サピエンティア 52
ロシアの愛国主義
プーチンが進める国民統合

四六判 / 346ページ / 上製 / 価格 3,960円 (消費税 360円) 
ISBN978-4-588-60352-5 C3331 [2018年04月 刊行]

内容紹介

ソ連体制が崩壊したことで旧ユーゴなど共産圏では独立や分裂、民族紛争が相次いだ。2000年代にはグルジアやウクライナで権威主義的政権が市民の手で倒れた。次はロシアかと危惧されるなか、多様な民族をまとめ、失われた超大国の自信を取り戻そうと、プーチンは共産主義にかわる新たな理念として愛国主義を打ち出す。独ソ戦における勝利など国の偉業や伝統を称え、次世代に伝える政策の現状と課題を考察する。

著訳者プロフィール

西山 美久(ニシヤマ ヨシヒサ)

1985年長崎県生まれ。九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程単位修得退学。博士(比較社会文化,九州大学,2016年)。サンクトペテルブルグ国立大学留学,日本学術振興会特別研究員(DC2),筑紫女学園大学,北九州市立大学,長崎県立大学の非常勤講師を務める。
主な業績に,「プーチン政権下における「愛国主義」政策の変遷――「カラー革命」と青年層」『ロシア・東欧研究』第39号,2011年,82-92頁(第2回ロシア・東欧学会研究奨励賞受賞),「プーチン期における「愛国主義」政策の形成過程――連邦構成主体からのイニシアティヴに着目して」『政治研究』九州大学政治研究会,第60号,2013年,239-273頁,「現代ロシアの「愛国主義」と戦勝記念――名誉称号「軍事栄光都市」に着目して」『ロシア・ユーラシアの経済と社会』第1001号(2016年2月号),19-33頁など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 国家の崩壊と構築
第一節 統合理念の模索
第二節 統合理念としての愛国主義
第三節 先行研究とその問題点
第四節 資料について
第五節 本書の構成

第一章 プーチン政権の思惑
第一節 エリツィン政権と愛国主義
第二節 精神的紐帯としての愛国心
第三節 愛国主義の制度化

第二章 連邦構成主体の取り組み
第一節 地方に着目する意義
第二節 「赤いベルト」地帯
第三節 連邦中央の対応
第四節 ヴォルゴグラード市議会の判断

第三章 戦勝記念のダイナミズム
第一節 ソ連における戦勝と顕彰
第二節 「軍事栄光都市」創設に至るまで
第三節 「軍事栄光都市」の決定

第四章 民族共和国の動向──タタルスタンと連邦中央
第一節 民族共和国に着目する意義
第二節 ソ連崩壊とタタルスタン
第三節 タタルスタン共和国の愛国主義
第四節 民族文化の普及とその反動

第五章 青年層の台頭と政策の転換
第一節 ロシアと「カラー革命」
第二節 ロシアの若者たちの反応
第三節 愛国心の育成

第六章 官製青年組織の設立
第一節 青年組織「共に歩む」の設立
第二節 青年政策の転換
第三節 下院選挙に向けた政治運動

第七章 ナーシの再編
第一節 「反カラー革命」から「経済の近代化」へ
第二節 経済近代化と過去の遺産の狭間
第三節 愛国主義政策の再転換
第四節 ナーシの解散

終章 ロシアの愛国主義
第一節 愛国主義の特徴
第二節 国民統合の行方
第三節 愛国主義政策の現在
第四節 残された課題

初出一覧
あとがき
参考文献・索引

書評掲載

「日本経済新聞」(2018年6月9日付)に紹介されました。

「出版ニュース」(2018年6月下旬号)に紹介されました。

「図書新聞」(2018年11月10日付/山本健三氏・評)に紹介されました。

「現代ビジネス」(2019年3月14日付)に紹介されました。

「アジア経済」(第60巻第1号、2019年3月/中村裕氏・評)に紹介されました。

関連書籍

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