魅了されたニューロン
脳と音楽をめぐる対話

四六判 / 358ページ / 上製 / 価格 3,960円 (消費税 360円) 
ISBN978-4-588-41032-1 C1073 [2017年08月 刊行]

内容紹介

2016年に惜しまれつつ逝去した現代音楽界の巨匠ブーレーズとフランスを代表する神経生物学者シャンジュー、ブーレーズ後の世代を担う作曲家マヌリによる刺激的な対話。作曲家・指揮者が音楽を創造するさい、あるいは聴衆が音楽に心を動かされるさい、人間の脳内ではどのような生物学的プロセスが生じているのか。最晩年のブーレーズが辿りついた作曲論、芸術論、科学論が明かされる最後の書物。

著訳者プロフィール

ピエール・ブーレーズ(ブーレーズ ピエール)

(Pierre Boulez)
1925年生まれ。フランスの作曲家、指揮者。第2次世界大戦後の西欧前衛音楽界で指導的役割を果たし、また20世紀音楽を中心に傑出した指揮活動を展開。フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)創設者、初代所長。日本語訳に『意志と偶然』『ブーレーズ音楽論』『参照点』『クレーの絵と音楽』『現代音楽を考える』『標柱』『ブーレーズは語る』『エクラ/ブーレーズ』『ブーレーズ作曲家論選』などがある。2016年逝去。

J.-P. シャンジュー(シャンジュー ジャン ピエール)

(Jean-Pierre Changeux)
1936年生まれ。フランスの神経生物学者。コレージュ・ド・フランス名誉教授、パストゥール研究所名誉教授。日本語訳に『ニューロン人間』『分子と記憶』『考える物質』『理性と美的快楽』『真理を求める人間』『脳と心』がある。

P. マヌリ(マヌリ フィリップ)

(Philippe Manoury)
1952年生まれ。フランスの作曲家。カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授。パリ国立高等音楽院などに学び、IRCAMでの研究と一連のライヴ・エレクトロニクス作品などで作曲家としての地位を確立。

笠羽 映子(カサバ エイコ)

東京藝術大学大学院修了。パリ第4大学博士課程修了(音楽学博士)。早稲田大学社会科学総合学術院教授。ブーレーズの日本語訳を数多く手がけるほか、訳書にルシュール『伝記 クロード・ドビュッシー』、ストラヴィンスキー『音楽の詩学』『私の人生の年代記』がある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次



第一章 音楽とは何か?
音楽と快楽/頭脳的なものと非理性的なもの/ピュタゴラスと不確実性/人間の声、楽器?/声楽と劇作法/フルートからコンピューターへ/音楽と言語/自然あるいは文化?

第二章 「美」のパラドックスと芸術の規則
美と未完/芸術作品と商品価値/新しいもの、新しいもの、新しいもの/科学における進歩、音楽における変革/芸術家の姿/部分と全体/生得的な核と文化的コード/音楽フレーズ/小形式から大形式へ/倹約して/他者への関係/芸術の普遍性?

第三章 耳から脳へ──音楽の生理学
雑音と楽音/動物の音楽/鳥たちの場合/音楽的知覚──習得?/音楽を聴く──頭の中で行なう再構成

第四章 作曲家の頭の中のダーウィン
素材と形式/脳の自発的な活動/創造者の精神的作業/精神的ダーウィニズムと音楽創造/多様性から選択へ/関連性/意図から実現へ/報酬による選択?

第五章 音楽創造における意識と無・意識
美的直観/秩序と無秩序/意識への接近/過去を再創造する/意識的な期待/先取りし、驚かされるがままになる/明─暗/書くという行為/記憶の仕事と仕事の記憶

第六章 音楽的創造と科学的創造
理論と実践/他の分野の寄与/模 倣/学者のモデル、芸術家のモデル/即 興/ひとつの作品から別の作品へ/ドビュッシーの例/音楽、「精神的事象」/芸術と科学の交差点で──IRCAMの創設

第七章 音楽を学ぶ
音楽は生得的なものか?/学ぶ、それは選別することである/音楽家たる乳児/変化していく音楽意識/音楽の習得と一般教育/音楽は生活習慣を和ませるか?

書評掲載

「毎日新聞」(2017年10月8日付/内田麻理香氏・評)にて紹介されました。

「出版ニュース」(2017年10月中旬号)にて紹介されました。

「日本経済新聞」(2017年10月14日付/望月京氏・評)にて紹介されました。

「文藝春秋」(2017年11月号/片山杜秀氏・評)にて紹介されました。

「音楽の友」(2018年1月号/藤田茂氏・評)にて紹介されました。

関連書籍

『意志と偶然 〈新装版〉』
ピエール・ブーレーズ:著