小局からのお知らせ

「第7回 法政大学出版局学術図書刊行助成」
選考結果のお知らせ

法政大学出版局では、2014年より「法政大学出版局学術図書刊行助成制度」を設け、全国の各大学在職の研究者および民間研究者を対象に、優れた学術的価値を有する専門的研究成果の募集を行っております。

2020年も、春に第7回目の募集を行い、局内および小局理事会における厳正な審査と、外部の審査員による評価を経て、本年度は下記の2点の論文作品を刊行助成対象とすることに決定いたしました。

(1)
著者:藤本大士 氏
論文:『近代日本におけるアメリカ人医療宜教師の活動──ミッション病院の事業とその協力者たち』

《選考理由》
「近代日本史においてこれまで主要なトピックとしては扱われてこなかった、キリスト教プロテスタント諸派の医療宣教活動の実態にせまる貴重な研究。その通史的で網羅的な検討をつうじて、非ドイツ系(おもに米英)の医学教育、女性医師の育成、看護教育、公衆衛生活動などの展開をめぐる包括的な理解に貢献している。おもに医療宣教諸団体側の史料に依拠しているため、当時の日本社会(政府・エリートのみならず、一般の医療従事者や庶民)の側から当該の活動がどのように認識され、どのような緊張関係を生んでいたかについての本格的な分析はいまだ手薄いかもしれないが、本研究を足がかりに今後さらに研究が進展することが期待される。幕末から明治にかけて活躍したヘボン、現在にまで続く救世軍、そして聖路加国際病院などは、一般的にもその名が広く知られている。こうした人々や病院の歴史をめぐる知見は、コロナ禍による公衆衛生への関心の高まりのなか、社会的に非常に有益なものと思われる。」

(2)
著者:梅田孝太 氏
論文:『外なき内の哲学──ニーチェの夢・自由・意志』

《選考理由》
「ニーチェ哲学の根幹を「生の肯定の思想」として捉え、前期(夢)・中期(自由)・後期(意志)すべてに通ずる核心的な思想として論証していく。先行する諸研究が、ニーチェの特定の時期や遺稿などの文献にやや偏って依拠しがちであるのに対し、著者は公刊著作全体をバランスよく見渡してニーチェ作品を読み解いており、非専門家にも分かりやすい明快な文章の運びがそこに説得力を与えている。ニーチェ哲学の主張が「生の肯定」にあるという解釈は、当然ながらすでに繰り返し言われてきていることであるが、超越や彼岸や天上といった「外」のない世界で、歴史的な現象としてのニヒリズムや「弱さ」と向き合わざるをえない現代人の「健康」をめぐって、哲学が提供しうるセラピーについても積極的な知見をもたらしてくれる好著である。」

書籍としての刊行は、2021年春〜夏を予定しております。
このほか、多数の力作論考や翻訳のご応募をいただきましたが、残念ながら今回はご期待に添うことができませんでした。ご応募いただきましたすべての皆さまに、心より感謝を申し上げます。
なお、次年度以降も引きつづき、本「刊行助成制度」を実施してまいります。2021年3月下旬以降に、当ウェブサイト上にて詳細を告知する予定ですので(締め切りは5月末)、積極的なご応募をお待ちしております。

2020年10月12日 一般財団法人 法政大学出版局