時は十九世紀。一冊の書物をきっかけに帝国ロシアで「出版戦争」と呼ばれる大論争が勃発した。その書物は、帝国内のバルト地方で数世紀にわたって特権的地位を享受してきたドイツ系住民を、帝国への陰謀を企てる「裏切り者」と糾弾する。そこには、包摂を原則とする帝国の論理に抗い、国家内国家を拒絶するロシア・ナショナリズムが胚胎していた。言論が社会に及ぼす力を描き出す、新しいロシア史の挑戦!
山本 健三(ヤマモト ケンソウ)
1971年生。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。島根県立大学北東アジア地域研究センター研究員兼嘱託助手、島根県立大学総合政策学部非常勤講師。政治思想史専攻。論文に「広域共生をめざす政治的ナショナリズム――1860年代後半のバルト・ドイツ人問題に関するカトコーフの言論活動」(『ロシア思想史研究』第5号、2014年)、「M・A・バクーニンにおけるアジア問題――G・マッツィーニ批判と「黄禍」」(『スラヴ研究』第60号、2013年)ほか、がある。
※上記内容は本書刊行時のものです。 凡 例
はじめに
第Ⅰ章 ロシア帝国とバルト・ドイツ人(一八世紀初頭―一九世紀初頭)
はじめに
第一節 特権階層としてのバルト・ドイツ人
第二節 エカチェリーナ二世による改革の試み
第三節 一九世紀初頭の情勢(農奴解放とその影響)
小 括
第Ⅱ章 サマーリンによる問題提起とその衝撃
はじめに
第一節 サマーリンの生涯と思想におけるオストゼイ問題の位置づけ
第二節 『リガからの手紙』前史
第三節 暴かれたバルト海沿岸地方の「実態」
第四節 サマーリンとニコライ一世の対話――「帝国」対「ナショナリズム」
小 括
第Ⅲ章 一八六〇年代後半におけるオストゼイ問題の浮上
はじめに
第一節 一八六〇年代前半までのバルト・ドイツ人に対する眼差し
第二節 大改革と第二次ポーランド反乱
第三節 ドイツ統一問題とパン・スラヴ主義イデオロギー
第四節 バルト海沿岸地方をめぐる「出版戦争」
小 括
第Ⅳ章 〈陰謀〉としてのオストゼイ問題――カトコーフとサマーリンによる概念化
はじめに
第一節 カトコーフの「ポーランド人の陰謀」論
第二節 陰謀論の論理と構成
第三節 サマーリンが描いた〈陰謀〉としてのオストゼイ問題
第四節 バルト・ドイツ人の困惑
小 括
第Ⅴ章 「隠蔽」されるオストゼイ問題
はじめに
第一節 『ロシアの辺境』以降の出版戦争
第二節 『ロシアの辺境』発禁の論理
第三節 カール・シレンの『サマーリン氏へのリフラントの返答』
第四節 ロシア政府から見たオストゼイ問題
小 括
結 論――「オストゼイ問題」とは何であったか
あとがき
参考文献
はじめに
第Ⅰ章 ロシア帝国とバルト・ドイツ人(一八世紀初頭―一九世紀初頭)
はじめに
第一節 特権階層としてのバルト・ドイツ人
第二節 エカチェリーナ二世による改革の試み
第三節 一九世紀初頭の情勢(農奴解放とその影響)
小 括
第Ⅱ章 サマーリンによる問題提起とその衝撃
はじめに
第一節 サマーリンの生涯と思想におけるオストゼイ問題の位置づけ
第二節 『リガからの手紙』前史
第三節 暴かれたバルト海沿岸地方の「実態」
第四節 サマーリンとニコライ一世の対話――「帝国」対「ナショナリズム」
小 括
第Ⅲ章 一八六〇年代後半におけるオストゼイ問題の浮上
はじめに
第一節 一八六〇年代前半までのバルト・ドイツ人に対する眼差し
第二節 大改革と第二次ポーランド反乱
第三節 ドイツ統一問題とパン・スラヴ主義イデオロギー
第四節 バルト海沿岸地方をめぐる「出版戦争」
小 括
第Ⅳ章 〈陰謀〉としてのオストゼイ問題――カトコーフとサマーリンによる概念化
はじめに
第一節 カトコーフの「ポーランド人の陰謀」論
第二節 陰謀論の論理と構成
第三節 サマーリンが描いた〈陰謀〉としてのオストゼイ問題
第四節 バルト・ドイツ人の困惑
小 括
第Ⅴ章 「隠蔽」されるオストゼイ問題
はじめに
第一節 『ロシアの辺境』以降の出版戦争
第二節 『ロシアの辺境』発禁の論理
第三節 カール・シレンの『サマーリン氏へのリフラントの返答』
第四節 ロシア政府から見たオストゼイ問題
小 括
結 論――「オストゼイ問題」とは何であったか
あとがき
参考文献
書評掲載
「出版ニュース」(2016年11月中旬号)にて紹介されました。