2000年代以降、中国では日本をはじめとする世界各国の翻訳絵本が一大ブームを巻き起こし、家庭や児童教育の現場へと急速に浸透した。なぜ、翻訳絵本は中国で注目を集めたのか。清末から中華民国・新中国の建設を経て市場経済とグローバル化の時代へ、それぞれの時代における教育理論と教育制度、求められる教育的価値を比較検証し、中国絵本文化の開花に至る歴史的・社会的背景を明らかにする。
劉娟(リュウケン)
劉娟(Liu Juan)
横浜国立大学大学院都市イノベーション学府博士後期課程修了、博士(学術)。専門は専門は日中文化比較、児童教育、絵本研究。明治学院大学言語文化研究所研究員、横浜国立大学非常勤講師。論文に「1990年代末以降の中国における『翻訳絵本』に関する一考察──社会・家庭への浸透とその背景を中心に」(『常盤台人間文化論叢』第8巻1号、2022年)、「中国の小学校低学年の語文学科教育における絵本教材受容の特徴及びその原因──『看図説話』『看図作文』授業法の変遷に注目して」(『日中翻訳文化教育研究』第7号、2022年)ほか、翻訳に垂水千恵『奮鬥的心靈:呂赫若與他的時代』(国立台湾大学出版中心、2020年)、松岡榮志『我与中国四十年』(共訳、外文出版社、2019年)がある。
序 章
第一節 研究背景、研究目的および研究方法
一 研究背景
二 研究目的および研究方法
第二節 先行研究
一 中国における先行研究
(1)2000年以降の「翻訳絵本」の浸透に関する研究
(2)児童教育における「翻訳絵本」の受容に関する研究
二 日本における中国の「翻訳絵本」に関する研究
第三節 本書の構成
第四節 用語の表記・概念の説明
一 「図画故事」、「図画書」、「絵本」、「翻訳絵本」について
二 「就学前児童」、「幼児」、「児童」・「少年児童」について
三 「児童読物」、「児童文学」、「幼児文学」について
四 「素質教育」について
五 法令の制定機関と効力関係
第一章 中国における「子どもの発見」および児童文学の誕生
第一節 中国における「子どもの発見」と「新文化運動」
一 デューイによる「児童中心主義」
二 魯迅による「幼児本位」論
三 周作人による「児童の文学」の提唱
第二節 「児童文学」の誕生
一 「新文化運動」以前の「児童」と「児童読み物」
(1)古代伝統的な児童観に基づく児童読み物
(2)キリスト教機構によって出版された児童読み物
(3)清末・民国初期における児童啓蒙読み物
(4)清末・民国初期における外国児童文学作品の翻訳
二 周作人の講演「児童的文学」がもたらした影響
第三節 師範教育における児童文学理論研究の始まり
一 中国における近代的師範教育制度構築の沿革──中等師範教育を中心に
(1)清末における近代的師範教育制度の建立
(2)中華民国期における近代的師範教育制度の確立
(3)新中国成立後の師範教育
二 小学校の国語科カリキュラムにおける児童文学の導入
(1)国語科の設置の経緯および求められる児童像
(2)小学校の国語科教科書における児童文学の導入・発展
第四節 児童文学に求められる「教育的価値」の変遷
一 中国初の師範教育用教材『児童文学概論』の誕生から日中戦争まで(1923~1937)
二 新中国成立から文化大革命まで(1949~1966)
三 改革開放から20世紀末まで(1978~1999)
四 21世紀以降(2000~)
第二章 中国の絵本の扱われ方──「図画書」の定義・分類に注目して
第一節 中国における近代的絵本の芽生え
一 最古の「図画書」──『日記故事』
二 中国のオリジナル絵本の芽生え──「図画故事」の誕生
三 1920年代から日中戦争までの「図画書」
(1)1920~1930年代における「図画故事」の出版
(2)児童文学理論書における「図画書」
(3)戦争により「図画書」が受けた打撃
第二節 新中国成立から2000年までの「図画書」のあり方
一 出版環境の変化
二 「図画書」の創作・出版の再開とソ連
三 幼稚園の教材として定着した「図画書」
四 幼児・児童文学理論書における「図画書」
第三節 2000年以降──「図画書」の独立したジャンルへの発展
