叢書・ウニベルシタス 1183
共和国における動物
フランス革命と動物の権利の起源 1789-1802年

四六判 / 268ページ / 上製 / 価格 3,960円 (消費税 360円) 
ISBN978-4-588-01183-2 C1322 [2025年05月 刊行]

内容紹介

恐怖政治の記憶がいまだ鮮明な1802年、パリの国立学士院が人間と動物の関係をめぐる懸賞論文を募集した。革命のなか社会階級間の血みどろの暴力を体験した人々は、人権や平等という共和政の理念を受け入れると同時に、人間よりも「下級の」存在たる動物への虐待や肉食については何を語り、応募論文にどんな政治・宗教思想を託したか。今日の動物の権利やエコロジー思想の起源に遡る歴史学の挑戦。

著訳者プロフィール

ピエール・セルナ(セルナ ピエール)

ピエール・セルナ(Pierre SERNA)
1963年南仏カストル生まれ。パリ第一大学パンテオン=ソルボンヌ校教授。フランス革命史研究所元所長であり、現在、国際フランス革命史委員会委員長、フランス大学学士院(IUF)のシニア・メンバー、ならびに東京大学付属東京カレッジの客員教授。故ミシェル・ヴォヴェルの指導下で書いたパリ第一大学博士論文(Antonelle. Aristocrate révolutionnaire. 1747–1817, Paris, Félin, 1997)でプロヴァンス歴史大賞を受賞。多くの著書・編著書があるが、主著に「極中道extrême centre」という新たな観点で革命期・帝政期を分析したLa République des girouettes. 1789–1815 et au-delà. Une anomalie politique française, la France de l’extrême centre (Seyssel, Champ Vallon, 2005)がある。

楠田 悠貴(クスダ ユウキ)

楠田 悠貴(クスダ ユウキ)
1990年岡山県生まれ。立命館大学嘱託講師。東京大学大学院修士課程を修了後、フランス社会科学高等研究院修士課程、パリ第一大学大学院博士課程に留学。日本学術振興会特別研究員、日仏財団訪問研究員、大阪公立大学研究員等を経て現職。専門はフランス革命期・ナポレオン統治期の政治史、政治文化史。主な論文:「ルイ16世裁判再考」(山﨑耕一・松浦義弘編『東アジアから見たフランス革命』風間書房所収)、訳書:M.ラポート『ナポレオン戦争』(白水社)ほか。

三澤 慶展(ミサワ ヨシノブ)

三澤 慶展(ミサワ ヨシノブ)
1991年静岡県生まれ。パリ在住の翻訳家。パリ第三大学ソルボンヌ=ヌーヴェル校大学院通訳翻訳高等学院(ESIT)講師。フランス政府給費留学生として同校に留学し、翻訳科修士号を取得。2016年から独立行政法人や国際機関の翻訳など、フランス語、英語、日本語の実務翻訳家として活動している。

山本 佳生(ヤマモト ヨシオ)

山本 佳生(ヤマモト ヨシオ)
1993年大阪府生まれ。パリ第三大学ソルボンヌ・ヌーヴェル博士課程修了。博士(文学)。早稲田大学および武蔵野美術大学非常勤講師。専門はM.ド・モンテーニュ『エセー』とルネサンス期のレトリック。主な論文:「モンテーニュにおける説得の技法」(『関西フランス語フランス文学』第30号)。共訳書:R.メサック『探偵小説の考古学』(国書刊行会)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

謝 辞

はじめに 馬、御者、女、獣医──革命史の新たなフィールド

第1部 啓蒙期の動物観という問題

第1章 動物が感覚と知能を持っているという考え

第2章 デカルトの亡霊

第3章 歴史と地理の援用、あるいはヨーロッパ文明における批判的環境保護史の萌芽

第4章 狩猟、あるいは人間による略奪

第2部 革命のせいなのか?

第5章 汚れた邪悪な奴ら──子供、肉屋、革命家

第6章 カトリックの動物観

第3部 動物保護のための市民的道徳

第7章 動物の苦痛に直面する共和主義的習俗の文明

第8章 何の権利があって動物を食べるのか? 菜食主義的問いの芽生え

第9章 このコンクールに共和主義者はいるのか? サラヴィルあるいは「人間」保護の緊急性

おわりに

訳者あとがき

原 注

文献目録

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