19世紀、李氏朝鮮に甚大な被害をもたらした疫病、虎列刺=コレラ。開港による西洋医学の導入、植民地権力に基づく検疫隔離といったコレラ克服への道程はすなわち朝鮮近代化の歴史であり、同時に政治的受難の歴史でもあった。感染症学から細菌学、薬学、解剖学、公衆衛生、医療倫理にいたる朝鮮医学の変遷をさまざまなエピソードとともに辿り、医学と権力、そして近代主義の不可分な関係を考察する。
申 東源(シン ドンウォン)
1960年生まれ。ソウル大学校農学大学卒業、同大科学史・科学哲学博士課程修了、理学博士。ケンブリッジ大学ニーダム東アジア科学史研究所客員研究員、韓国科学技術院准教授を経て、現在、韓国科学文明学研究所長、全北大学校科学学科教授。2015年から韓国科学史学会会長。著書に『韓国近代保健医療史』(1997)、『朝鮮人の生老病史』(1999)、『朝鮮人・許浚』(2001)、『わが科学の謎』(全2巻、2006-7)、『韓国科学史のはなし』(全3巻、2010-12)、『虎患・媽媽・天然痘』(2013)、『朝鮮医薬生活史』(2014)『東医宝鑑と東アジア医学史』(2015)ほか。2010年に刊行が開始されたシリーズScience and Civilization in Korea(全37巻)の編集代表。
任 正爀(イム ジョンヒョク)
1955年生まれ。朝鮮大学校理学部物理学科卒業、東京都立大学大学院物理学研究科博士課程修了、理学博士。現在、朝鮮大学校理工学部教授。著書・編著に『朝鮮の科学と技術』(明石書店、1993)、『朝鮮科学文化史へのアプローチ』(明石書店、1995)『現代朝鮮の科学者たち』(彩流社、1997)、『朝鮮科学技術史研究』(皓星社、2001)、『朝鮮近代科学技術史研究──開化期・植民地期の諸問題』(皓星社、2010)『朝鮮科学史における近世──洪大容・カント・志筑忠雄の自然哲学的宇宙論』(思文閣出版、2011)『エピソードと遺跡をめぐる朝鮮科学史』(皓星社、2012)、『朝鮮古代中世科学技術史研究──古朝鮮から高麗時代までの諸問題』(皓星社、2014)。
※上記内容は本書刊行時のものです。 日本語版への序文
本書を刊行するにあたり
I 苦痛を強いられる身体の歴史
コレラ、朝鮮を襲う
なぜ、あれほど疫病が流行したのか──朝鮮時代の疫病と防疫
朝鮮人、細菌を眼で見る──細菌説と植民地近代性
断髪とサントォの戦争、衛生の名で
男子を産むための長い欲望の歴史──転女為男法の考古学
『卞カンセィ歌』に見る性・病・躯文化の謎
沈清伝に見る盲人と障害の社会史
II 歴史の中の医療生活
医女のはなし
救急名薬・牛黄清心丸
駭怪であり、罔測である──朝鮮末期病院の姿
韓国のヒポクラテス宣誓
III 朝鮮医学か、西洋医学か
朝鮮医学は中国医学の亜流なのか──朝鮮医学の歴史的正体性
朝鮮後期の身体・臓腑に関する談論の性格
朝鮮後期の西洋医学、漢医学に挑戦す
牛痘法は未明の暗さを照らす灯火なのか──牛痘法の政治学
一九三〇年代の朝鮮医学、西洋医学と一戦交える──漢医学の近代性・科学性論争
医療がどのように民衆に近づいたのか──朝鮮医療史から見た民衆医療
付論 好敵手──金斗鐘と三木栄
訳者解説
訳者あとがき
索引
本書を刊行するにあたり
I 苦痛を強いられる身体の歴史
コレラ、朝鮮を襲う
なぜ、あれほど疫病が流行したのか──朝鮮時代の疫病と防疫
朝鮮人、細菌を眼で見る──細菌説と植民地近代性
断髪とサントォの戦争、衛生の名で
男子を産むための長い欲望の歴史──転女為男法の考古学
『卞カンセィ歌』に見る性・病・躯文化の謎
沈清伝に見る盲人と障害の社会史
II 歴史の中の医療生活
医女のはなし
救急名薬・牛黄清心丸
駭怪であり、罔測である──朝鮮末期病院の姿
韓国のヒポクラテス宣誓
III 朝鮮医学か、西洋医学か
朝鮮医学は中国医学の亜流なのか──朝鮮医学の歴史的正体性
朝鮮後期の身体・臓腑に関する談論の性格
朝鮮後期の西洋医学、漢医学に挑戦す
牛痘法は未明の暗さを照らす灯火なのか──牛痘法の政治学
一九三〇年代の朝鮮医学、西洋医学と一戦交える──漢医学の近代性・科学性論争
医療がどのように民衆に近づいたのか──朝鮮医療史から見た民衆医療
付論 好敵手──金斗鐘と三木栄
訳者解説
訳者あとがき
索引
書評掲載
「出版ニュース」(2016-2 下旬号)にて紹介されました。