法政大学大原社会問題研究所叢書
世界のベーシックインカム運動
歴史・現状・展望

A5判 / 464ページ / 上製 / 価格 6,380円 (消費税 580円) 
ISBN978-4-588-62556-5 C1330 [2026年04月 刊行]

内容紹介

人類はそんなに貧しいのか? なぜ分かち合えないのか? これまで社会政策上の問題としてのみ議論されてきたベーシックインカム運動を、社会システムの転換を求める運動としてとらえる試み。18世紀イングランドに生まれイラン、カナダ、アイルランド、スペイン、ブラジル、南アフリカ、ナミビア、トルコ、そして台湾、韓国へと波及したベーシックインカム運動の理論と実践およびグローバルな連帯を論じる。

岡野内 正(オカノウチ タダシ)

岡野内 正(オカノウチ タダシ)
法政大学社会学部教授。専門は社会理論、国際政治経済学。著書『グローバル・ベーシック・インカム構想の射程──批判開発学/SDGsとの対話』(法律文化社、2021年)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき──人類はそんなに貧しいのか? なぜ分かち合えないのか?(岡野内 正)

第1編 歴史

第1章 18世紀末イングランドにおけるベーシックインカム運動の生誕──トマス・スペンスによる総有財産権拡充・地代収入均等配分・地主階級廃絶運動(岡野内 正)
第2章 資本主義と共に越境するベーシックインカム運動──19世紀前半のスペンス主義者と奴隷解放運動(中村理玄)
コラム1 戦間期イギリスにおけるベーシックインカム論の意義──イギリス福祉国家の陰画(永嶋信二郎)
第3章 イギリス労働者階級の女性解放運動とベーシックインカム(山森 亮)
コラム2 ケアインカムの要求──「家事労働に賃金を」から「グローバルな女たちのストライキ」へ(堅田香緒里)
第4章 先住民族運動と入植者民主主義運動との交差──1970年代アラスカに生まれた二つのベーシックインカム的制度(岡野内 正)
第5章 イランにおけるUBI制度の導入と失敗──その政治経済学的な背景と社会運動との関係性(ケイワン・アブドリ)
コラム3 イランにおけるUBI研究の動向(ケイワン・アブドリ)
第6章 モンゴル国における人間開発基金──資源国家におけるベーシックインカムの構想と崩壊(小林秀高)

第2編 現状

第7章 連邦制民主主義国家における貧困撲滅運動と州政府の模索──カナダにおけるベーシックインカム運動(田中俊弘)
コラム4 アメリカのベーシックインカム(本田浩邦)
第8章 新自由主義経済政策が生み出した社会的緊張への政治的応答──グレートブリテン、北アイルランド、アイルランド(南野泰義)
第9章 スペインにみる最低所得保障の政治──急進左派とカタルーニャに揺れた10年(中島晶子)
コラム5 イベリア半島におけるベーシックインカム──普遍的社会権と領域的主権(横田正顕)
コラム6 フランスの働くことと休むこと、そしてベーシックインカム(中筋直哉)
コラム7 ドイツ政党政治におけるベーシックインカム(小野 一)
コラム8 ドイツチケット──移動の自由の保障としてのベーシックインカム?(中田 潤)
第10章 ポスト軍事独裁の連邦制国家における生存権保障の連帯経済運動──ブラジルにおけるベーシックインカム運動(山崎圭一)
第11章 南アフリカとナミビアにおけるベーシックインカム運動の軌跡と現在地(牧野久美子)
第12章 トルコにおける公正発展党の社会保障──社会保障政策の裏にある政治的含意(今井宏平)
コラム9 中東・北アフリカ諸国における社会保障とベーシックインカム(河村有介)
第13章 ポピュリズムの誘惑にどう抗するか──台湾におけるベーシックインカムをめぐる運動と政治(本田親史)
第14章 冷戦継続国家における民主化運動の模索──韓国におけるベーシックインカム運動(朴峻喜)
第15章 韓国のベーシックインカム運動──運動当事者による回顧と展望(安孝祥/影本 剛 訳)
コラム10 韓国・現金給付の周辺事情──史的経緯、ジェンダー、そして24歳・青年のいま(金早雪)
コラム11 韓国での極右胎動とベーシックインカムの行方(文京洙)
コラム12 中国式“紅包”──マカオの「カジノ分配金」、「デジタル人民元」実験のおまけ給付(大崎雄二)
コラム13 日本でのベーシックインカム市民読書会の議論から(佐藤一臣・猪俣範一)
コラム14 途上国支援の半生からの地球市民への精神的覚醒へ──グローバル・ベーシックインカム/「ネイバークラシー」運動へ(則包佳啓)

