叢書・ウニベルシタス 1017
生そのものの政治学
二十一世紀の生物医学、権力、主体性

四六判 / 554ページ / 上製 / 価格 5,720円 (消費税 520円) 
ISBN978-4-588-01017-0 C1330 [2014年10月 刊行]

内容紹介

19世紀以来、国家は健康と衛生の名のもとに、人々の生死を管理する権力を手にしてきた。批判的学問や社会運動が問題視したこの優生学的思想はしかし、ゲノム学や生殖技術に基づくバイオ資本主義が発展した21世紀の現在、従来の批判には捉えきれない生の新しいかたちを出現させている。フーコー的問題を継承しつつも、病への希望となりうる現代の生政治のリアルな姿を描き出す、社会思想の画期作。

著訳者プロフィール

ニコラス・ローズ(ローズ ニコラス)

(Nikolas Rose)
1947年生。イギリスの社会学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスBIOS研究所所長をへて、現在ロンドン大学キングスカレッジ教授。生物学研究から精神医学およびリスク研究に向かい、生物学や心理学、社会学との境界領域で、フーコーの生権力理論を軸に多産な研究をおこなう。現代社会における自己の統治と先端医療技術の関わり、生命科学・生命倫理の問題を、社会全体の権力論的構造のなかで探究する議論は、現代の生政治論への大きな貢献として注目を集めている。著書に『魂を統治する』(1989)、『われわれの自己を発明する』(1996)、『自由の権力』(1999)、共著に『現在を統治する』(2008)、『ニューロ──新しい脳科学と心の統御』(2013)ほか多数。

檜垣 立哉(ヒガキ タツヤ)

1964年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。大阪大学人間科学研究科教授。哲学・現代思想。著書に『瞬間と永遠』(岩波書店)、『ヴィータ・テクニカ』(青土社)、『生と権力の哲学』(ちくま新書)、『子供の哲学』(講談社)、『賭博/偶然の哲学』(河出書房新社)ほか。

小倉 拓也(オグラ タクヤ)

1985年生。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位修得退学。日本学術振興会特別研究員、大和大学非常勤講師。哲学。論文に「出生外傷から器官なき身体へ」(『フランス哲学・思想研究』18号)、共訳書にフィンク『後期ラカン入門』(人文書院)ほか。

佐古 仁志(サコ サトシ)

1978年生。大阪大学大学院人間科学研究科単位取得退学。博士 (人間科学)。立教大学・日本学術振興会特別研究員。生態記号論。共著に 『知の生態学的転回3 倫理』 (東京大学出版会)、 論文に 「パースにおける 「進化」 概念とそのあらたな解釈」 (叢書セミオトポス8) ほか。

山崎 吾郎(ヤマザキ ゴロウ)

1978年生。大阪大学未来戦略機構(第一部門)特任助教。文化人類学。著書に『臓器移植の人類学──身体と情動のエコノミー』(近刊、世界思想社)。論文に「臓器提供に現われる身体と人格」(『文化人類学』第76巻3号)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

日本語版への序文
謝 辞
序 章
第一章 二十一世紀における生政治
第二章 政治と生
第三章 現れつつある生のかたち?
第四章 遺伝学的リスク
第五章 生物学的市民
第六章 ゲノム医学の時代における人種
第七章 神経化学的自己
第八章 コントロールの生物学
あとがき ソーマ的倫理と生資本の精神

監訳者あとがき
文献一覧
人名索引

書評掲載

「図書新聞」(2015年2月7日号/粥川準二氏・評)に紹介されました。

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