第四節 日本の絵本観による影響──松居直、彭懿を中心に
第三章 中国における「翻訳絵本」の社会・家庭への浸透について──その経緯と背景を中心に
第一節 中国における「翻訳絵本」の出版
第二節 中国における「翻訳絵本」の浸透の経緯
一 「絵本」という言葉の受容
二 新聞記事を考察する理由
三 「絵本」に関する記事内容の分析
(1)中国の新聞紙事情
(2)記事内容に基づくカテゴリーの分類
(3)各カテゴリーに基づく分析
第三節「翻訳絵本」の市場規模の拡大
一 急成長を遂げた「翻訳絵本」
二 ネット販売の勃興
三 読み継がれる「翻訳絵本」
第四節「翻訳絵本」市場を支える3つの背景──出版体制改革、家庭教育の重視および「全民閲読」運動の推進
一 出版体制改革による児童書市場規模の拡大
(1)出版体制改革の経緯
(2)児童書出版への新規参入と図書小売市場における児童書規模の拡大
(3)児童書総売上高に占める絵本の割合および絵本総売上高に占める「翻訳絵本」の割合
二 都市部住民を主とする購買意欲および購買力の向上とその理由
(1)中国の絵本の発展が遅れていた背景
(2)絵本を通じた家庭教育への期待
(3)都市部住民の購買力の向上
(4)都市部住民の教育支出の割合の増加
(5)1980、1990年代生まれの世代への絵本の浸透
第四章 「全民閲読」運動と「翻訳絵本」──中国国家図書館の目録に注目して
第一節「全民閲読」運動推進を目的とする法令
一 「全民閲読」運動と図書館の整備充実との関係
二 「全民閲読」運動推進の経緯
(1)「全民閲読」運動推進の目標
(2)「全民閲読」運動発展の初期段階
(3)国の政策としての「全民閲読」運動の発展(1997~2013)
(4) 「政府工作報告」における「全民閲読」運動の登場および国家戦略への発展(2014~)
三 「全民閲読」運動における「児童読書」・「親子読書」の推進
第二節 「児童読書」・「親子読書」の推進と公共図書館
一 中国の少年児童図書館(室)事業の遅れ
二 国家図書館少年児童館の開設の意義
第三節 国家図書館と「翻訳絵本」
一 児童書蔵書目録・推薦絵本目録の概要
二 児童書蔵書選定・推薦事業における「翻訳絵本」の登場──『全国少年児童図書館(室)基本蔵書目録2012』の公表
(1)児童書蔵書選定事業とは
(2)『目録2012』作成の経緯
(3)『目録2012』の内容
三 児童書選定・推薦における「翻訳絵本」の定着──優秀図画書目録『絵本100』の公表
(1)『絵本100』公表の意義
(2)『絵本100』の内容
(3)『絵本100』に選ばれた日本の「翻訳絵本」
第五章 小学校・幼稚園と「翻訳絵本」I 受容の経緯──小学校国語教育における導入および師範教育における絵本授業法研究の発展を中心に
第一節 中国の小学校国語科における絵本活用に関する研究──日本と比較して
一 絵本が教材として注目される傾向について
二 絵本を教材とする教育活動の目的
第二節 絵本授業の先駆者──竇桂梅を中心に
一 竇桂梅による研究授業の影響
二 イギリス、日本、中国における『我パパ*』の紹介および評価
三 竇桂梅はどのように翻訳絵本を教材にしたのか──『我パパ*』を中心に
四 竇桂梅はなぜ翻訳絵本を教材にしたのか──『我パパ*』を中心に
(1)『我パパ*』に求めたもの
(2)「主題教学」理論の実践
第三節 絵本の教材としての発展──師範教育における教材開発を中心に
一 教員志望の大学生および現役教員の受容
二 北京師範大学における絵本授業法研究書の出版
三 北京師範大学における絵本教育研究の全国大会
*パは父部に巴
第六章 小学校・幼稚園と「翻訳絵本」II 受容の社会的背景──小学校の国語教育、幼稚園の言語活動における受容および教育政策の変遷を中心に
第一節 小学校低学年の国語科教育における絵本教材の受容の特徴およびその原因
一 『二十一世紀絵本課堂』シリーズに見られる絵本授業法の特徴
二 小学校国語科の課程標準における「看図説話」「看図作文」授業法
第二節 小学校の国語教科書における初の「翻訳絵本」の教材化
一 小学校国語教育における『まあちゃんのながいかみ』の導入──教材化される以前
