戦時統制下の日本において戦争遂行のために推進された政策や運動はいかなる論理をもって展開され、人々の日々の営みと労働のありかたをいかに変えたのか。産業報国会に関する貴重な資料の調査プロジェクトを軸として、経済史・労働史・政治史・法制史・女性史・思想史の専門家らが、多様な文脈をふまえて総力戦体制を論じ、社会の構造的変化を明らかにする。
榎 一江(エノキ カズエ)
法政大学大原社会問題研究所教授。日本労働史専攻。著書に『近代製糸業の雇用と経営』(吉川弘文館、2008年)、共編書に『労務管理の生成と終焉』(日本経済評論社、2014年)がある。
※上記内容は本書刊行時のものです。序 章 戦時期の労働と生活をめぐって(榎 一江)
はじめに
一 戦時期研究に関する所蔵資料
二 本書の構成
おわりに
第一部 変容する国際環境と戦時日本
第一章 戦前期日本における「防共」概念の社会的意義と後景思潮(立本紘之)
はじめに
一 「掃共」時代の日本社会と思潮の変容
二 「防共」概念の登場とその意義
三 国際関係諸条件の変化と防共概念
四 防共の政治的死滅と後景思潮のその後
おわりに
第二章 産業報国運動は手段か目的か──鮎澤巌の視点から(松田 忍)
はじめに
一 ソーシャル・ダンピング問題とその反応
二 ソーシャル・ダンピング問題の記憶
三 国際労働機関への協力打ち切り
四 東京支局閉鎖直後の鮎澤巌
五 戦時期における鮎澤の研究対象
おわりに
第三章 産業報国会とドイツ労働戦線(DAF)──形成過程の比較と日本におけるDAFに対する認識(枡田大知彦)
はじめに
一 産報と労働組合についての幾つかの見解
二 同時代における産報とDAFとの比較
三 両大戦間期における労資(使)関係、労働組合(運動)の状況の比較
四 産報の指導者とDAFの指導者の出会い──「ナチス問答」
おわりに
第二部 変容する社会と戦時政策
第四章 戦時「人口政策」の水脈(金子良事)
はじめに
一 一九三〇年代前半における協調会
二 人口政策
おわりに
第五章 戦時期の労働科学(榎 一江)
はじめに
一 産業合理化と「労働科学研究所設置案」
二 日本学術振興会と日本労働科学研究所
三 大日本産業報国会と労働科学の展開
四 敗戦と労働科学研究所の再建
おわりに
第六章 戦時期の医師会関係議員と厚生行政──加藤鐐五郎を事例として(手塚雄太)
はじめに
一 戦時期の医師会と加藤
二 厚生省委員として──一九四二年六月~一九四三年五月
三 厚生省委員・翼政会厚生委員長として──一九四三年五月~一九四四年五月
おわりに
第七章 戦時期における女性労働政策の展開──総動員体制下の健康と賃金に焦点をあてて(堀川祐里)
はじめに
一 産業革命期から戦間期の女性労働者の健康状態
二 戦時期の女性労働政策の展開──女子挺身隊の動員と現員徴用
三 戦時期の女性労働者の健康と賃金
おわりに
第三部 変容する社会と戦時生活
第八章 戦時期の生活と「遵法運動」(出口雄一)
はじめに
一 戦時経済統制と「遵法運動」
二 「遵法運動」の展開と拡散
おわりに
第九章 昭和戦時期日本の国家財政と家計──貯蓄奨励の論理と構造(米山忠寛)
はじめに──分析対象と目的
一 「貯蓄奨励」と国民運動化──戦時経済の基本構造
二 生活改善・経済活動と錯綜する貯蓄奨励運動
三 政策知識の蓄積と展開──ケインズの「強制貯蓄」論
四 貯蓄と徴税活動──納税施設法
おわりに
第十章 パーマネント報国と木炭パーマ──なぜ戦時中にパーマネントは広がり続けたのか(飯田未希)
はじめに
