日本の近代は東アジア諸地域の侵略と不可分だった。しかし「満洲国」をはじめ植民地で刊行された書籍や雑誌は歴史のなかで散逸し、研究文献資料はいまだ不完全なものに留まっている。2021年に逝去した著者は、その忘却を埋めるべく植民地文化学会を創設、国内外の作家・研究者との協働のもと、知られざる「満洲文学」の実態を明らかにしてきた。本書は、30年以上をかけたその畢生の仕事である。
西田 勝(ニシダ マサル)
1928年、静岡県に生まれる。1953年、東京大学文学部卒業、法政大学文学部教授を経て、〈西田勝・平和研究室〉主宰、植民地文化学会代表理事を務める。2021年7月没。主要著書に『田岡嶺雲論集成』『グローカル的思考』『近代日本の戦争と文学』『近代文学の発掘』(以上、法政大学出版局)、『社会としての自分』(オリジン出版センター)、『近代文学閑談』(三一書房)、『私の反核日記』(日本図書センター)、編訳書に『田岡嶺雲全集』全7巻、呂元明『中国語で残された日本文学』、鄭清文『丘蟻一族』、葉石涛『台湾男子簡阿淘』、黄春明『黄春明選集 溺死した老猫』(以上、法政大学出版局)、ゴードン・C. べネット『アメリカ非核自治体物語』(筑摩書房)、『世界の平和博物館』(日本図書センター)、『《満洲国》文化細目』(共編、不二出版)、『中国農民が証す《満洲開拓》の実相』(共編、小学館)などがある。
※上記内容は本書刊行時のものです。はじめに
I 「満洲国」成立以前
「満洲国」に夢を紡ぐ 藤山一雄の『群像らをこをん』
海を渡ったプロレタリア文学
「満洲文話会」とは何であったか
プロレタリア詩誌『燕人街』の登場
Ⅱ 「満洲国」成立後
ある転向文学者の軌跡 島田和夫から上野市三郎へ
「満洲国」における芸術的抵抗の一例
加納三郎の「戦略」
北尾陽三の場合
詩人野川隆の到達点
逮捕寸前の野川隆
内在的批判者としての秋原勝二
朝鮮人作家今村栄治の内心の世界 「満洲文学」の傑作 「同行者」と「新胎」
内地文学者の訪「満」
佐多稲子のハルピン訪問
小林秀雄 文化工作者として
「満洲国」文学第二世代作家としての加藤秀造
「満洲国」における「米英撃滅詩」
ファシストと文学 甘粕正彦の「樋口一葉の日記」
Ⅲ 中国人作家の回想録
「郷土文学」論争から大東亜文学者大会まで(梁山丁)
二人の女性作家─蕭紅と呉瑛(梁山丁)
雑誌『明明』の回想(疑遅)
私と文学(陳隄)
逮捕入獄から解放まで(関沫南)
Ⅳ 「満洲国」のメディア断面
大内隆雄と『新京日日新聞』
『満洲行政』文芸欄を読む
『満洲経済』文化系記事を読む
地方文学雑誌としての『大吉林』
「満洲国」におけるフェミニズム 『大新京日報』の連続コラム「婦人の立場から」
初出一覧
あとがきにかえて(谷本澄子)
I 「満洲国」成立以前
「満洲国」に夢を紡ぐ 藤山一雄の『群像らをこをん』
海を渡ったプロレタリア文学
「満洲文話会」とは何であったか
プロレタリア詩誌『燕人街』の登場
Ⅱ 「満洲国」成立後
ある転向文学者の軌跡 島田和夫から上野市三郎へ
「満洲国」における芸術的抵抗の一例
加納三郎の「戦略」
北尾陽三の場合
詩人野川隆の到達点
逮捕寸前の野川隆
内在的批判者としての秋原勝二
朝鮮人作家今村栄治の内心の世界 「満洲文学」の傑作 「同行者」と「新胎」
内地文学者の訪「満」
佐多稲子のハルピン訪問
小林秀雄 文化工作者として
「満洲国」文学第二世代作家としての加藤秀造
「満洲国」における「米英撃滅詩」
ファシストと文学 甘粕正彦の「樋口一葉の日記」
Ⅲ 中国人作家の回想録
「郷土文学」論争から大東亜文学者大会まで(梁山丁)
二人の女性作家─蕭紅と呉瑛(梁山丁)
雑誌『明明』の回想(疑遅)
私と文学(陳隄)
逮捕入獄から解放まで(関沫南)
Ⅳ 「満洲国」のメディア断面
大内隆雄と『新京日日新聞』
『満洲行政』文芸欄を読む
『満洲経済』文化系記事を読む
地方文学雑誌としての『大吉林』
「満洲国」におけるフェミニズム 『大新京日報』の連続コラム「婦人の立場から」
初出一覧
あとがきにかえて(谷本澄子)
書評掲載
「下野新聞」(2022年07月31日付)に紹介されました。
「熊本日日新聞」(2022年07月31日付)に紹介されました。
「福島民友」(2022年08月06日付)に紹介されました。
「信濃毎日新聞」(2022年08月06日付)に紹介されました。
「日本海新聞」(2022年08月07日付)に紹介されました。
「長崎新聞」(2022年08月07日付)に紹介されました。
「図書新聞」(2022年10月22日号/大久保明男氏・評)に紹介されました。