第二次大戦下、アメリカ西海岸地域に住む約十二万人の日系人は敵性外国人として居住地を追われ、収容施設に隔離された。本書は最初期の仮設日系人収容所である「集合所」で行われた、印刷物の検閲や日本語使用の規制など多領域にわたる市民的自由の侵害を実証的に解明する。有事における言論・報道統制のありかたのみならず、民主主義の内包する矛盾とその限界を考察するジャーナリズム研究。
水野 剛也(ミズノ タケヤ)
1970年、東京都生まれ。アメリカ・ミズーリ州立大学、スクール・オブ・ジャーナリズム博士課程修了。現在、東洋大学社会学部教授。著書に『日系アメリカ人強制収容とジャーナリズム──リベラル派雑誌と日本語新聞の第二次世界大戦』(春風社、2005年)、『「敵国語」ジャーナリズム──日米開戦とアメリカの日本語新聞』(春風社、2011年)、『「自由の国」の報道統制──大戦下の日系ジャーナリズム(歴史文化ライブラリー381)』(吉川弘文館、2014年)、共訳書にM. エメリー、E. エメリー、N. L. ロバーツ『アメリカ報道史──ジャーナリストの視点から観た米国史』(松柏社、2016年)がある。
※上記内容は本書刊行時のものです。 まえがき
第一部 研究の基本的手続き
第一章 本書の目的、意義、方法、その他の諸点
はじめに
第一節 本書の目的と背景
本書の目的
日系アメリカ人──一世・二世・帰米
強制立ち退き・収容
集合所──最初期の臨時収容施設
第二節 本書の意義
第三節 研究方法とその他の諸点
研究対象
時間枠
主な一次史料
用語の説明
構 成
第二章 先行研究のレヴュー
はじめに
第一節 強制立ち退き・収容と集合所
第二節 集合所における新聞発行と検閲
第三節 戦時下における「言論・報道の自由」と統制
第二部 日系アメリカ人集合所における言論・報道統制
第三章 集合所前夜──日米開戦から立ち退きまで
はじめに
第一節 日米開戦とアメリカの日本語新聞
アメリカにおける日本語新聞の発展と影響力
日米開戦時の日本語新聞
第二節 開戦直後の政府による統制
編集幹部の一斉連行と発行停止命令
日本語記事の英訳提出命令
事前の内偵
強いられた「自己規制」
日本語新聞を継続させ利用
第三節 政府と日本語新聞の不均衡な相互依存関係
日本語新聞の「メッセンジャー」化
政府と日本語新聞の利害一致
不均衡な相互依存関係
第四節 立ち退きによる最終的な発行停止
政府内の意見対立とその結末
日本語新聞の続刊交渉とその失敗
不均衡な相互依存関係の終焉
本章のまとめ
第四章 集合所の規則と管理・運営
はじめに
第一節 陸軍管理当局──WCCA(戦時民間人管理局)とWDC(西部防衛司令部)
軍隊的体質と差別感情
軍と文民当局のかい離
第二節 集合所規則
規則の成立
日本語による出版・印刷物の禁止
日本語による集会・会合、および結社の禁止
信仰・宗教活動の制限
本章のまとめ
第五章 日本語による出版・印刷物の禁止
はじめに
第一節 日本語ニュースの排除
集合所長の権限と集合所による若干の差異
「敵国語」の厳格な取り締まり
キャンプ新聞による日本語報道とその禁止
渦巻く不満と混乱
日本語新聞を求める署名運動と主導者の処罰
第二節 日本語書籍・印刷物等の排除・没収
日本語書籍等の排除・没収
日本語による公的情報伝達の統制
第三節 郵便物の統制・検閲
外部の日本語新聞の購読禁止
家宅捜索による「禁制品」の没収
私信の検閲
日本語新聞など外部マス・メディアへの寄稿・投稿の禁止
本章のまとめ
第六章 キャンプ新聞の検閲
はじめに
第一節 キャンプ新聞の発行
十五のキャンプ新聞
迅速な新聞発行
ストレート・ニュース中心の紙面
「道具」として実益を求める当局
政府への全面的な依存
第二節 検閲の全体像
事前検閲
恣意的な検閲とつのる不満
事前検閲の実例──『マンザナー・フリー・プレス』
事前検閲の実例──『フレズノ・グレープヴァイン』
事前検閲の実例──『キャンプ・ハーモニー・ニューズ=レター』
事後検閲
検閲による弊害
第三節 『タンフォラン・トータライザー』
当局のすばやい発行許可
事前検閲の開始
ふり回される編集部
集合所長の「回収」命令
意図的な情報の隠蔽と提供
強いられた「自己検閲」
第四節 『サンタ・アニタ・ペースメーカー』
理想と現実のかい離
事前検閲とその弊害
強いられた「自己検閲」
つのる不満と逆効果
本章のまとめ
第七章 集合所におけるその他の言論統制
はじめに
第一節 集会・会合、および結社の統制
集合所規則
忠実な規則執行
ポートランドの「二世フォーラム」
タンフォランの「タウン・ホール・ミーティング」
規則違反者の処罰──サンタ・アニタの日本語集会と「行政布告第十三号」
萎縮効果
外部訪問者に対する統制──「全国学生転住委員会」を中心に
第二節 信仰・宗教活動の統制
集合所規則
日系人と仏教──その意義と社会的位置づけ
統制の実態
萎縮効果──強いられた「自粛」「改宗」
クリスチャンが受けた統制
第三節 娯楽・文化・教育活動、その他の言論統制
娯楽・文化活動の統制
教育活動の統制
「アメリカ化」(アメリカナイゼーション)政策の推進