二 教材化された『まあちゃんのながいかみ』
(1)中国の教科書制度の変容とカリキュラムの改革について
(2)『まあちゃんのながいかみ』の内容および教科書における位置づけ
三 『まあちゃんのながいかみ』が教材に選ばれた理由
(1)「課程標準」における「想像力の養成」に関する記述の変化
(2)「課程標準」における「想像力の養成」の導入背景
(3)児童の想像力の養成を重視する
(4)教材の後に用意された「学習の手引き」の設問について
(5)授業案例に対する考察
四 なぜ『まあちゃんのながいかみ』が評価されたか
(1)日本の「翻訳絵本」の受容の拡大
(2)訳者の影響
(3)国語教科書編集者の期待・影響力・決定権
(4)国語教科書作品への期待
(5)『まあちゃんのながいかみ』に求められる「有効性」
第三節 幼稚園の言語活動における絵本の受容
一 幼児教育や就学前教育の発展および改革
(1)幼稚園教育の普及およびそれに伴う教員の変化
(2)大学や短大における就学前教育専攻の発展
二 幼児教育における言語教育の目標の変遷と「図画書」・「絵本」
(1)幼児教育の関連政策に見られる「図画書」や「絵本」の記述
(2)幼児教育の手引きにおける言語教育の目標の変遷
三 言語活動案に対する考察
第七章 「児童教育」と出版社の事業戦略──ポプラ社中国法人「蒲蒲蘭」の事例を中心に
第一節 中国の絵本市場における「蒲蒲蘭」の位置付け
第二節「蒲蒲蘭」設立・発展の経緯
一 設立の経緯
二 事業内容の沿革・発展
(1)中国オリジナル絵本への進出
(2)絵本のラインナップの発展
(3)月刊絵本の創刊
(4)教育事業に進出
第三節 「蒲蒲蘭」における絵本と教育の関係に対する認識の変遷
一 「蒲蒲蘭」設立初期(2004~2006年)の絵本出版環境
二 中国の絵本市場における「蒲蒲蘭」の問題提起──家庭における絵本活用の推進
三 「蒲蒲蘭」の事業戦略における幼稚園の教材としての価値認識の確立
四 「蒲蒲蘭」の事業戦略における家庭教育への注目
五 「蒲蒲蘭」の事業戦略における教科啓蒙への関心
六 「蒲蒲蘭」の教育事業における新たな展開──「素質教育」に沿う教科教育への取り組み
終 章
第一節 本書の結論
第二節 今後の課題と展望
(1) 就学前児童を持つ家庭という私的領域に対する考察
(2) 翻訳論的なアプローチの問題
(3) 中国以外の国での日本の「翻訳絵本」の受容について
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引
第一節 研究背景、研究目的および研究方法
一 研究背景
二 研究目的および研究方法
第二節 先行研究
一 中国における先行研究
(1)2000年以降の「翻訳絵本」の浸透に関する研究
(2)児童教育における「翻訳絵本」の受容に関する研究
二 日本における中国の「翻訳絵本」に関する研究
第三節 本書の構成
第四節 用語の表記・概念の説明
一 「図画故事」、「図画書」、「絵本」、「翻訳絵本」について
二 「就学前児童」、「幼児」、「児童」・「少年児童」について
三 「児童読物」、「児童文学」、「幼児文学」について
四 「素質教育」について
五 法令の制定機関と効力関係
第一章 中国における「子どもの発見」および児童文学の誕生
第一節 中国における「子どもの発見」と「新文化運動」
一 デューイによる「児童中心主義」
二 魯迅による「幼児本位」論
三 周作人による「児童の文学」の提唱
第二節 「児童文学」の誕生
一 「新文化運動」以前の「児童」と「児童読み物」
(1)古代伝統的な児童観に基づく児童読み物
(2)キリスト教機構によって出版された児童読み物
(3)清末・民国初期における児童啓蒙読み物
(4)清末・民国初期における外国児童文学作品の翻訳
二 周作人の講演「児童的文学」がもたらした影響
第三節 師範教育における児童文学理論研究の始まり
一 中国における近代的師範教育制度構築の沿革──中等師範教育を中心に
(1)清末における近代的師範教育制度の建立
(2)中華民国期における近代的師範教育制度の確立