一 パーマネント反対運動とその実効性
二 パーマネントの流行を可能にした物質的条件
三 電髪組合──「協力」と再定義
四 パーマネントから「木炭パーマ」へ──美容師・髪結と女性客の関係
おわりに
終 章 勤労イデオロギーに包摂される労働と生活(松田 忍)
索 引
はじめに
一 戦時期研究に関する所蔵資料
二 本書の構成
おわりに
第一部 変容する国際環境と戦時日本
第一章 戦前期日本における「防共」概念の社会的意義と後景思潮(立本紘之)
はじめに
一 「掃共」時代の日本社会と思潮の変容
二 「防共」概念の登場とその意義
三 国際関係諸条件の変化と防共概念
四 防共の政治的死滅と後景思潮のその後
おわりに
第二章 産業報国運動は手段か目的か──鮎澤巌の視点から(松田 忍)
はじめに
一 ソーシャル・ダンピング問題とその反応
二 ソーシャル・ダンピング問題の記憶
三 国際労働機関への協力打ち切り
四 東京支局閉鎖直後の鮎澤巌
五 戦時期における鮎澤の研究対象
おわりに
第三章 産業報国会とドイツ労働戦線(DAF)──形成過程の比較と日本におけるDAFに対する認識(枡田大知彦)
はじめに
一 産報と労働組合についての幾つかの見解
二 同時代における産報とDAFとの比較
三 両大戦間期における労資(使)関係、労働組合(運動)の状況の比較
四 産報の指導者とDAFの指導者の出会い──「ナチス問答」
おわりに
第二部 変容する社会と戦時政策
第四章 戦時「人口政策」の水脈(金子良事)
はじめに
一 一九三〇年代前半における協調会
二 人口政策
おわりに
第五章 戦時期の労働科学(榎 一江)
はじめに
一 産業合理化と「労働科学研究所設置案」
二 日本学術振興会と日本労働科学研究所
三 大日本産業報国会と労働科学の展開
四 敗戦と労働科学研究所の再建
おわりに
第六章 戦時期の医師会関係議員と厚生行政──加藤鐐五郎を事例として(手塚雄太)
はじめに
一 戦時期の医師会と加藤
二 厚生省委員として──一九四二年六月~一九四三年五月
三 厚生省委員・翼政会厚生委員長として──一九四三年五月~一九四四年五月
おわりに
第七章 戦時期における女性労働政策の展開──総動員体制下の健康と賃金に焦点をあてて(堀川祐里)
はじめに
一 産業革命期から戦間期の女性労働者の健康状態
二 戦時期の女性労働政策の展開──女子挺身隊の動員と現員徴用
三 戦時期の女性労働者の健康と賃金
おわりに
第三部 変容する社会と戦時生活
第八章 戦時期の生活と「遵法運動」(出口雄一)
はじめに
一 戦時経済統制と「遵法運動」
二 「遵法運動」の展開と拡散
おわりに
第九章 昭和戦時期日本の国家財政と家計──貯蓄奨励の論理と構造(米山忠寛)
はじめに──分析対象と目的
一 「貯蓄奨励」と国民運動化──戦時経済の基本構造
二 生活改善・経済活動と錯綜する貯蓄奨励運動
三 政策知識の蓄積と展開──ケインズの「強制貯蓄」論
四 貯蓄と徴税活動──納税施設法
おわりに
第十章 パーマネント報国と木炭パーマ──なぜ戦時中にパーマネントは広がり続けたのか(飯田未希)
はじめに
一 パーマネント反対運動とその実効性
二 パーマネントの流行を可能にした物質的条件
三 電髪組合──「協力」と再定義
四 パーマネントから「木炭パーマ」へ──美容師・髪結と女性客の関係
おわりに
終 章 勤労イデオロギーに包摂される労働と生活(松田 忍)
索 引
書評掲載
「大原社会問題研究所雑誌」(722号、2018年12月号/官田光史氏・評)に紹介されました。