人生の余剰や副産物と思われがちなアート。しかし、旧石器時代の洞窟壁画から現代の映像作品に至るまで、どんなに苛酷な状況でも人類はアートと共に生きてきた。あらゆる視覚的表現は人間と社会に不可欠な「いきのびるアート(技術=芸術)」にほかならない。古今東西の作品の前で人の目はどのように動くのか。そして、それは何をもたらすのか。困難な時代を乗り越え、21世紀をいきのびる手がかりを摑み出す。
中村 英樹(ナカムラ ヒデキ)
1940年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部哲学科(美学美術史)卒業。1965年、69年、美術出版社主催芸術評論募集に入選。以後、近・現代美術の評論活動を展開。2011年まで名古屋造形大学造形学部教授を務める。国際美術評論家連盟会員。
著書:『鮮烈なる断片──日本の深層と創作現場の接点』(杉山書店、1984年)、『アート・ジャングル──主体から〈時空体〉へ』(水声社、1999年)、『新・北斎万華鏡──ポリフォニー的主体へ』(美術出版社、2004年)、『生体から飛翔するアート──二十一世紀の《間知覚的メタ・セルフ》へ』(水声社、2006年)、『〈人型〉の美術史──まなざしの引力を読む』(岩波書店、2011年)ほか多数。
まえがき
第 I 章 〈皮膜〉の両義性
1 人類における視覚的表現の働き
2 「関係性」、すなわち「双方向性」
3 苛酷な現実に抗する活力の生成
4 プリミティブ・アートからの贈物
5 心を装う人工皮膚の再生に向けて
第 II 章 無数の手の痕跡へ
1 正逆を交互に繰り返す生体の運動
2 知覚に欠かせない反復する目の動き
3 素材に無数の痕跡を残す手の動き
4 見る人の目の動きを誘う視覚的表現
5 〈見ること〉が探知する〈見られ方〉
第 III 章 目に潜む意外な力
1 視覚的表現に含まれる触覚性
2 ミクロな視点とマクロな視点の両立
3 極小の自分を超遠距離から眺める
4 「重力」と交感する垂直方向の視線
5 無限の時空の内側で手探りする目
第 IV 章 言語の手前の世界
1 言語に置き換えられる前の知覚
2 切れ目のない色彩の微妙な変化
3 世界を分割する思考の枠組み
4 仮設性を明示する表現方法
5 分けないで世界を分ける
第 V 章 〈間〉の主体構造
1 〈見ること〉と〈見ること〉の〈間〉
2 異質間せめぎ合いの効力
3 どの時点にも属さない不変の次元
4 二重化された本来の自己
5 自らの脇役に留まる自己救済
第 VI 章 社会共有の心の拠り所
1 視覚的表現独自の共有可能性
2 共有された外部世界の表われ
3 対人関係や社会状況を巡って
4 非実体的な不変の次元の共有
5 自己脇役による社会システム
あとがき
作品名索引
第 I 章 〈皮膜〉の両義性
1 人類における視覚的表現の働き
2 「関係性」、すなわち「双方向性」
3 苛酷な現実に抗する活力の生成
4 プリミティブ・アートからの贈物
5 心を装う人工皮膚の再生に向けて
第 II 章 無数の手の痕跡へ
1 正逆を交互に繰り返す生体の運動
2 知覚に欠かせない反復する目の動き
3 素材に無数の痕跡を残す手の動き
4 見る人の目の動きを誘う視覚的表現
5 〈見ること〉が探知する〈見られ方〉
第 III 章 目に潜む意外な力
1 視覚的表現に含まれる触覚性
2 ミクロな視点とマクロな視点の両立
3 極小の自分を超遠距離から眺める
4 「重力」と交感する垂直方向の視線
5 無限の時空の内側で手探りする目
第 IV 章 言語の手前の世界
1 言語に置き換えられる前の知覚
2 切れ目のない色彩の微妙な変化
3 世界を分割する思考の枠組み
4 仮設性を明示する表現方法
5 分けないで世界を分ける
第 V 章 〈間〉の主体構造
1 〈見ること〉と〈見ること〉の〈間〉
2 異質間せめぎ合いの効力
3 どの時点にも属さない不変の次元
4 二重化された本来の自己
5 自らの脇役に留まる自己救済
第 VI 章 社会共有の心の拠り所
1 視覚的表現独自の共有可能性
2 共有された外部世界の表われ
3 対人関係や社会状況を巡って
4 非実体的な不変の次元の共有
5 自己脇役による社会システム
あとがき
作品名索引
書評掲載
「美術手帖」(2016年1月号/中島水緒氏・評)に紹介されました。
「図書新聞」(2016年8月6日号/宮田徹也氏・評)に紹介されました。