叢書・ウニベルシタス 1121
普遍的価値を求める
中国現代思想の新潮流
ISBN978-4-588-01121-4 C1310 [2020年08月 刊行]
許紀霖(キョ キリン)
(Xu Jilin)
1957年生まれ。華東師範大学歴史系教授。主に20世紀中国思想史と知識人研究及び上海都市文化研究を行っている。著作に、『中国知識人十論』(『中国知識分子十論』、復旦大学出版社、2003)、『啓蒙の自己瓦解』(『啓蒙的自我瓦解』共著、吉林出版集団、2007)、『現代中国の啓蒙と反啓蒙』(『当代中国的啓蒙與反啓蒙』、社会科学文献出版社、2011)、『家国天下―近代中国における個人・国家・世界のアイデンティティ』(『家国天下:現代中国的個人、国家與世界認同』、上海人民出版社、2017)、『中国の出番? 富強から文明崛起への歴史的論理』(『中国時刻?従富強到文明崛起的歴史邏輯』、香港城市大学出版社、2019)、Rethinking China’s Rise: A Liberal Critique (Cambridge University Press, 2018)などがある。2004年には『南方人物週刊』によって中国を代表する公共的知識人50名のひとりに選ばれ、『中国知識人十論』は2005年中国国家図書館文津図書賞を受賞、『中国の出番?』は香港の『亜洲週刊』によって2019年十大中国語良書のトップに選ばれている。
中島隆博(ナカジマ タカヒロ)
1964年生まれ。東京大学東洋文化研究所教授。専門は中国哲学、世界哲学。主な著作に、『残響の中国哲学――言語と政治』(東京大学出版会、2007)、『荘子――鶏となって時を告げよ』(岩波書店、2009)、『共生のプラクシス――国家と宗教』(東京大学出版会、2011)、『悪の哲学――中国哲学の想像力』(筑摩書房、2012)、『思想としての言語』(岩波書店、2017)、『コスモロギア――天・化・時』(編著、法政大学出版局、2015)、『法と暴力の記憶――東アジアの歴史経験』(共編著、東京大学出版会、2007)、『世界哲学史』(全8巻、共編著、筑摩書房、2020)、アンヌ・チャン『中国思想史』(共訳、知泉書館、2010)など。
王前(オウ ゼン)
1967年生まれ。東京大学教養学部附属東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ特任准教授。専門は政治哲学、思想史。主な著作に、『中国が読んだ現代思想――サルトルからデリダ、シュミット、ロールズまで』(講談社、2011)、『近代日本政治思想史――荻生徂徠から網野善彦まで』(共著、ナカニシヤ出版、2014)、『現代中国のリベラリズム思潮――1920年代から2015年まで』(共著、藤原書店、2015)など。
及川淳子(オイカワ ジュンコ)
中央大学文学部准教授。主な著作に、『現代中国の言論空間と政治文化――「李鋭ネットワーク」の形成と変容』(御茶の水書房、2012)など。
徐行(ジョ コウ)
1981年生まれ、北海道大学大学院法学研究科准教授。主な著作に、『要説中国法』(共著、東京大学出版会、2017)など。
藤井嘉章(フジイ ヨシアキ)
1987年生まれ。東京外国語大学特別研究員。主な著作に、「本居宣長の俗語訳論――徂徠・景山の系譜から」(『日本語・日本学研究』第9号、2019)など。
※上記内容は本書刊行時のものです。第Ⅰ部 来たるべき東アジア
第一章 新東アジア秩序の構想――EU式の運命共同体
一 古代から現在までの四種類の東アジア秩序
二 帝国秩序から共同体秩序への転換
三 EU式運命共同体の存在を支える三本の柱
四 「国家的視野における東アジア」から「東アジア的視野における国家」へ
第二章 世界的な保守主義時代の到来
一 三つの本位的保守主義の台頭
二 世俗と宗教︱近代文明の苦境
三 ポリティカル・コレクトネスは正しいのか、いかに正しいのか
第三章 新天下主義と中国の内外秩序
一 天下主義の普遍的価値
二 脱中心化し、脱ヒエラルキー化した新たな普遍性
三 天下の内部秩序――多元一体の国家統治
四 天下の外部秩序――国民国家主権という観念を超える
五 東アジア運命共同体はいかにして可能か
第Ⅱ部 自由主義を問い直す
第四章 中国は何を根拠に世界を統治するのか
第五章 二つの啓蒙――文明的自覚か、文化的自覚か
一 文明的自覚と文化的自覚
二 新文化運動は最初の文明的自覚である
三 九・一八事変後の文化的自覚
四 「よい」文明と「われわれの」文化
第六章 自由主義はなぜ枢軸文明に接続しなければならないのか
一 自由主義の文明的基礎に関する三つの選択肢
二 包括的な文明としての自由主義は可能か
三 なぜ信仰と理性はともに重要なのか
四 なぜ自由な選択は善を必要とするのか
第Ⅲ部 国家主義を超えて
第七章 普遍的文明か中国的価値か――中国の歴史主義思潮への批判
一 八〇年代の普遍的理性から九〇年代の啓蒙の歴史化へ
二 普遍性に挑戦する――歴史主義の勃興
三 普遍性を争う――中国の興隆を背景として
四 「殊途同帰」、「分道揚鑣」から「理一万殊」へ
第八章 中国にはリバイアサンが必要なのか――国家主義思潮への批判
一 左から右へ――国家主義の二つの思想の脈絡
二 「応答的民主主義」か「応答的権威主義体制」か
三 シュミット主義の亡霊――国家の絶対的な権威
四 呪術化に向かう国家理性
第九章 儒家の孤魂、身体はどこに
一 王官の学は袋小路である
二 心の宗教への転換――欲することはできても求めることはできない
三 「文教」としての儒家――希望は民間にあり
付録 対話(許紀霖・中島隆博・石井剛・鈴木将久・林少陽・王前)
監訳者あとがき 許紀霖――普遍の擁護者
出典と翻訳担当者一覧
人名索引
書評掲載
「日本経済新聞」(2020年9月26日付/加藤徹氏・評)に紹介されました。
「国際貿易」(2020年9月25日号)に紹介されました。
「東方」(477号・2020年12月号)に紹介されました。