2011年の東日本大震災後、原発から脱却する決断を下したドイツと、最悪の事故に見舞われながらもなお再稼働を強行しようとする日本。持続可能な社会への「エネルギー転換」政策は、どのような政治・社会過程をへて実現できるのか。サステイナビリティ研究所、法政大学社会学部科研費プロジェクト、原子力市民委員会が共催し、ドイツの政策決定に関わった専門家や日本の識者が討論した国際シンポジウムの記録。
舩橋晴俊(フナバシ ハルトシ)
1948–2014年。法政大学名誉教授。サステイナビリティ研究所前副所長,原子力市民委員会元座長。専門は環境社会学・社会計画論。主な著書に,『組織の存立構造論と両義性論』(東信堂,2010年),『環境社会学』(編著,弘文堂,2011年),『社会学をいかに学ぶか』(弘文堂,2012年),『原子力総合年表』(共編,すいれん舎,2014年),『社会制御過程の社会学』(近刊)ほか。
壽福眞美(ジュフク マサミ)
1947年生まれ。法政大学サステイナビリティ研究所副所長,社会学部教授。専門は社会哲学。主な著訳書に,『批判的理性の社会哲学』(法政大学出版局,1996年),『公共圏と熟議民主主義』(共編,法政大学出版局,2013年),N.ボルツ/A.ミュンケル編『人間とは何か』(法政大学出版局,2010年),ヘニッケ/ヴェルフェンス『福島後のエネルギー転換』(近刊)。
※上記内容は本書刊行時のものです。はじめに【壽福眞美】
第Ⅰ部 ドイツのエネルギー転換
第1章 エネルギー転換──好機と挑戦
【ペーター・ヘニッケ】
1 はじめに
2 エネルギー転換への長い助走
3 目標体系──コンパスがなければ方向を見失う
4 発電の変動──解決できる挑戦
5 莫大なエネルギー節約のポテンシャル
──「眠れる巨人」を目覚めさせる
6 リバウンド効果
7 展望と戦略的オプション
第2章 ドイツにおける再生可能エネルギーの地域経済効果
【ヨーク・ラウパッハ・スミヤ】
1 はじめに
2 ドイツ・エネルギー転換の推進者としてのコミュニティ
3 バリュー・チェーン・アプローチ
4 結 論
第3章 ドイツの核エネルギー政策
──スリーマイル島,チェルノブイリ,福島に対する反応
【オルトヴィン・レン/クリスティアン・クリーガー】
1 はじめに
2 核政策に関するヨーロッパの文脈
3 ドイツのエネルギーに関する国家的文脈
4 ドイツの核エネルギー政策の発展とインパクト
5 結 論
第4章 ドイツ脱原発──市民参加から発した政策転換
【山本知佳子】
1 脱原発の決断
2 脱原発に至るまでの道筋
3 日本の状況
第5章 専門家討議,市民参加,政治的意思形成
──1979年,ドイツ核エネルギー政策の挫折の始まり
【壽福眞美】
1 安全性は原子力発電に優先する──ヴュルガッセン判決
2 あらゆる危険性を排除すべきである ──ヴィール判決
3 市民の蒙を啓く?──「市民対話:核エネルギー」と2冊の文書
4 「残余の危険性」論の両義性──カルカール決定
5 (再) 処理なくして原発なし──ブロークドルフ判決
6 国際シンポ「ゴアレーベン公聴会」──ドイツ核政策の挫折の始まり
〈特別寄稿〉 緑の党とエネルギー転換
【ジルヴィア・コッティング=ウール】
第Ⅱ部 日本のエネルギー転換
第6章 3・11 Fukushimaと世界・日本のエネルギー事情
【北澤宏一】
1 各国のエネルギー事情
2 福島原発事故の経緯と再稼働のリスク
3 今後の日本のエネルギー政策
福島事故の検証からわかったこと(口頭報告)
第7章 原子力政策をめぐる社会制御の欠陥とその変革
【舩橋晴俊】
はじめに
1 福島原発震災を引き起こした社会的要因連関はなにか 205
2 震災後のエネルギー政策の迷走
3 政策決定過程の分析枠組み
4 日本社会における社会制御の質的変革の可能性
結 び
第8章 日本の市民運動は,原子力発電所を終わらせ
エネルギー政策の転換を実現することができる
──私たちは何をすべきか
【アイリーン・美緒子・スミス】
1 はじめに
2 私たちが直面する具体的課題
3 何が進められているか,まだ何がなされていないか
4 戦略的展望のために
5 結 論
著者紹介
第Ⅰ部 ドイツのエネルギー転換
第1章 エネルギー転換──好機と挑戦
【ペーター・ヘニッケ】
1 はじめに
2 エネルギー転換への長い助走
3 目標体系──コンパスがなければ方向を見失う
4 発電の変動──解決できる挑戦
5 莫大なエネルギー節約のポテンシャル
──「眠れる巨人」を目覚めさせる
6 リバウンド効果
7 展望と戦略的オプション
第2章 ドイツにおける再生可能エネルギーの地域経済効果
【ヨーク・ラウパッハ・スミヤ】
1 はじめに
2 ドイツ・エネルギー転換の推進者としてのコミュニティ
3 バリュー・チェーン・アプローチ
4 結 論
第3章 ドイツの核エネルギー政策
──スリーマイル島,チェルノブイリ,福島に対する反応
