わが国が西欧近代医学を導入するにあたって、生理学・病理学・解剖学の基礎医学および臨床医学の教育と研究に必要不可欠なもの(「材料」)とされた学用患者は、いかにして生まれ、それはシステムとしてどのように機能し、教育研究体制の中に位置づけられたのか。明治・大正・昭和前期にわたる医学雑誌の記述を軸に、近代の医学教育および病院医療システム構築の過程をたどり、その展開を跡づける。
新村 拓(シンムラ タク)
1946年静岡県生。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士(早大)。京都府立医科大学教授、北里大学教授・副学長を経て、現在北里大学名誉教授。専攻、日本医療社会史。著書に、『古代医療官人制の研究』(1983年)、『日本医療社会史の研究』(85年)、『死と病と看護の社会史』(89年)、『老いと看取りの社会史』(91年)──以上の4書にてサントリー学芸賞を受賞(92年).『ホスピスと老人介護の歴史』(92年)、『出産と生殖観の歴史』(96年)、『医療化社会の文化誌』(98年)、『在宅死の時代』(2001年)、『痴呆老人の歴史』(02年)、『健康の社会史』(06年)、『国民皆保険の時代』(11年)、『日本仏教の医療史』(13年。矢数医史学賞を受賞。以上いずれも法政大学出版局)が、編著に『日本医療史』(06年。吉川弘文館)がある。
※上記内容は本書刊行時のものです。第一章 臨床医学と実験医学の統合
一 近代医学の成り立ちとその課題
二 学用患者を研究「材料」から研究協力者に転化させる
装置
三 歴史にみる臨床重視の伝統と基礎医学研究の萌芽
付論 免責される医療過誤
第二章 近代医学教育体制の構築
一 解剖用屍体の確保
二 系統解剖および病体(病理)解剖の実地演習
三 全国的に高まった病体(病理)解剖の機運
付論 屍体の所有権
第三章 医学校と病院の再編
一 解剖用屍体の不足と経費減額に悩む医学校の統廃合
二 娼妓・貸座敷業者への賦金と病院の開設
三 私立病院増加の背景と世評
四 往診医に支えられた大正・昭和初期の在村医療
付論 告知
第四章 求められる施療 拒否される施療
一 貧民への施療を押しつけ合う官公立病院と開業医
二 行倒れ・乞食の救療と放逐にあたった巡査
三 公立病院を施療病院化することの是非
四 慈善事業から社会政策の時代へ
付論 明治の医師の職業倫理
第五章 学用患者の誕生
一 医学教育・研究「材料」として扱われた学用患者
二 学用患者システムを変えた公害・薬害患者
あとがき
索引
一 近代医学の成り立ちとその課題
二 学用患者を研究「材料」から研究協力者に転化させる
装置
三 歴史にみる臨床重視の伝統と基礎医学研究の萌芽
付論 免責される医療過誤
第二章 近代医学教育体制の構築
一 解剖用屍体の確保
二 系統解剖および病体(病理)解剖の実地演習
三 全国的に高まった病体(病理)解剖の機運
付論 屍体の所有権
第三章 医学校と病院の再編
一 解剖用屍体の不足と経費減額に悩む医学校の統廃合
二 娼妓・貸座敷業者への賦金と病院の開設
三 私立病院増加の背景と世評
四 往診医に支えられた大正・昭和初期の在村医療
付論 告知
第四章 求められる施療 拒否される施療
一 貧民への施療を押しつけ合う官公立病院と開業医
二 行倒れ・乞食の救療と放逐にあたった巡査
三 公立病院を施療病院化することの是非
四 慈善事業から社会政策の時代へ
付論 明治の医師の職業倫理
第五章 学用患者の誕生
一 医学教育・研究「材料」として扱われた学用患者
二 学用患者システムを変えた公害・薬害患者
あとがき
索引
書評掲載
「週刊読書人」(2016年6月24日号/鈴木晃仁氏・評)にて紹介されました。