20世紀初頭、イギリスでは救貧の考え方に則らない新たな社会保障制度が創設された。本書はこの老齢年金、国民健康保険、失業保険の3つの制度を取り上げ、公助を再定位した福祉再編の歴史的過程を考察する。自立的生活の基盤が脆弱で支援が必要だとされるリスペクタブルな貧者は、どのように社会問題化し、また社会権付与の対象を制限したのか。現代の社会福祉政策にいたる前史を追う。
山本 卓(ヤマモト タク)
1975年生まれ。法政大学法学部と立教大学大学院法学研究科で政治学を専攻。博士(政治学)。立教大学法学部助手・助教・特任准教授を経て,現在,法政大学法学部政治学科教授。専門は,イギリス社会政策・福祉国家史。主な論文に「1930-40年代の英国優生学協会とティトマス――福祉国家における統合と排除」(『思想』2009年6月号)や「R. M. ティトマスにおける戦争と福祉――『戦争と社会政策』再考」(『年報政治学』2007年58巻1号)などがある。また,共著に,『福祉国家の経済思想――自由と統制の統合』(小峯敦編,ナカニシヤ出版,2006年),『政治の発見 第6巻 伝える』(川崎修編,風行社,2012年),『多元主義と多文化主義の間――現代イギリス政治思想史研究』(佐藤正志/ポール・ケリー編,早稲田大学出版部,2013年),『岩波講座 政治哲学 第3巻 近代の変容』(宇野重規ほか編,岩波書店,2014年)などがある。
※上記内容は本書刊行時のものです。はしがき
第一章 リスペクタビリティ・階層・福祉:リスペクタビリティの政治と福祉再編
第一節 リスペクタブル社会の出現
第二節 リスペクタビリティと貧困
第三節 リスペクタビリティの政治
第四節 社会主義・急進主義・ニューリベラリズム
第二章 「援助に値する」失業者と慈善: 失業対策分野における慈善組織化協会
はじめに
第一節 「援助に値する」「リスペクタブルな」失業者の社会問題化
第二節 「無差別な救済」と慈善組織化運動
第三節 失業対策分野におけるCOS式ケースワークと「社会主義」
小括
第三章 「新労働組合主義」と最低生活保障:非熟練臨時労働者の貧困問題
はじめに
第一節 港湾労働者による争議行為の成功とその社会的基盤
第二節 最低生活保障の理論
第三節 ナショナル・ミニマム――ウェッブ夫妻の『産業民主主義』
小括
第四章 支援・援助に値する高齢貧困者: 「普遍的」老齢年金制度案と1908年老齢年金法
はじめに
第一節 「支援・援助に値する高齢貧困者」と公的老齢年金
第二節 「普遍的」老齢年金制度案の社会政策観
第三節 老齢年金法案の形成
小括
第五章 社会改革の思想:ニューリベラリズムとフェビアン社会主義
はじめに
第一節 ホブハウスのフェビアン社会主義批判
第二節 フェビアン社会主義
第三節 ホブハウスの自由主義的社会主義
小括
第六章 1911年国民保険法:健康保険制度と失業保険制度
はじめに
第一節 国民保険法の成立
第二節 国民健康保険
第三節 失業保険制度
小括
あとがき
文献一覧
人名索引・事項索引
第一章 リスペクタビリティ・階層・福祉:リスペクタビリティの政治と福祉再編
第一節 リスペクタブル社会の出現
第二節 リスペクタビリティと貧困
第三節 リスペクタビリティの政治
第四節 社会主義・急進主義・ニューリベラリズム
第二章 「援助に値する」失業者と慈善: 失業対策分野における慈善組織化協会
はじめに
第一節 「援助に値する」「リスペクタブルな」失業者の社会問題化
第二節 「無差別な救済」と慈善組織化運動
第三節 失業対策分野におけるCOS式ケースワークと「社会主義」
小括
第三章 「新労働組合主義」と最低生活保障:非熟練臨時労働者の貧困問題
はじめに
第一節 港湾労働者による争議行為の成功とその社会的基盤
第二節 最低生活保障の理論
第三節 ナショナル・ミニマム――ウェッブ夫妻の『産業民主主義』
小括
第四章 支援・援助に値する高齢貧困者: 「普遍的」老齢年金制度案と1908年老齢年金法
はじめに
第一節 「支援・援助に値する高齢貧困者」と公的老齢年金
第二節 「普遍的」老齢年金制度案の社会政策観
第三節 老齢年金法案の形成
小括
第五章 社会改革の思想:ニューリベラリズムとフェビアン社会主義
はじめに
第一節 ホブハウスのフェビアン社会主義批判
第二節 フェビアン社会主義
第三節 ホブハウスの自由主義的社会主義
小括
第六章 1911年国民保険法:健康保険制度と失業保険制度
はじめに
第一節 国民保険法の成立
第二節 国民健康保険
第三節 失業保険制度
小括
あとがき
文献一覧
人名索引・事項索引
書評掲載
「図書新聞」(2021年07月03日号/岡村東洋光氏・評)に紹介されました。
「大原社会問題研究所雑誌」(2022年10月号、No.767・768、2022年10年01日発行/金澤周作氏・評)に紹介されました。