対話性の境界
ウーヴェ・ヨーンゾンの詩学

金志成:著
第19回日本独文学会・DAAD賞受賞
A5判 / 478ページ / 上製 / 価格 5,720円 (消費税 520円) 
ISBN978-4-588-49516-8 C1090 [2020年07月 刊行]

内容紹介

1934年にナチス政権下の現ポーランド領に生まれ、「ドイツ人追放」により旧東独で育ち、作家デビューに伴い西ベルリンに「転居」、1984年にイギリスで孤独死したヨーンゾン。イデオロギーで分断された世界を対話的に描き、ブランショに称賛されるなど、戦後ドイツを代表する作家としての評価はいまだ揺るぎない。その文学的営為の根本的な「詩学」の問題は「対話性」や「倫理」という図式に回収されてきたが、本書は精緻なテクスト分析と大胆な批評性であえてそれらの「境界」を探り、彼の文学を貫く「真実への困難な探求」を新たな視点から描き出す。

著訳者プロフィール

金志成(キム チソン)

1987年大阪生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専攻は戦後・現代ドイツ文学。現在、早稲田大学文学学術院講師(任期付)。主な業績に、『固有名の詩学』(共著、法政大学出版局、2019年)、「破壊のエクリチュール――トーマス・ベルンハルト『アムラス』のフラグメント性」(論文、『オーストリア文学』36号、2020年)、„Dekonstruktive Momente in Uwe Johnsons Poetik“(論文、Johnson-Jahrbuch 23, 2016年)、『背後の世界』(翻訳、トーマス・メレ著、河出書房新社、2018年)など。
ルッツ・ザイラー『クルーゾー』の翻訳企画で、2020年度(第4回)ゲーテ・インスティトゥートの「かけはし文学賞」を受賞。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序文

第1章 詩学
 第1節 導入──ヨーンゾンの「詩学講義」
 第2節 「詩学」の歴史──古代ギリシアからロマン派まで
 第3節 戦後ドイツにおける「詩学」の制度化
 第4節 〈ポスト詩学〉の状況
 第5節 表されるものが表す手段を条件づける
 第6節 方法論についての要約

第2章 ダイアローグ
 第1節 導入──境界線
 第2節 〈語りの全知性〉をめぐる問題
 第3節 作り出された人物
 第4節 対話性の詩学

第3章 パフォーマンス
 第1節 導入──小説は革命のための武器ではない
 第2節 二つの政治性
 第3節 文学における「真実」
 第4節 「真実探求」の死角
 第5節 『ベルリンのSバーン』
 第6節 パフォーマンスとしての「真実探求」

第4章 モダニティー
 第1節 導入──モダニスト・ヨーンゾン
 第2節 『長篇小説を検討するための諸提案』
 第3節 モダニティーの歴史イメージ
 第4節 ボードレールの現代性
 第5節 理想と憂鬱

第5章 『ヤーコプについての推測』
 第1節 導入──「難解」な小説
 第2節 対話的形式
 第3節 ロールフス
 第4節 ヨーナス・ブラッハ
 第5節 ゲジーネ・クレスパール

第6章 『イースターの水』
 第1節 導入──「模範的な短篇小説」
 第2節 水と鏡のイニシエーション
 第3節 かつての少女の追憶
 第4節 完結性と破綻

第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』
 第1節 導入──付随状況
 第2節 一年の日々
 第3節 暦と想起
 第4節 コレスポンダンスとアレゴリー
 第5節 言語の問題
 第6節 『記念の日々』における対話性
 第7節 わたしが死んだときのために
 終 節 マージョリーのゆくえ

結語
あとがき
参考文献
索引

書評掲載

「図書新聞」(2020年10月31日号/西尾悠子氏・評)に紹介されました。

「図書新聞」(2020年12月12日号)の「文学」時評で取り上げられました。