サピエンティア 72
「劇場国家」北朝鮮
カリスマ権力はいかに世襲されたのか

権憲益:著, 鄭炳浩:著, 趙慶喜:訳
四六判 / 334ページ / 上製 / 価格 3,740円 (消費税 340円) 
ISBN978-4-588-60372-3 C1322 [2024年01月 刊行]

内容紹介

ポストコロニアル国家としての北朝鮮が日本の植民地支配の苦痛と抵抗の歴史を文化芸術的に再創造し、政治体制の正統性を構築し、ポスト冷戦とポスト社会主義の流れの反作用として、米国に対抗しながら、劇場的権力の演出を通じてカリスマ権力支配と政治的世襲を正当化してきた過程を検討する。遊撃隊国家、先軍政治、苦難の行軍、銃の力と愛の力、恋しさの政治、遺訓政治──極めて特異な政治体制の核心に迫る画期的な研究。

著訳者プロフィール

権憲益(クォン ホニク)

権憲益(권헌익/KWON Heonik)
英国ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのシニアリサーチフェロー、イギリス学士院会員。2021年からソウル大学アジア研究所のメガアジア研究団に参加。ケンブリッジ大学で人類学の博士号を取得。主な著作に、After the Korean War: An Intimate History (Cambridge University Press, 2020), Ghosts of War in Vietnam (Cambridge University Press, 2008, アジア学会カヒン賞受賞), After the Massacre: Commemoration and Consolation in Ha My and My Lai (University of California Press, 2006, アメリカ人類学会ギアツ賞受賞)、などがあり、朝鮮戦争の記憶と歴史を調査する国際プロジェクト “Beyond the Korean War” を主導している。

鄭炳浩(チョン ビョンホ)

鄭炳浩(정병호/CHUNG Byung-Ho)
漢陽大学名誉教授。元韓国文化人類学会長。米国イリノイ大学で人類学の博士号を取得。専門は文化変動論、実践人類学。主な著作に、『ウェルカム・トゥ・コリア―北朝鮮の人々の韓国生活』(漢陽大学出版部、2006)、『韓国の多文化空間』(玄岩社、2011)などがあり、日本語に翻訳された著作に、『人類学者がのぞいた北朝鮮――苦難と微笑みの国』(青土社、2022)がある。韓国の共同保育と共同体教育運動を導きながら、北朝鮮の子どもの飢餓救護活動、脱北青少年教育支援に関わる。

趙慶喜(チョウ キョンヒ)

趙慶喜(조경희/CHO Kyung Hee)
聖公会大学東アジア研究所副教授。専門は社会学。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。東京外国語大学にて博士号(学術)取得。主な著作に、『残余の声を聴く――沖縄・韓国・パレスチナ』(共著、明石書店、2021)、『〈戦後〉の誕生――戦後日本と「朝鮮」の境界』(共著、新泉社、2017)、『コリアン・ディアスポラと東アジア社会』(共著、京都大学学術出版会、2013)、白永瑞『共生への道と核心現場――実践課題としての東アジア』(監訳、法政大学出版局、2016)、金東椿『朝鮮戦争の社会史――避難・占領・虐殺』(共訳、平凡社、2008)など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

日本語版への序文

謝辞

序論

第一章 一九九四年の大国葬
 遊撃隊国家
 家族国家
 新たな家族国家
 恋しさの政治

第二章 現代的劇場国家
 顕示する権力
 花を売る乙女
 血の海(ピバダ)
 伝統の再創造

第三章 銃床
 先軍政治理論
 銃の贈り物
 銃床哲学
 銃の力、愛の力

第四章 革命烈士陵
 北朝鮮の国立墓地
 革命烈士のための記念物
 満州パルチザンの政治的な死後世界
 世襲的カリスマの完成

第五章 指導者に捧げる贈り物
 グローバル朝鮮
 国際親善展覧館
 脱植民地化された世界の指導者
 北朝鮮例外論

第六章 モラル・エコノミー
 モラル・エコノミー
 苦難の行軍
 共存の倫理

結論

訳者あとがき


参考文献
図版出典
索引

書評掲載

「週刊金曜日」(1462号、2024年03月01日発行/文聖姫氏・評)に紹介されました。

「週刊読書人」(2024年03月08日号/東島雅昌氏・評)に紹介されました。

「日本経済新聞」(2024年03月23日付)に紹介されました。

「西日本新聞」(2024年04月27日付/麻生晴一郎氏・評)に紹介されました。

「公明新聞」(2024年06月17日付/佐藤卓己氏・評)に紹介されました。