第3編 展望

第16章 国連主導ベーシックインカムへの模索──BIENの方針転換と人類史的危機において存在意義を問われる国連(岡野内 正)
コラム15 グローバル・タックス実現に向けた市民運動(上村雄彦)
コラム16 マイクロファイナンスの変遷が示唆するもの──ベーシックインカム運動へのある提言(鰐部行崇)
コラム17 グローバル化時代におけるヒトの移動とベーシックインカム──「フラット化」と「国内格差化」対策としての模索(安井裕司)
コラム18 UBIとグローバルサウスのシナジー──グローバルサウスから構想するベーシックインカム(松下 冽)
コラム19 熟議民主主義とベーシックインカム(田村哲樹)
コラム20 グローバルな正義とベーシックインカム(山田祥子)

あとがき(岡野内 正)

執筆者紹介(執筆順)

中村 理玄(ナカムラ ノリハル)
法政大学社会学部兼任講師、大原社会問題研究所客員研究員。専門は社会学、ラテンアメリカ研究。論文「グローバルな略奪とワナとして国民国家──ベネズエラからの視角」(『アジア・アフリカ研究』第63巻第4号、2023年)ほか。

永嶋 信二郎(ナガシマ シンジロウ)
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科教授。専門は社会保障論。共著『創設期の厚生経済学と福祉国家』(ミネルヴァ書房、2013年)ほか。

山森 亮(ヤマモリ トオル)
同志社大学経済学部教授。専門は経済思想、社会政策。著書『忘れられたアダム・スミス──経済学は必要をどのように扱ってきたか』(勁草書房、2024年)ほか。

堅田 香緒里(カタダ カオリ)
法政大学社会学部教員。専門は社会福祉学・福祉社会学。著書『生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義』(タバブックス、2021年)ほか。

ケイワン・アブドリ(Keivan Abdoly)
神奈川大学非常勤講師。専門はイラン経済。論文「イランにおける企業発展の歴史と現状──「国家資本主義」と「権威主義」の狭間で」(山本博史編『アジアにおける民主主義と経済発展』文真堂、2019年所収)ほか。

小林 秀高(コバヤシ ヒデタカ)
拓殖大学北海道短期大学教授。専門は政治学・比較政治学。論文「モンゴル国における政治制度の特徴──議会選挙と大統領選挙の考察から」(『政治・経済・法律研究』(第22巻第2号、2020年)ほか。

田中 俊弘(タナカ トシヒロ)
麗澤大学外国語学部教授。専門はカナダ研究。共編著『カナダ文化事典』(丸善出版、2026年)ほか。

本田 浩邦(ホンダ ヒロクニ)
獨協大学経済学部教授。専門は現代アメリカ経済。著書『アメリカ 危機の省察』(大月書店、2025年)ほか。

南野 泰義(ミナミノ ヤスヨシ)
立命館大学国際関係学部教授。専門は比較政治学。著書『北アイルランド政治論──政治的暴力とナショナリズム』(有信堂高文社、2017年)ほか。

中島 晶子(ナカジマ アキコ)
東洋大学国際学部准教授。専門は比較政治学。著書『南欧福祉国家スペインの形成と変容──家族主義という福祉レジーム』(ミネルヴァ書房、2012年)ほか。

横田 正顕(ヨコタ マサアキ)
東北大学大学院法学研究科教授。専門は比較政治学。編著『財政規律の比較政治経済学──制度的安定性、柔軟性、包摂性』(有斐閣、2026年)ほか。

中筋 直哉(ナカスジ ナオヤ)
法政大学社会学部教授。専門は都市社会学。論文「都市社会学のコミュニティ論」(吉原直樹編『都市とモビリティーズ』ミネルヴァ書房、2023年所収)ほか。

小野 一(オノ ハジメ)
工学院大学教育推進機構教授。専門は現代ドイツ政治。著書『緑の党──運動・思想・政党の歴史』(講談社、2014年)ほか。

中田 潤(ナカタ ジュン)
茨城大学人文社会科学部教授。専門はヨーロッパ(主としてドイツ)現代史。著書『ドイツ「緑の党」史──価値保守主義・左派オルタナティブ・協同主義的市民社会』(吉田書店、2023年)ほか。

山崎 圭一(ヤマザキ ケイイチ)
横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授。専門はブラジル経済、途上国経済。著書『進化する政治経済学──途上国経済研究ノート』(レイライン、2013年)ほか。

牧野 久美子(マキノ クミコ)
ジェトロ・アジア経済研究所主任調査研究員。専門は南アフリカの現代政治と国際関係。共編著『新興諸国の現金給付政策──アイディア・言説の視点から』(アジア経済研究所、2015年)ほか。

