1934年にナチス政権下の現ポーランド領に生まれ、「ドイツ人追放」により旧東独で育ち、作家デビューに伴い西ベルリンに「転居」、1984年にイギリスで孤独死したヨーンゾン。イデオロギーで分断された世界を対話的に描き、ブランショに称賛されるなど、戦後ドイツを代表する作家としての評価はいまだ揺るぎない。その文学的営為の根本的な「詩学」の問題は「対話性」や「倫理」という図式に回収されてきたが、本書は精緻なテクスト分析と大胆な批評性であえてそれらの「境界」を探り、彼の文学を貫く「真実への困難な探求」を新たな視点から描き出す。
金志成(キム チソン)
1987年大阪生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専攻は戦後・現代ドイツ文学。現在、早稲田大学文学学術院講師(任期付)。主な業績に、『固有名の詩学』(共著、法政大学出版局、2019年)、「破壊のエクリチュール――トーマス・ベルンハルト『アムラス』のフラグメント性」(論文、『オーストリア文学』36号、2020年)、„Dekonstruktive Momente in Uwe Johnsons Poetik“(論文、Johnson-Jahrbuch 23, 2016年)、『背後の世界』(翻訳、トーマス・メレ著、河出書房新社、2018年)など。
ルッツ・ザイラー『クルーゾー』の翻訳企画で、2020年度(第4回)ゲーテ・インスティトゥートの「かけはし文学賞」を受賞。
序文
第1章 詩学
第1節 導入──ヨーンゾンの「詩学講義」
第2節 「詩学」の歴史──古代ギリシアからロマン派まで
第3節 戦後ドイツにおける「詩学」の制度化
第4節 〈ポスト詩学〉の状況
第5節 表されるものが表す手段を条件づける
第6節 方法論についての要約
第2章 ダイアローグ
第1節 導入──境界線
第2節 〈語りの全知性〉をめぐる問題
第3節 作り出された人物
第4節 対話性の詩学
第3章 パフォーマンス
第1節 導入──小説は革命のための武器ではない
第2節 二つの政治性
第3節 文学における「真実」
第4節 「真実探求」の死角
第5節 『ベルリンのSバーン』
第6節 パフォーマンスとしての「真実探求」
第4章 モダニティー
第1節 導入──モダニスト・ヨーンゾン
第2節 『長篇小説を検討するための諸提案』
第3節 モダニティーの歴史イメージ
第4節 ボードレールの現代性
第5節 理想と憂鬱
第5章 『ヤーコプについての推測』
第1節 導入──「難解」な小説
第2節 対話的形式
第3節 ロールフス
第4節 ヨーナス・ブラッハ
第5節 ゲジーネ・クレスパール
第6章 『イースターの水』
第1節 導入──「模範的な短篇小説」
第2節 水と鏡のイニシエーション
第3節 かつての少女の追憶
第4節 完結性と破綻
第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』
第1節 導入──付随状況
第2節 一年の日々
第3節 暦と想起
第4節 コレスポンダンスとアレゴリー
第5節 言語の問題
第6節 『記念の日々』における対話性
第7節 わたしが死んだときのために
終 節 マージョリーのゆくえ
結語
あとがき
参考文献
索引
第1章 詩学
第1節 導入──ヨーンゾンの「詩学講義」
第2節 「詩学」の歴史──古代ギリシアからロマン派まで
第3節 戦後ドイツにおける「詩学」の制度化
第4節 〈ポスト詩学〉の状況
第5節 表されるものが表す手段を条件づける
第6節 方法論についての要約
第2章 ダイアローグ
第1節 導入──境界線
第2節 〈語りの全知性〉をめぐる問題
第3節 作り出された人物
第4節 対話性の詩学
第3章 パフォーマンス
第1節 導入──小説は革命のための武器ではない
第2節 二つの政治性
第3節 文学における「真実」
第4節 「真実探求」の死角
第5節 『ベルリンのSバーン』
第6節 パフォーマンスとしての「真実探求」
第4章 モダニティー
第1節 導入──モダニスト・ヨーンゾン
第2節 『長篇小説を検討するための諸提案』
第3節 モダニティーの歴史イメージ
第4節 ボードレールの現代性
第5節 理想と憂鬱
第5章 『ヤーコプについての推測』
第1節 導入──「難解」な小説
第2節 対話的形式
第3節 ロールフス
第4節 ヨーナス・ブラッハ
第5節 ゲジーネ・クレスパール
第6章 『イースターの水』
第1節 導入──「模範的な短篇小説」
第2節 水と鏡のイニシエーション
第3節 かつての少女の追憶
第4節 完結性と破綻
第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』
第1節 導入──付随状況
第2節 一年の日々
第3節 暦と想起
第4節 コレスポンダンスとアレゴリー
第5節 言語の問題
第6節 『記念の日々』における対話性
第7節 わたしが死んだときのために
終 節 マージョリーのゆくえ
結語
あとがき
参考文献
索引
書評掲載
「図書新聞」(2020年10月31日号/西尾悠子氏・評)に紹介されました。
「図書新聞」(2020年12月12日号)の「文学」時評で取り上げられました。