【オルトヴィン・レン/クリスティアン・クリーガー】
1 はじめに
2 核政策に関するヨーロッパの文脈
3 ドイツのエネルギーに関する国家的文脈
4 ドイツの核エネルギー政策の発展とインパクト
5 結 論
第4章 ドイツ脱原発──市民参加から発した政策転換
【山本知佳子】
1 脱原発の決断
2 脱原発に至るまでの道筋
3 日本の状況
第5章 専門家討議,市民参加,政治的意思形成
──1979年,ドイツ核エネルギー政策の挫折の始まり
【壽福眞美】
1 安全性は原子力発電に優先する──ヴュルガッセン判決
2 あらゆる危険性を排除すべきである ──ヴィール判決
3 市民の蒙を啓く?──「市民対話:核エネルギー」と2冊の文書
4 「残余の危険性」論の両義性──カルカール決定
5 (再) 処理なくして原発なし──ブロークドルフ判決
6 国際シンポ「ゴアレーベン公聴会」──ドイツ核政策の挫折の始まり
〈特別寄稿〉 緑の党とエネルギー転換
【ジルヴィア・コッティング=ウール】
第Ⅱ部 日本のエネルギー転換
第6章 3・11 Fukushimaと世界・日本のエネルギー事情
【北澤宏一】
1 各国のエネルギー事情
2 福島原発事故の経緯と再稼働のリスク
3 今後の日本のエネルギー政策
福島事故の検証からわかったこと(口頭報告)
第7章 原子力政策をめぐる社会制御の欠陥とその変革
【舩橋晴俊】
はじめに
1 福島原発震災を引き起こした社会的要因連関はなにか 205
2 震災後のエネルギー政策の迷走
3 政策決定過程の分析枠組み
4 日本社会における社会制御の質的変革の可能性
結 び
第8章 日本の市民運動は,原子力発電所を終わらせ
エネルギー政策の転換を実現することができる
──私たちは何をすべきか
【アイリーン・美緒子・スミス】
1 はじめに
2 私たちが直面する具体的課題
3 何が進められているか,まだ何がなされていないか
4 戦略的展望のために
5 結 論
著者紹介
■執筆者
ペーター・ヘニッケ(Peter Hennicke)
1942年生まれ。ヴッパータール気候,環境,エネルギー研究所前所長,ローマクラブなど多数の国際顧問会議の構成員,ドイツ(2014年)とスウェーデン(2015年)の環境賞受賞,国際産業環境経済学研究所(ルンド大学,スウェーデン)客員教授(2014〜2015年)。専門はエネルギー,気候変動,資源効率化政策。200以上の論文,著作がある。最新の著書に,『ドイツのエネルギー転換──効率的で知足の緑のエネルギー経済』(共編,ヴッパータール研究所・国際産業環境経済学研究所,2015年)。
ヨーク・ラウパッハ・スミヤ(Jörg Raupach-Sumiya)
1961年生まれ。1990年に来日。経営コンサルティング会社に入社後,外資系企業の日本法人と日独合弁会社の役員を務め,2013年からは立命館大学経営学部教授。専門は国際経営,国際産業論。世界のエネルギー業界,特に再生可能エネルギー分野について研究。
オルトヴィン・レン(Ortwin Renn)
1951年生まれ。先進サステイナビリティー研究所(ポツダム)サイエンティフィック・ディレクター,シュトゥットガルト大学教授。専門は環境社会学。主な著書に,『リスク・ガバナンス』(アーススキャン,2014年),『リスク社会の再審──社会理論とガバナンス』(共著,テンプル大学出版局,2014年),『放射性廃棄物──処理の技術的・規範的側面』(共著,シュプリンガー,2011年)。
クリスティアン・クリーガー(Kristian Krieger)
ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)政治学研究所研究員。専門はリスク・ガバナンスの国際比較,とくに災害マネージメントのリスクとレジリエンス。主な著書に,「レジリエンスとリスク研究」,バージェス,アレマーノ,ジン『リスク研究ハンドブック』(ラウトレッジ,2016年),「洪水マネージメント形成における近代,科学,リスク」(『ワイヤーズ・ウォーター』第2巻3号)。
山本知佳子(やまもと・ちかこ)
1959年生まれ。国際基督教大学卒。フリージャーナリスト・翻訳家。1980年代後半,西ベルリンで反核・平和運動のインターンシップ中,チェルノブイリ事故を経験。その後,ドイツ・メディアの仕事を中心に行ない,中国,インドを経て,現在日本在住。著書に『ベルリンからの手紙』(八月書館,1989年),『外国人襲撃と統一ドイツ』(岩波書店,1993年)ほか。
ジルヴィア・コッティング=ウール(Sylvia Kotting-Uhl)
1952年生まれ。ドイツ連邦議会議員(2005年〜),同盟90/緑の党・核政策代表,ドイツ・日本議員グループ議長(2014年〜),ドイツ環境・自然保全連盟,ドイツ地球の友,世界自然保護基金,アムネスティ・インターナショナル等の会員。
北澤宏一(きたざわ・こういち)