「非日本化」と表裏一体の「アメリカ化」
本章のまとめ
第三部 結論
終章 戦時民主主義の「限界」と「矛盾」
はじめに
第一節 知見の総括
「敵国語」の徹底的な排除
言論・報道の自由
集会・会合・結社の自由
信仰・宗教の自由
その他の言論・表現の自由、異議申し立てをする権利など
第二節 知見の位置づけと歴史的教訓
戦時日系人政策全体における位置づけ
戦時下の市民的自由と統制
将来にむけた教訓
あとがき──謝辞にかえて
事項索引
人名索引
第一部 研究の基本的手続き
第一章 本書の目的、意義、方法、その他の諸点
はじめに
第一節 本書の目的と背景
本書の目的
日系アメリカ人──一世・二世・帰米
強制立ち退き・収容
集合所──最初期の臨時収容施設
第二節 本書の意義
第三節 研究方法とその他の諸点
研究対象
時間枠
主な一次史料
用語の説明
構 成
第二章 先行研究のレヴュー
はじめに
第一節 強制立ち退き・収容と集合所
第二節 集合所における新聞発行と検閲
第三節 戦時下における「言論・報道の自由」と統制
第二部 日系アメリカ人集合所における言論・報道統制
第三章 集合所前夜──日米開戦から立ち退きまで
はじめに
第一節 日米開戦とアメリカの日本語新聞
アメリカにおける日本語新聞の発展と影響力
日米開戦時の日本語新聞
第二節 開戦直後の政府による統制
編集幹部の一斉連行と発行停止命令
日本語記事の英訳提出命令
事前の内偵
強いられた「自己規制」
日本語新聞を継続させ利用
第三節 政府と日本語新聞の不均衡な相互依存関係
日本語新聞の「メッセンジャー」化
政府と日本語新聞の利害一致
不均衡な相互依存関係
第四節 立ち退きによる最終的な発行停止
政府内の意見対立とその結末
日本語新聞の続刊交渉とその失敗
不均衡な相互依存関係の終焉
本章のまとめ
第四章 集合所の規則と管理・運営
はじめに
第一節 陸軍管理当局──WCCA(戦時民間人管理局)とWDC(西部防衛司令部)
軍隊的体質と差別感情
軍と文民当局のかい離
第二節 集合所規則
規則の成立
日本語による出版・印刷物の禁止
日本語による集会・会合、および結社の禁止
信仰・宗教活動の制限
本章のまとめ
第五章 日本語による出版・印刷物の禁止
はじめに
第一節 日本語ニュースの排除
集合所長の権限と集合所による若干の差異
「敵国語」の厳格な取り締まり
キャンプ新聞による日本語報道とその禁止
渦巻く不満と混乱
日本語新聞を求める署名運動と主導者の処罰
第二節 日本語書籍・印刷物等の排除・没収
日本語書籍等の排除・没収
日本語による公的情報伝達の統制
第三節 郵便物の統制・検閲
外部の日本語新聞の購読禁止
家宅捜索による「禁制品」の没収
私信の検閲
日本語新聞など外部マス・メディアへの寄稿・投稿の禁止
本章のまとめ
第六章 キャンプ新聞の検閲
はじめに
第一節 キャンプ新聞の発行
十五のキャンプ新聞
迅速な新聞発行
ストレート・ニュース中心の紙面
「道具」として実益を求める当局
政府への全面的な依存
第二節 検閲の全体像
事前検閲
恣意的な検閲とつのる不満
事前検閲の実例──『マンザナー・フリー・プレス』
事前検閲の実例──『フレズノ・グレープヴァイン』
事前検閲の実例──『キャンプ・ハーモニー・ニューズ=レター』
事後検閲
検閲による弊害
第三節 『タンフォラン・トータライザー』
当局のすばやい発行許可
事前検閲の開始
ふり回される編集部
集合所長の「回収」命令
意図的な情報の隠蔽と提供
強いられた「自己検閲」
第四節 『サンタ・アニタ・ペースメーカー』
理想と現実のかい離
事前検閲とその弊害
強いられた「自己検閲」
つのる不満と逆効果
本章のまとめ
第七章 集合所におけるその他の言論統制
はじめに
第一節 集会・会合、および結社の統制
集合所規則
忠実な規則執行
ポートランドの「二世フォーラム」
タンフォランの「タウン・ホール・ミーティング」
規則違反者の処罰──サンタ・アニタの日本語集会と「行政布告第十三号」
萎縮効果
外部訪問者に対する統制──「全国学生転住委員会」を中心に
第二節 信仰・宗教活動の統制
集合所規則
日系人と仏教──その意義と社会的位置づけ
統制の実態
萎縮効果──強いられた「自粛」「改宗」
クリスチャンが受けた統制
第三節 娯楽・文化・教育活動、その他の言論統制
娯楽・文化活動の統制
教育活動の統制
「アメリカ化」(アメリカナイゼーション)政策の推進
「非日本化」と表裏一体の「アメリカ化」
本章のまとめ
第三部 結論
終章 戦時民主主義の「限界」と「矛盾」
はじめに
第一節 知見の総括
「敵国語」の徹底的な排除
言論・報道の自由
集会・会合・結社の自由
信仰・宗教の自由
その他の言論・表現の自由、異議申し立てをする権利など
第二節 知見の位置づけと歴史的教訓
戦時日系人政策全体における位置づけ
戦時下の市民的自由と統制
将来にむけた教訓
あとがき──謝辞にかえて
事項索引
人名索引
書評掲載
「出版ニュース」(2019年3月中旬号)に紹介されました。
「新聞研究」(No.813、2019年4月号)に紹介されました。