(3)新中国成立後の師範教育
二 小学校の国語科カリキュラムにおける児童文学の導入
(1)国語科の設置の経緯および求められる児童像
(2)小学校の国語科教科書における児童文学の導入・発展
第四節 児童文学に求められる「教育的価値」の変遷
一 中国初の師範教育用教材『児童文学概論』の誕生から日中戦争まで(1923~1937)
二 新中国成立から文化大革命まで(1949~1966)
三 改革開放から20世紀末まで(1978~1999)
四 21世紀以降(2000~)
第二章 中国の絵本の扱われ方──「図画書」の定義・分類に注目して
第一節 中国における近代的絵本の芽生え
一 最古の「図画書」──『日記故事』
二 中国のオリジナル絵本の芽生え──「図画故事」の誕生
三 1920年代から日中戦争までの「図画書」
(1)1920~1930年代における「図画故事」の出版
(2)児童文学理論書における「図画書」
(3)戦争により「図画書」が受けた打撃
第二節 新中国成立から2000年までの「図画書」のあり方
一 出版環境の変化
二 「図画書」の創作・出版の再開とソ連
三 幼稚園の教材として定着した「図画書」
四 幼児・児童文学理論書における「図画書」
第三節 2000年以降──「図画書」の独立したジャンルへの発展
第四節 日本の絵本観による影響──松居直、彭懿を中心に
第三章 中国における「翻訳絵本」の社会・家庭への浸透について──その経緯と背景を中心に
第一節 中国における「翻訳絵本」の出版
第二節 中国における「翻訳絵本」の浸透の経緯
一 「絵本」という言葉の受容
二 新聞記事を考察する理由
三 「絵本」に関する記事内容の分析
(1)中国の新聞紙事情
(2)記事内容に基づくカテゴリーの分類
(3)各カテゴリーに基づく分析
第三節「翻訳絵本」の市場規模の拡大
一 急成長を遂げた「翻訳絵本」
二 ネット販売の勃興
三 読み継がれる「翻訳絵本」
第四節「翻訳絵本」市場を支える3つの背景──出版体制改革、家庭教育の重視および「全民閲読」運動の推進
一 出版体制改革による児童書市場規模の拡大
(1)出版体制改革の経緯
(2)児童書出版への新規参入と図書小売市場における児童書規模の拡大
(3)児童書総売上高に占める絵本の割合および絵本総売上高に占める「翻訳絵本」の割合
二 都市部住民を主とする購買意欲および購買力の向上とその理由
(1)中国の絵本の発展が遅れていた背景
(2)絵本を通じた家庭教育への期待
(3)都市部住民の購買力の向上
(4)都市部住民の教育支出の割合の増加
(5)1980、1990年代生まれの世代への絵本の浸透
第四章 「全民閲読」運動と「翻訳絵本」──中国国家図書館の目録に注目して
第一節「全民閲読」運動推進を目的とする法令
一 「全民閲読」運動と図書館の整備充実との関係
二 「全民閲読」運動推進の経緯
(1)「全民閲読」運動推進の目標
(2)「全民閲読」運動発展の初期段階
(3)国の政策としての「全民閲読」運動の発展(1997~2013)
(4) 「政府工作報告」における「全民閲読」運動の登場および国家戦略への発展(2014~)
三 「全民閲読」運動における「児童読書」・「親子読書」の推進
第二節 「児童読書」・「親子読書」の推進と公共図書館
一 中国の少年児童図書館(室)事業の遅れ
二 国家図書館少年児童館の開設の意義
第三節 国家図書館と「翻訳絵本」
一 児童書蔵書目録・推薦絵本目録の概要
二 児童書蔵書選定・推薦事業における「翻訳絵本」の登場──『全国少年児童図書館(室)基本蔵書目録2012』の公表
(1)児童書蔵書選定事業とは
(2)『目録2012』作成の経緯
(3)『目録2012』の内容
三 児童書選定・推薦における「翻訳絵本」の定着──優秀図画書目録『絵本100』の公表
(1)『絵本100』公表の意義
(2)『絵本100』の内容
(3)『絵本100』に選ばれた日本の「翻訳絵本」
第五章 小学校・幼稚園と「翻訳絵本」I 受容の経緯──小学校国語教育における導入および師範教育における絵本授業法研究の発展を中心に