1943–2014年。東京都市大学前学長。東京大学名誉教授。専門は材料科学,高温超伝導研究。福島原発事故独立検証委員会委員長に就任し,2012年2月『調査・検証報告書』を発表。主な著書に,『科学技術は日本を救うのか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン,2010年),『日本は再生可能エネルギー大国になりうるか』(同,2012年)ほか。
アイリーン・美緒子・スミス(Aileen Mioko Smith)
1950年生まれ。1970年,ユージン・スミスのアシスタントとなり,その後結婚。水俣病取材のため3年間現地に滞在。75年アメリカで写真集『MINAMATA』をユージンと出版。80年,日本語版『水俣』(三一書房)を出版。現在は反原発NGO「グリーン・アクション」代表。URL: http://www.greenaction-japan.org/
ペーター・ヘニッケ(Peter Hennicke)
1942年生まれ。ヴッパータール気候,環境,エネルギー研究所前所長,ローマクラブなど多数の国際顧問会議の構成員,ドイツ(2014年)とスウェーデン(2015年)の環境賞受賞,国際産業環境経済学研究所(ルンド大学,スウェーデン)客員教授(2014〜2015年)。専門はエネルギー,気候変動,資源効率化政策。200以上の論文,著作がある。最新の著書に,『ドイツのエネルギー転換──効率的で知足の緑のエネルギー経済』(共編,ヴッパータール研究所・国際産業環境経済学研究所,2015年)。
ヨーク・ラウパッハ・スミヤ(Jörg Raupach-Sumiya)
1961年生まれ。1990年に来日。経営コンサルティング会社に入社後,外資系企業の日本法人と日独合弁会社の役員を務め,2013年からは立命館大学経営学部教授。専門は国際経営,国際産業論。世界のエネルギー業界,特に再生可能エネルギー分野について研究。
オルトヴィン・レン(Ortwin Renn)
1951年生まれ。先進サステイナビリティー研究所(ポツダム)サイエンティフィック・ディレクター,シュトゥットガルト大学教授。専門は環境社会学。主な著書に,『リスク・ガバナンス』(アーススキャン,2014年),『リスク社会の再審──社会理論とガバナンス』(共著,テンプル大学出版局,2014年),『放射性廃棄物──処理の技術的・規範的側面』(共著,シュプリンガー,2011年)。
クリスティアン・クリーガー(Kristian Krieger)
ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)政治学研究所研究員。専門はリスク・ガバナンスの国際比較,とくに災害マネージメントのリスクとレジリエンス。主な著書に,「レジリエンスとリスク研究」,バージェス,アレマーノ,ジン『リスク研究ハンドブック』(ラウトレッジ,2016年),「洪水マネージメント形成における近代,科学,リスク」(『ワイヤーズ・ウォーター』第2巻3号)。
山本知佳子(やまもと・ちかこ)
1959年生まれ。国際基督教大学卒。フリージャーナリスト・翻訳家。1980年代後半,西ベルリンで反核・平和運動のインターンシップ中,チェルノブイリ事故を経験。その後,ドイツ・メディアの仕事を中心に行ない,中国,インドを経て,現在日本在住。著書に『ベルリンからの手紙』(八月書館,1989年),『外国人襲撃と統一ドイツ』(岩波書店,1993年)ほか。
ジルヴィア・コッティング=ウール(Sylvia Kotting-Uhl)
1952年生まれ。ドイツ連邦議会議員(2005年〜),同盟90/緑の党・核政策代表,ドイツ・日本議員グループ議長(2014年〜),ドイツ環境・自然保全連盟,ドイツ地球の友,世界自然保護基金,アムネスティ・インターナショナル等の会員。
北澤宏一(きたざわ・こういち)
1943–2014年。東京都市大学前学長。東京大学名誉教授。専門は材料科学,高温超伝導研究。福島原発事故独立検証委員会委員長に就任し,2012年2月『調査・検証報告書』を発表。主な著書に,『科学技術は日本を救うのか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン,2010年),『日本は再生可能エネルギー大国になりうるか』(同,2012年)ほか。
アイリーン・美緒子・スミス(Aileen Mioko Smith)
1950年生まれ。1970年,ユージン・スミスのアシスタントとなり,その後結婚。水俣病取材のため3年間現地に滞在。75年アメリカで写真集『MINAMATA』をユージンと出版。80年,日本語版『水俣』(三一書房)を出版。現在は反原発NGO「グリーン・アクション」代表。URL: http://www.greenaction-japan.org/
書評掲載
「出版ニュース」(2016年10月中旬号)にて紹介されました。