今井 宏平(イマイ コウヘイ)
ジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター中東・南アジア研究グループ副主任調査研究員。専門は現代トルコの政治と外交。著書『戦略的ヘッジングと安全保障の追求──2010年代以降のトルコ外交』(有信堂、2023年)ほか。

河村 有介(カワムラ ユウスケ)
神戸大学大学院国際協力研究科准教授。専門は中東・北アフリカ諸国の社会保障。著書『アラブ権威主義国家における再分配の政治──エジプト福祉レジームの変容と経路依存性』(ミネルヴァ書房、2017年)ほか。

本田 親史(ホンダ チカフミ)
明治大学、法政大学、神奈川大学兼任・非常勤講師。専門は東アジア社会研究。論文「新自由主義の誘惑にどう抗するか──台湾におけるベーシックインカム諸動向の初歩的検討」(『大原社会問題研究所雑誌』NO. 788、2024年)ほか。

朴峻喜(パク ジュンヒ)
同志社大学社会学部産業関係学科助教。専門は労使関係論。論文「労働運動と大学生の連帯──2013年韓国鉄道組合ストの事例から」(『社会政策』第13巻第3号、2022年)ほか。

安孝祥(アン ヒョサン)
ベーシックインカム韓国ネットワーク事務局長、議長などを経て現役員。ベーシックインカム研究所所長。

影本 剛(カゲモト ツヨシ)
大学非常勤講師。専門は朝鮮文学。著書『近代朝鮮文学と民衆──三・一運動、プロレタリア、移民、動員』(春風社、2024年)ほか。

金早雪(キム チョソル)
大阪商業大学教授。専門はアジア経済。著書『韓国・福祉改革のダイナミズム──「人間らしい生活」を保障するために』(御茶の水書房、2023年)ほか。

文京洙(ムン ギョンス)
立命館大学名誉教授。専門は政治学、韓国現代史。主要著書『新・韓国現代史』(岩波新書、2015年)ほか。

大崎 雄二(オオサキ ユウジ)
法政大学社会学部教員。専門は東アジア地域研究。論文「中国共産党100年史 融通無碍な一党支配体制」(『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版、2021年1月19日号)ほか。

猪俣 範一(イノマタ ノリカズ)
NPO法人「市民発のベーシックインカム・サービスの実現を考える会」理事長、日本ベーシックインカム学会会員。著書『国民の国民による国民のための憲法改正』(日本地域社会研究所、2020年)ほか。茨城在住。

佐藤 一臣(サトウ カズオミ)
NPO法人「市民発のベーシックインカム・サービスの実現を考える会」副理事長。著書『通知表に1がある高校生を半年で大学に合格させた塾が教える3つの大切なこと』(ファクトリー出版、2018年)。2025年9月より東京から沖縄へ移住。

則包 佳啓(ノリカネ ヨシヒロ)
国際機関、日本大使館、JICA、国際開発コンサルタント会社、NGOなどで国際協力業務に従事し、現在はフリーランス。訳書にサラット・ダヴァラ「ベーシックインカム──危機に瀕している世界への変革的アイデア」(『生活協同組合研究』vol. 547、2021年)ほか。

上村 雄彦(ウエムラ タケヒコ)
横浜市立大学国際教養学部教授。専門はグローバル政治論。編著『グローバル・タックスの理論と実践──主権国家体制の限界を超えて』(日本評論社、2019年)ほか

鰐部 行崇(ワニベ ユキタカ)
法政大学非常勤講師。専門は連帯経済、新自由主義、市民社会組織。論文「マイクロファイナンスが引き起こす社会問題──バングラデシュ・BRACの活動の歴史を手掛かりに」(『社会志林』第71巻第4号、2025年)ほか。

安井 裕司(ヤスイ ヒロシ)
駒沢女子大学教授。専門は多文化共生。論文「グローバリゼーションと『格差』──二極化、可視化、社会的包摂」(『経営者育成の経営学』櫻門書房、2015年所収)ほか。

松下 冽(マツシタ キヨシ)
立命館大学名誉教授。専門はラテンアメリカを中心とする国際政治学。著書『グローバル・サウスにおける重層的ガヴァナンス構築──参加・民主主義・社会運動』(ミネルヴァ書房、2012年)ほか。

田村 哲樹(タムラ テツキ)
名古屋大学大学院法学研究科教授。専門は政治学、政治理論。著書『熟議民主主義の困難──その乗り越え方の政治理論的考察』(ナカニシヤ出版、2017年)ほか。

山田 祥子(ヤマダ ショウコ)
日本学術振興会特別研究員/早稲田大学政治経済学術院次席研究員。専門は政治哲学。著書『グローバルな正義と民主主義──実践に基づいた正義論の構想』(勁草書房、2022年)ほか。

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