第一節 中国の小学校国語科における絵本活用に関する研究──日本と比較して
一 絵本が教材として注目される傾向について
二 絵本を教材とする教育活動の目的
第二節 絵本授業の先駆者──竇桂梅を中心に
一 竇桂梅による研究授業の影響
二 イギリス、日本、中国における『我パパ*』の紹介および評価
三 竇桂梅はどのように翻訳絵本を教材にしたのか──『我パパ*』を中心に
四 竇桂梅はなぜ翻訳絵本を教材にしたのか──『我パパ*』を中心に
(1)『我パパ*』に求めたもの
(2)「主題教学」理論の実践
第三節 絵本の教材としての発展──師範教育における教材開発を中心に
一 教員志望の大学生および現役教員の受容
二 北京師範大学における絵本授業法研究書の出版
三 北京師範大学における絵本教育研究の全国大会
*パは父部に巴
第六章 小学校・幼稚園と「翻訳絵本」II 受容の社会的背景──小学校の国語教育、幼稚園の言語活動における受容および教育政策の変遷を中心に
第一節 小学校低学年の国語科教育における絵本教材の受容の特徴およびその原因
一 『二十一世紀絵本課堂』シリーズに見られる絵本授業法の特徴
二 小学校国語科の課程標準における「看図説話」「看図作文」授業法
第二節 小学校の国語教科書における初の「翻訳絵本」の教材化
一 小学校国語教育における『まあちゃんのながいかみ』の導入──教材化される以前
二 教材化された『まあちゃんのながいかみ』
(1)中国の教科書制度の変容とカリキュラムの改革について
(2)『まあちゃんのながいかみ』の内容および教科書における位置づけ
三 『まあちゃんのながいかみ』が教材に選ばれた理由
(1)「課程標準」における「想像力の養成」に関する記述の変化
(2)「課程標準」における「想像力の養成」の導入背景
(3)児童の想像力の養成を重視する
(4)教材の後に用意された「学習の手引き」の設問について
(5)授業案例に対する考察
四 なぜ『まあちゃんのながいかみ』が評価されたか
(1)日本の「翻訳絵本」の受容の拡大
(2)訳者の影響
(3)国語教科書編集者の期待・影響力・決定権
(4)国語教科書作品への期待
(5)『まあちゃんのながいかみ』に求められる「有効性」
第三節 幼稚園の言語活動における絵本の受容
一 幼児教育や就学前教育の発展および改革
(1)幼稚園教育の普及およびそれに伴う教員の変化
(2)大学や短大における就学前教育専攻の発展
二 幼児教育における言語教育の目標の変遷と「図画書」・「絵本」
(1)幼児教育の関連政策に見られる「図画書」や「絵本」の記述
(2)幼児教育の手引きにおける言語教育の目標の変遷
三 言語活動案に対する考察
第七章 「児童教育」と出版社の事業戦略──ポプラ社中国法人「蒲蒲蘭」の事例を中心に
第一節 中国の絵本市場における「蒲蒲蘭」の位置付け
第二節「蒲蒲蘭」設立・発展の経緯
一 設立の経緯
二 事業内容の沿革・発展
(1)中国オリジナル絵本への進出
(2)絵本のラインナップの発展
(3)月刊絵本の創刊
(4)教育事業に進出
第三節 「蒲蒲蘭」における絵本と教育の関係に対する認識の変遷
一 「蒲蒲蘭」設立初期(2004~2006年)の絵本出版環境
二 中国の絵本市場における「蒲蒲蘭」の問題提起──家庭における絵本活用の推進
三 「蒲蒲蘭」の事業戦略における幼稚園の教材としての価値認識の確立
四 「蒲蒲蘭」の事業戦略における家庭教育への注目
五 「蒲蒲蘭」の事業戦略における教科啓蒙への関心
六 「蒲蒲蘭」の教育事業における新たな展開──「素質教育」に沿う教科教育への取り組み
終 章
第一節 本書の結論
第二節 今後の課題と展望
(1) 就学前児童を持つ家庭という私的領域に対する考察
(2) 翻訳論的なアプローチの問題
(3) 中国以外の国での日本の「翻訳絵本」の受容について
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引
書評掲載
「図書新聞」(2024年02月17日号/大宅利美氏・評)に紹介されました。
「中国研究月報」(916号、2024年06月25日発行/間ふさ子氏・評)に紹介されました。