叢書・ウニベルシタス 1105
批判について
解放の社会学概説

四六判 / 338ページ / 上製 / 価格 4,180円 (消費税 380円) 
ISBN978-4-588-14086-0 C1310 [2024年12月 刊行]

内容紹介

批判は現実の輪郭を変えることを可能にするような事例や実例を世界の中から引き出し、様々な支配の政治体制の特徴も描き出す。社会学が、社会の批判を行うことは可能なのか。本書はフランクフルト社会研究所における「アドルノ講義」を元に、社会学と社会学批判の関係への問いから始まる。そして、解放の方向へと進むために取りうるいくつかの道が素描されていく。

著訳者プロフィール

リュック・ボルタンスキー(ボルタンスキー リュック)

リュック・ボルタンスキー(Luc Boltanski)
1940年生まれ。フランス社会科学高等研究院(EHESS)教授。現代フランス社会学を代表する人物の一人。資本主義、国家、愛、生命など、多様なテーマを取り上げながら独自の社会学を展開している。邦訳された著書に、『胎児の条件──生むことと中絶の社会学』(小田切祐詞訳、法政大学出版局、2018年)、『偉大さのエコノミーと愛』(三浦直希訳、文化科学高等研究院出版局、2011年)、ローラン・テヴノーとの共著『正当化の理論──偉大さのエコノミー』(三浦直希訳、新曜社、2007年)、エヴ・シャペロとの共著『資本主義の新たな精神』(上・下、三浦直希ほか訳、ナカニシヤ出版、2013年)、などがある。

小田切 祐詞(オダギリ ユウジ)

小田切 祐詞(オダギリ ユウジ)
1983年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。神奈川工科大学専任講師。著書に、『現代社会を読み解く知 第3版』(共編著、学文社、2024年)など。論文に、「絆、あるいはつながり重視の世界における真正な紐帯」(『iichiko』148号、2020年)など。訳書に、リュック・ボルタンスキー『胎児の条件──生むことと中絶の社会学』(法政大学出版局、2018年)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

前書き

第一章 批判理論の構造

 権力または支配。社会または社会秩序
 道徳、批判、反省性
 日常的批判とメタ批判的位置
 単一の外在性と複合的外在性
 支配批判の意味論的次元。支配対搾取
 社会学と社会批判のいくつかの妥協例
 社会学と批判の絡み合い

第二章 批判社会学と批判のプラグマティック社会学

 批判社会学
 批判社会学における支配概念の使用が提起する諸問題
 批判のプラグマティック社会学というプログラム
 批判の社会学を起点にして批判的操作を行うことは可能か?
 現実のリアリティの度合い
 現実批判としての批判社会学
 批判社会学と批判の社会学は両立可能か?

第三章 制度の権力

 「制度」を求めて
 「共通感覚」という幻想
 不確実性の問題──現実と世界
 ここで提示される枠組みの構造
 実践的瞬間
 メタ語用論的位相
 性質決定の問題
 メタ語用論的位相と自然メタ言語
 認証のメタ語用論的位相
 身体なき存在としての制度
 意味論的安全および/あるいは象徴的暴力
 制度化と儀礼化

第四章 批判の必要性

 解釈学的矛盾1──代弁者における具現
 解釈学的矛盾2──意味論対語用論
 制度的暴力
 批判の可能性
 二つの異なる形態の反省性
 三種類の試練の区別
 批判的操作としての矛盾の利用
 暴露の四つの方向性と批判の疎外

第五章 支配の政治体制

 政治体制に組み込まれる解釈学的矛盾
 不確実性と変化の問題
 単純な支配が及ぼす影響と現実の否定
 複合的あるいはマネジメント的支配が及ぼす影響
 変化による支配──意志および表象としての必然性
 マネジメント的支配様式における解釈学的矛盾への対処

第六章 プラグマティックな意味での解放

 社会階級と行為
 解釈学的矛盾と解放

謝辞

訳者あとがき



索引

関連書籍

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『社会的なものを組み直す』
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