哲学のアンガジュマン
サルトルと共に問う暴力、非理性、デモクラシー

A5判 / 412ページ / 上製 / 価格 5,060円 (消費税 460円) 
ISBN978-4-588-15143-9 C1010 [2025年03月 刊行]

内容紹介

哲学は現代世界が抱える深刻な課題にいかに建設的に関与しうるのか。デモクラシーの危機、社会の分断と格差、戦争、無数の形を取る暴力などに立ち向かうために、ギリシャ哲学やデカルト、パスカルと関連づけながらサルトル哲学の最も根本にある存在論と、そこから発展した暴力論を考察する。ポピュリズムやウクライナ戦争、パレスチナ問題を考えるとき、サルトルから新たに見えてくるものは何か。心理学、経済学、国際政治学など他領域の知との接点も探りながら、いまデモクラシーの担い手にとっていかに哲学的アンガジュマンの再挑戦が可能かを探る。

著訳者プロフィール

生方 淳子(ウブカタ アツコ)

生方 淳子(ウブカタ アツコ)
1957年、群馬県生まれ。1980年、青山学院大学文学部卒業。1983年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1996年、パリ第1(パンテオン゠ソルボンヌ)大学博士課程修了。哲学博士。国士舘大学教授。著書に、『戦場の哲学――『存在と無』に見るサルトルのレジスタンス』(単著、法政大学出版局、2020年)、『サルトル読本』(共著、法政大学出版局、2015年)、『子どもの暮らしの安全・安心~命の教育へ』(共著、金子書房、2010年)、『サルトル、21世紀の思想家』(共著、思潮社、2007年)、『死の人間学』(共著、金子書房、2007年)、訳書に、クロード・ランズマン編『レ・タン・モデルヌ50周年記念号』(共訳、緑風出版、1998年)、『交差する科学知』(共訳、ユニテ、1987年)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例
出典の表記

序章
 1.哲学とアンガジュマン
 2.前著とのつながりと本書の展望
 3.学術書として用いる方法、導入する視点、新たな発見
 4.哲学の問いの時代性と普遍性
 5.社会科学と人工知能と哲学

第一部 コギトの変成――デカルト的合理・パスカル的悲惨とサルトル的コギト
プロローグ――デモクラシーは蜃気楼なのか
第一章 サルトルによるコギトの再造形
 1.前反省的コギト
 2.拡張コギト
 3.脱同一性コギト
第二章 サルトル的コギトの迷走と受難
 1.自由の刑
 2.「神になりたい」とは
エピローグ――自己決定するデモクラシーの条件

第二部 狂気の現象学――さかさまのデカルトたち
プロローグ――理性とその外部
第一章 心理学と精神医学
 1.精神病院訪問
 2.引きこもるピエールと想像力論
第二章 『アルトナの幽閉者』における狂気と引きこもり
 1.「人間ではない」
 2.類似したドイツの戯曲
 3.戯曲としての三層構造と狂気の出現
 4.父親という問題
エピローグ――非理性における意識

第三部 暴力の発生論――何が不戦・非暴力を阻むのか
プロローグ
 1.サルトルは暴力を礼賛しているのか
 2.サルトルは本気でいっしょに怒ってくれた
第一章 サルトル哲学における暴力への問い
 1.学生時代の論文――戦争を避けるための国家理論の素描
 2.遺稿『道徳論ノート』における暴力論の位置
第二章 不戦・非暴力を阻むもの
 1.平和主義への疑問
 2.「戦争状態」の直視
第三章 恒久平和の可能性の条件
 1.哲学者の「甘い夢」
 2.戦争の抑止、合意形成の可能性
エピローグ
 1.専門的知見と哲学的言語
 2.私たちの言葉と文化

終章
 1.本論の振り返り
 2.私たちの時代
 3.「暴力学」の可能性
 4.とりあえずの平和
 5.まさかの戦争
 6.パレスチナの人々
 7.「サルトルの民」の今
 8.哲学のアンガジュマンと哲学的アンガジュマン

あとがき

文献目録
索引