広島、長崎、第五福竜丸、そして、福島──われわれはいま何を考えるべきか? 日本で反核運動に参加したアンダースは、「日本では原子力時代はすでに〈経験〉になっている」と語った。われわれは自らのこの生きた経験から、核の脅威を、核兵器使用や原子力発電の問題にとどめず、いまあらたに世界全体を巻き込んでいる全体主義の問題としても受け止めねばならない。絶望することなく、いかにして世界への希望や信頼を失わずにいられるのか。その徹底的な考察がここにある。
ユネスコ国際平和文学賞受賞 戦争の仕組みと形態・その理論を国家の発達との関連において歴史的に考察し、かつては政治の下婢であった戦争が今や政治の上に厳然と君臨している現実を説き明かす。人間精神の奥底にひそむ戦争礼賛の信仰を追求し、「戦争への転げ落ちる坂道」の危機とこれら脅威の根源的諸力からの解放の道を探り、真の人間的回復は何かを提示する。
あらゆるものが視覚的表象となった原子爆弾投下後の世界において、他者の他者性を標的としつづけるアメリカの超越的欲望を論じた「世界が標的となる時代」、差異や他者性を内部化する強迫的な運動として脱構築を再考する「言及性への介入、あるいはポスト構造主義の外部」ほか。ドゥルーズによるフーコー読解を敷衍しつつポスト構造主義理論の閉鎖的空間を揺さぶり、その「外部」を問いに付す試み。
世界戦争とは、人間が世界に対して行う戦争である。この戦争でわれわれの相手となるのは、われわれが乗っている船、すなわち、この地球である。この戦いに勝とうと敗れようと、われわれには沈没か消滅のいずれしかない。古来から現在までさまざまなかたちで出現する戦争について、現在フランスで活躍する最も高名な哲学者が自身の記憶を辿り、自伝的な逸話とともに、暴力、抗争、テロリズム、法とその起源の問題を論じる。