ・デ・メディチ
十五世紀フィレンツェにおける一事業家の成功と罪

A5判 / 288ページ / 上製 / 価格 4,180円 (消費税 380円) 
ISBN978-4-588-37403-6 C0022 [2015年08月 刊行]

内容紹介

遠隔地交易の発展と商業都市の勃興にともない、富をなす事業家、銀行家が次々に現れた中世後期ヨーロッパ。しかし、教会法はウスラ=利子をむさぼる行為を許されざる大罪とみなしていた。ウスラをめぐる聖職者達の言葉と、メディチ家の巨人コジモの生涯をたどり、そのパトロネージに秘められた贖罪の悲願を明らかにする。

著訳者プロフィール

西藤 洋(ニシフジ ヒロシ)

1943年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科博士後期課程中退。成蹊大学名誉教授。著書に『枢機卿ベッラルミーノの手紙──科学思想史への一つの扉』(未來社、2012年)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はじめに

第一章 ウスラをむさぼる者を待ち受けているのは
 一 永遠の死を招く大罪
 二 時間を盗む者
 三 ゆるされることがあるとすれば
 四 キリスト教徒としての埋葬の拒否
 五 地獄、その第七の圏谷

第二章 宥恕されうる利得、されえない利得
 一 消費貸借、使用貸借、ソキエタス
 二 ウスラをめぐるトマス・アクィナスの理解
 三 返済の遅滞と逸失利益への補償
 四 ソキエタスからの利益──トマス・アクィナスの理解
 五 教会法学者の逡巡
 六 シエナのベルナルディーヌスとフィレンツェのアントニーヌス
 七 新たな生き様解放への一歩

第三章 十三、十四世紀のフィレンツェとメディチの事業の創業
 一 十三、十四世紀のフィレンツェ
 二 ムジェッロからフィレンツェへ
 三 メディチの事業の創業──ヴィエーリ・ディ・カンビオとジョヴァンニ・デ・メディチ

第四章 コジモの追放、帰還とメディチ・レジームの形成
 一 フィレンツェからの追放と帰還
 二 メディチ・レジームの形成
 三 〈ローディの和〉

第五章 コジモの時代のメディチの事業(I)──その概容、組織、そしてひと
 一 コジモの時代のメディチの事業
 二 為替手形の引き受け
 三 寄託とローマの拠点
 四 事業組織の統轄と総支配人

第六章 コジモの時代のメディチの事業(II)──その収益は宥恕されうるものであったか?
 一 ソキエタスから分配される利益
 二 〈乾燥手形〉と〈初年度献上金〉の立て替え
 三 寄託と危険の共有
 四 〈教皇官房付き受寄者総代〉

第七章 コジモ・デ・メディチのパトロネージ
 一 大パトロンの時代
 二 富者コジモ
 三 コジモ・デ・メディチのパトロネージ

第八章 それはつぐないの行為であったか?
 一 大度量のひとコジモ
 二 返還の容易なウスラと容易でないウスラ
 三 それはつぐないの行為であったか?
 四 コジモの胸中に去来したもの

結びにかえて──煉獄のコジモ
 一 コジモは今、どこに?
 二 第三の場、煉獄
 三 煉獄のコジモ?

あとがき
初出一覧
引用・参考文献
人名索引

書評掲載

「出版ニュース」(2015年10月中旬号)に紹介されました。

「週刊文春」(2015年10月29日 秋の特大号/鹿島茂氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『中世の高利貸』
J.ル・ゴフ:著